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私はそれを拾い上げた。職員たちが気付いている様子はない。今更これのせいで会が長引くのは嫌…
だが私の視界の片隅で、老婆は必死の懇願を続けた。痺れを切らして私は言った。 「……どうさ…
しかしそれは何だ? 町内会の役員決めみたいなものだろうか? でもそれくらいのことであんな…
「……場の空気を乱すからです」 私を見据えたまま相手はそう言ったが、出てきた言葉は何か必…
ははあ、これはあれだな。母数の多かった時代からやり方を変えていないからこんなことになって…
「すいません」と私は呟いた。だが消毒液係は敵意を込めた視線を尚もそらそうとしない。「すい…
「では――始めます」 愛想は極限まで出し渋ること、という教えでもあるのか、若い女の職員は露骨に不機嫌な態度で言った。そちらの都合で集めた人達の前でよくそんな仏頂面ができるものだ、と私はそのことに気を取られていたが、その言葉で周囲には俄かに緊張が走り、野犬のような隣の男性までもが背筋を正すのが分かった。 手にしたマイクのハウリングを調整するという気遣いもないまま、女の職員は一つ目の木箱の前に移動すると、中から何かを取り出した。使い込んで黒ずんだ蒲鉾板のような木片がちらりと見
そもそも何の集まりかも分からない。葉書には「抽選会のお知らせ」という表題の下、型通りの時…