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「母さんの夏の花園」ー詩ー

母さんは花育てが とても好き
夏でも 庭には
色々の 種類の花が 
咲きほこり
虫たちの レストランになっていた

甘く 切ない香りの
「くちなし」の白い花は 
はかなげで、すぐにしぼんでしまう 
母さんは 花に顔を寄せ
「素敵な 匂いで
咲いてくれたわね」と
膝の痛さも 忘れて
花の前 しゃがみ込む

母さんが 朝早く起きる頃
鮮やかな クリスタンブルーの
「琉球朝顔」は あでやかな顔に
笑みをいっぱい浮かべて 
空を見上げて 挨拶してる
この笑顔は お昼過ぎには
昼寝姿に なってしまうのが
悲しい

母さんは 視力が衰えた
目をこすりながら
花の一輪 一輪に
「おはよう」と 言葉がけして
水やりする
朝顔たちは 笑顔で
首を振り つるの手で 握手する
母さんには 花の言葉が
解かったのだろうか・・

母さんが 一番
大事にしていたのは
白い「テッポウユリ」だ
庭の片隅で ひっそりと咲き
優美な体を 揺らして 風と踊る
両手で花を 包んでは
「美人さんね お姫様だわ」と
話しかけていた
リトルプリンスは 誉められると
今にも クロスターンをしそう

夏の花園には 生き物のお客さんがやってきた
黒いレースの羽根を 
自慢気にヒラヒラさせる カラスアゲハ
ブーンと 小さな黄色の
羽音をたてる ハチたち
花粉まみれで はしゃぐ ハナコガネ

母さんが 天国に昇ってしまうと
夏の花園は 段々 花が消えていき
花をつけない草花ばかりが 目立つ
もう 緑色の 消え入りそうな体で
網戸にとまる ウスバカゲロウの
風景も 遠い昔の光になった

僕は「やっぱり 母さんでなきゃ
だめなんだよぉ..」と
夏空を 見上げながら 
ボソボソつぶやいている

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