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【辛い】こじらせ女子必読!ややこしさと共に生きるしかない、自分のことで精一杯なすべての人に:『女子をこじらせて』(雨宮まみ)

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「こじらせ」と「生きづらさ」

著者と本書の紹介

まずは、著者がどんな人で、本書に何が書かれているのかをざっと紹介しておこうと思います。

雨宮まみは、AVレビューを中心に、AV業界でフリーライターとして働く女性です。「女性」で「AVレビュー」? と感じるかもしれませんが、本書はまさに、著者が現在の地点にたどり着くまでの紆余曲折を、自身の「こじらせ実体験」と共に語る一冊になっています。

雨宮まみは、昔から容姿に自信がなく、「女性」として見られることに違和感を覚えることが多かったといいます。高校時代までは、自分の「女性性」を隠すように生きつつ、しかしその反動で時々奇行に走ってしまうような「不思議ちゃん」でした。

東京の大学に進学しますが、そもそも受験の際、前泊したホテルでAVを見まくったために、第一志望の大学に落ちてしまいます。そんな経験もあり、大学時代はサブカル系の趣味に傾倒、男性と関わる機会もほとんどない暗黒時代を過ごしました。

転機となったのは、バニーガールのアルバイトでした。それをきっかけに徐々にアダルト的なものに触れる機会が増えていきます。結局、アダルト投稿雑誌を作る会社に就職し、そこでも様々に葛藤しながらAVライターに行き着くまでの自身の経験を赤裸々に語る作品です。

本書で著者が伝えたいことは、とにかくこの一点、「私のようになるなよ!」です。こじらせまくってきた自分の経験をさらけだしながら、他の人にはどうにか私とは違う道を進んでほしい、という思いに溢れています。

「こじらせ」の捉えがたさ

当たり前のように「こじらせ」という単語を使っていますが、「こじらせ」って何? と聞かれると答えるのが難しいです。本書でもそのことには触れられていて、「こじらせ」という言葉で表現されるものを、何か別の言葉で言い表すことは難しいと書いています。

「こじらせ」というのは、伝わる人にはすぐに伝わります。私も、著者とはまたちょっと違った形ではあるでしょうが、「こじらせ」を経てきた人間です。だから、相手の話を聞いて「この人はこじらせてきた人だな」と感じたり、「自分のこじらせ話もこの人には通じるだろう」と思えたりします。

一方で、伝わらない人には絶望的に伝わらない概念でもあります。自分の感覚を人に話した時、「なるほど、◯◯ってことね」と要約されることもありますが、大体の場合「いや、そうじゃないんだよ」と感じます(パッと具体例が思いつかないのですが)。「◯◯」って言われちゃうと否定したいんだけれど、じゃあ他になんて言っていいか分からないのが「こじらせ」です。

著者は自身の様々なエピソードを本書に書いていますし、それらは是非読んでほしいのですが、1つこんな話を引用してみたいと思います。

恐怖はありませんでした。むしろ、暗い快感がありました。靴の中に画鋲を入れられるというのは少女漫画の定番です。靴に針を入れられることで私は初めて自分が他の女たちと対等な「女」になれたような気がしました。誰かに嫉妬されたり、憎まれたりするような「女」なのだと思うと、気分がよかった。

学生時代にいじめられていた彼女が、靴の中に針を入れられた際の実感です。普通であれば、「辛い」「悔しい」などという感情になる場面でしょうが、著者は、「気分がよかった」と書いています。あぁ、こじらせているなぁ、と私は感じますが、「はっ? 意味わかんない」と思う人ももちろんたくさんいるでしょう。

本書には、漫画家の久保ミツロウとの対談も収録されているのですが、その中でこんな風に発言する箇所があります。

自己評価が低いっていうことじゃなく、もしかして世間は自分のことをもっと低く見ていて、自分はそのことに気づかなきゃいけないんじゃないか? っていう強迫観念がある。本当は私はワキガみたいな存在で、みんな私がダメなことに気づいてるんだけど優しいから言わないだけなんじゃないかって思うんだよ。

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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