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【表現者】「センスが良い」という言葉に逃げない。自分の内側から何かを表現することの本質:『作詞少女』(仰木日向)
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「作詞」の技術から「創作」の本質について考える
この記事の致命的な問題点
この記事には大きな欠陥があります。それは、「表現することの本質」についての考えを記していない、ということです。
この『作詞少女』という作品は、基本的には「作詞」についての物語です。しかし、冒頭から2/3ぐらいのところで主人公は「もうお前に教えることはない」と言われ、「作詞講座」は終了してしまいます。
そして、残りの1/3で、「表現するとはどういうことか?」「表現者に必要なものとは何か?」という話が展開されていきます。
というわけでこの記事では、「表現することの本質」については触れていません。『作詞少女』を是非読んでください、と言うのみに留めます。
しかし本当に、作詞に限らず、言葉であるかどうかにも関係なく、自分の内側から何かを表現するすべての人にとってためになるのではないか、と感じられる作品でした。私自身は、文章を書くこと以外に、特別これと言って表現的なことに携わっているわけではありません。なので説得力に欠けるとは思いますが、「表現することの本質」について、非常に言語化しにくい何かを的確に捉えている、という印象を受けました。
そして、このラスト1/3を描くために、「物語」という形式が必要だったのだ、とも感じます。「作詞講座」だけであれば物語にする必要はなかったと思いますが、登場人物2人の背景的な話も含め、「表現することの本質」に踏み込むために、物語を実にうまく活用していると感じました。
アタシの言ってることなんて全部デマカセだと思っちまえ!
主人公の一人がこう話す通り、この本に書かれていることが唯一の正解だと考える必要はないと思います。ただし、どれだけ「技術」を高めようが「表現者」という土俵に上がれない現実はあるでしょうし、その根本的な理由について見事に言語化していると私は感じました。
作詞はなめられている
特に表現に携わっているわけではない私が本書を読もうと思った理由は、まさしく「作詞をなめていた」からです。本書を読む前はまさに、
はーははは。いるんだよな、お前みたいなやつ。作詞くらい誰でもできるとか思ってるタイプのさ。笑っちゃうよな
……お前に限った話でもなくてな、作詞ってのは、なめられたんだよ。素人が趣味でやる分にはまだいいとして、プロの世界ですらな
という感覚でいました。
本書でも書かれていますが、「曲を作るより簡単そうだし、日本人なら読み書きくらいできるんだから、センスさえあればなんとかなりそう」という感覚は確かに僕の中にありました。だからこの本の表紙や帯で、「作詞に技術がある」と書かれていたことに対して、どういうことなんだろう? と興味を持ったというわけです。
著者があとがきに書いていますが、
音楽をやっている人はかなりの割合で「作詞は難しい」と言い、音楽をやっていない人はかなりの割合で「作詞くらいはできそう」と言う。
のだそうです。本当に、「作詞ぐらいはできそう」と思っててすいません、という感じでした。
本書は確かに、主な話題が「作詞」に特化しているわけですが、ここで描かれていることはどんなジャンルでも変わらないだろうと思います。少し話がズレるかもしれませんが、野球を見ながら選手に「なんで今打たないんだよ」とか「そんなところに投げるんじゃないよ」みたいに言っているオジサンとかイメージ出来ますよね。見ているだけなのと実際にやるのとでは雲泥の差があるのに、私たちはどうしても、「自分だったらできそう」みたいな視点で物事を見てしまうことがあります。
そういう意味で本書は、表現者だけではなく、その表現を受け取る側の意識を変える本でもあると言えるでしょう。「技術」だけあっても表現者にはなれませんし、そもそも「技術」の部分を理解していなければ「正しく受け取る」こともできない、という事態になりかねません。
「作詞」とは一体なんなのか?
本書では、プロの作詞家が素人に教えるという形で「作詞とは何か」が描かれます。教わる素人の方は、本当に何も知らない状態なので、何も知らない読者も同じ段階を踏んで学んでいけるという構成です。
どいつもこいつもハッキリ言わねぇんだ。こんなに大事なことをさ。作詞ができるようになるには、作曲の意味がわからなきゃ話になんねぇんだよ。
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