妻はうつ病じゃなく認知症だった(9)
こんにちは。
認知症4種類中の、特殊な前頭側頭型変性症の1つである意味性認知症は認知症の中でも特殊中の特殊だ。
実はそんな妻に毎日風呂を焼いてもらっている。
罹病率は非常に低く病気の認知自体がされていない。同病の奥さんを介護しているご主人に幸運にも話を聞く機会に恵まれた。
その内容を記録も含めて書いていきたい。
認知症地域支援推進員の女性より、同じ地域に同病の奥さんを介護しているご主人がいるのは診断された当初から知っていた。
月に一度推進員とお会いする度に、こちらからその方の情報を聞いていた。こちらよりかなり進行していることも··········
その方と会うべきなのか会わざるべきか迷っていた。難病で薬もないからだ。
就労支援施設へ毎日通い、毎月の病院、ケアマネ、訪問看護、進行するまで現状はこれでいいのかなと思っていた。
いや、正直に言おう。俺はズルい。病の進行を聞くのがリアルで怖く恐ろしかったのだ。
でも、やはり聞こう。進行は避けられないのだ。当事者にしか分からないことなんかもたくさんあるだろう。この病に関して私は無知で素人だ。謙虚に教えを乞うしかない。介護の世界では1年生なのだから。
診断から月日が経ちようやく覚悟が出来てきた。
こんな経緯があって、推進員へアポの調整を依頼した。
先方は快諾して下さった。場所と日時が決まりお会いすることに。
ご主人は教員をしていたそうで、人格者だった。
子どもさんたちは独立し、ご主人が1人で奥さんの全ての面倒を見ている。かれこれ7年もお一人で。
進行が進んでいる奥さんに対する彼の真摯な態度など、同じ事をこれから私はできるのだろうか。
彼だからできるのではないのか。いや、やらざるを得ないのか。今のところ自信はない。
親子と夫婦の違い
血が繋がっている肉親には肉親であるがゆえの介護の大変さがあるのだろう。親子なのだから。
頭では理解出来ても、体験しないと分からない。これもいつの日か試練が来るのだろうが。
肉親とは違い夫婦は婚姻で一緒になった他人だ。世の中に離婚は多く、周りにもバツイチが多いことも知っている。
離婚届を出し婚姻が解消されれば容易に他人に戻れる。つまり、逃げようと思えばいつでも逃げられることも·····
血が繋がっていない。これが両親の介護と夫婦の介護と大きく決定的に違う。似て非なるものなのだ。
この点を正直にぶつけてみた。なぜあなたはそこまでできるのかと。
彼は、「一生一緒に生きていくと決めた相手だ。病でまるで影が薄くなるように見えていっても、それは変わらない。」静かに、そしてきっぱりと言った。
自分が恥ずかしかった。
出来の悪い生徒が、愚問を教師に尋ね諭された気分だった。
病の進行と共に時短などを試みたが、結局仕事は続けられなかったそうだ。年金生活で退職金を食い潰しているが、いつか無くなるので将来は働かざるを得ないだろうと。
他人事ではなく、懸念し恐れていることだ。私にもいつか訪れる現実なのだ。
その時にどんな選択をするのか、あるいはどんな選択肢が残っているのだろうか。
病気の特性
「お風呂2個焼いとこうか?」この意味が分かるだろうか。
「お米を2合炊こうか?」という意味なのだ。これが病気の特徴を表しているだろう。少しずつあまり使わないところから言葉の意味だけが失われていく。(語義失語という)
本人は一体どう感じているのだろう·······
静かに「うん。頼むよ」と答えることが精一杯だ。
①病の認知の違い
認知症と言えば多くの人がアルツハイマーを想定されることが多く違和感を覚える。
暴言や暴力などなく基本穏やか。言葉の意味が繋がらないから暴言は絶対になく、発語がなくなることが大きく違う。
②受入の難しさ
認知症を受け入れている施設でも、意味性認知症患者はコミュニケーションが出来ないから断られることが多いと言う。
③年齢のギャップ
認知症を受け入れている施設では基本的に高齢者が多いので、70代で若いと言われるほど高齢率が高く、若年性認知症の方はギャップを感じて嫌がることが多い。
そもそも若年性認知症の患者が少ないのだ。
④常同行動のこだわり
当方は、同じ時間に必ず同じ物を食べるこだわりがある。
先方は、常同行動で決まった時間に毎日毎日美容院へ行っていたそうだ。自宅へ帰れなくなる日が来るまでは·····
食のこだわりなどあったりなかったり、同じ病気でも症状には個人差が大きく難病であるから解明されていないことが多い。
当方は左利きのため、なおさら影響する脳の部位に個人差が大きいようだ。
⑤迷子の備え
紛失しても構わないように安いGPS端末をいくつか買って、迷子になった時に備える。本人に渡すのはもとより、紛失や忘れることに備えて、自転車のサドルに取り付けておくことなどは慧眼だった。
⑥初診日の重要性
診断された時に断捨離をしたため初診日が分からず、障害年金が基礎年金しか受給出来ていない。
診断時に初診日の重要性をケアマネなどからしっかりと教えてくれれば、何らかの診察券があったと思うことが少し悔やまれる、との話は悲しすぎた。
⑦特別障害者手当
在宅で介護をすると支給されるが、あまり知られていないという。進行し在宅介護する際には忘れないように申請したい。
⑧火事の危険性
若年性であるため身体が元気でキッチンに立ちたがることはあるあるらしい。火事の危険性を回避するために先方はコンロをIHに変えたそうだ。
早めにIHの手配をしよう。
若い頃は楽しそうにデザートを作ってくれていた。できるまでは、楽しんでもらいたい。
⑨介護保険利用
「ヘルパーさんと一緒に料理すれば、奥さんは楽しみや喜びを見いだせるかもしれないよ。あなたの負担も減るだろうし。」
「ガイドヘルパーを使って安全に外出するのもいかが?」
「発語をキープするためにも言語聴覚士と訓練すればいいのでは?」などなど色々提案していただいた。
⑩(看護)小規模多機能型居宅介護施設利用
多機能型居宅介護は訪問や宿泊を組み合わせて利用できるから、今のうちに慣れておくのもいい。理解のある施設名も教えてもらった。今後はデイサービスやショートステイなども利用していくことになるのだろう。
★ただし、安易な施設や病院の利用については、病気の進行が坂道を転げるように加速してしまうケースもあるので、積極利用は控えたい(施設の認識や年齢などの問題とは別に)ことはお互い共通の認識だった。
病気の関係の冊子を数冊いただき、介護保険で利用できるのは積極的に利用した方がいいとのアドバイスも得た。近くの大学のゼミで家族会もしているので、次回一緒に参加することにした。
当日は時間をかなり超過してしまったが、本などでは知り得ないようなことをたくさん教えてもらった。
意味が繋がらなく会話は難しいので、画像を見せて内容を伝えているとかはすぐに取り入れたい情報だ。ご本人のレジュメも頂いてしまった。本当にありがたい。
自分も今後は同じ病気で困っている方の力になれるようになりたい。
男女の認識差
原因が分からない病気なのに、男性は自分に責任を感じ悔やんでしまうと言うことを、お互いに確認してしまった。
女性推進員「介護者のその時その時のの判断が、きっとベストなんですよ!」
その言葉を私は信じたい。
この方は眠れなくて介護の初めから精神科に通っている。大変そうだがあまり無理をしてほしくない。
昭和世代の男たちは、ついつい無理をして強がってしまう悲しい生き物なのだ。
精神科受診を勧められたが、無理をしているのが分かったのだろうか。
対して女性は、病気は病気とドライに受け止めると言う。
女性推進員「当たり前じゃないですか!病気は仕方ないですよ!」(゚д゚)!!
女性はとんでもなくタフで強いのだ。
明日も風呂を焼いてもらおう🔥
できるまで·······
男性陣完敗🍻