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【働く】給料が上がらない、上げる方法を知りたい人は木暮太一のこの本を。『資本論』が意外と役に立つ:『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』

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マルクスの『資本論』で給料UP!?木暮太一『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』が提示する「正しい働き方」

とても素晴らしい本でした。10年以上前に出版された作品ですが、今でも十分通用する内容だと思います。

その理由の1つは、マルクスの『資本論』をベースにしているという点にあると言っていいでしょう。別に難しいことが書かれているなんてことはありません。ただ、「労働」の本質について書かれている『資本論』は「資本主義」のベースだ言えます。だから、『資本論』を正しく理解することが「給料を上げること」に繋がるのだと、本書では丁寧に説明されるというわけです。

本書には「自己内利益」という考え方が出てきます。詳しくは後で説明しますが、言葉のニュアンスはなんとなく伝わるでしょうか。ざっくり言うなら、「コスパの良い働き方」という感じです。なので、今の若い人にはもしかしたら、本書の内容が「当たり前」に感じられる部分もあるかもしれません。

ただやはり、資本主義の大元とも言える『資本論』をベースにして、感覚的にではない形で思考を積み上げていくスタイルは学びになるはずだし、生きていく上での指針になるだろうとも思っているのです。

私は本書について、「サラリーマンになるための必読書」であると考えています。子どもの頃から「働くこと」に対してネガティブな気持ちしか持っていなかった私は、「働くこと」について考えることをとにかく避けてきました。だからということもあるのでしょうか。本書に書かれている内容は、私には目からウロコレベルのものばかりで、読んでいて叫びたくなるぐらいの興奮を覚えました。本書を学生時代に読んでいたら、「働くこと」に対しての考え方がちょっとは変わったかもしれないし、現在のようなダラダラとしたテキトーな働き方にはなっていなかったかもしれないとも思います。

本書のポイントはとにかく、「しんどい『ラットレース』からいかに離脱するか」とまとめられますす。つまり、「競争しなくてもいい立場をどのように確保するか」をゴールにしているというわけです。正面から勝負を挑み、競り勝って上へと上っていく人生も、楽しいと感じられる人には良い人生なのでしょうが、私はそんな風にはとても思えません。それよりも、本書で示されるような、「自分にしか取れないポジションを確保して、競争せずに生きていく」方が良いなと感じます。同じように考えている人には、特にオススメできる作品と言えるでしょう。

「『資本論』をベースにしたビジネス書」であることの良さについて

さて、本書の内容に触れる前に、もう少しだけ別の話を続けましょう。それは、「私がビジネス書に対して抱いてしまう違和感」についてです。

私はビジネス書や自己啓発本をほとんど読まないのですが、書店員として長く働いていたこともあり、そういう類の本が視界に入ったり、内容をざっくりと知る機会はありました。その中で私は、「ビジネス書や自己啓発本に対する『胡散臭さ』」を感じるようになります。その最大の理由が、「『俺はこうやってきた。だから君たちもやってみなさい』という主張に納得できないこと」です。

納得できない理由の1つは、「あなたが『成功の秘訣』だと思っている『それ』が、どうして『成功の秘訣』だと断言できるのか」についての説明がなされない印象が強いからです。この点については、内田樹『そのうちなんとかなるだろう』の記事の冒頭で詳しく書いているので読んでみてください。

納得できない理由はもう1つあります。先程の話と重なる部分もありますが、「それが『単なる偶然』である可能性は否定されているのか?」について説明されないことです。

例えばこんなことを考えてみましょう。感染したら99.99%死に至ることが判明している感染症があるとします。そして、その感染者1万人をある施設に隔離中という状況だとしましょう。この場合、1万人の内99.99%は死亡するので、確率的に1人生き残る可能性があることになります。重要なのは、「1万人いたら、確率的に1人は生存してもおかしくない」という点でしょう。もっと言えば、「どんな行動を取ったかに関係なく、1万人のうち1人は単に確率的に生き残る可能性がある」というわけです。

さて、そのたった1人の生存者が隔離施設から出た後、『私はこうして生き残った!致死率99.99%の感染症からの生存法』という本を出版したとします(あるいはSNSで発信するなど、情報の伝え方は何でも構いません)。そこには、その生存者が隔離施設にいる間にしていた行動が書かれており、「私はこういう行動を取って生き残ったのだから、もし感染したらみなさんもやってみましょう」とアドバイスされるというわけです。

この場合、その内容を信じるべきでしょうか?

もちろん、その生存者の行動が感染症を乗り越える上で役立った可能性もあるのですが、同じくらい、まったく役に立たなかった可能性もあります。そしてその判断は、「その人が生き残った」という事実だけでは判定できないのです。

このような考え方はどんな情報に対しても当てはまるし、当然ビジネス書にも同じことが言えます。もちろん、「何かに成功した」という場合、本人は大体もの凄く努力しているだろうし、「努力した」という事実そのものを否定するつもりはまったくありません。しかし、どの努力が成功に寄与したのかは誰にも分からないし、もっと言えば、結果として「本人の努力」とはまったく関係のない要因が最も重要だったという可能性だってあるわけです。

そんなわけで私は、「俺はこうやってきた。だから君たちもやってみなさい」系の主張が全般的に好きになれません。

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