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2019年12月の記事一覧

ピアノと子供の私

子供ころの話。
私は、4、5歳ごろから、ピアノが習いたいと母にねだっていた。
家にお金がなかったのだろう、家が狭かったせいもある。
なかなか承諾してもらえず、実現はしなかった。
半ば諦めていたある日、突然ピアノを買ってもらえることになった。
記憶の中では突然の出来事で、なぜ今更買ってくれることになったのか経緯は分からない。
私はそのとき小学三年生なっていたし、習い始めるにはとても遅い年齢だってこと

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繁華街まで歩く

最寄り駅から、商業施設が多くある繁華街まで歩いた。
電車で4駅。
日曜日に体を動かしたくなるときは、散歩代わりにこうしている。
ジムにでも通えればいいが、お金がないから仕方ない。
最寄り駅から少し離れると左手には木々が生い茂り、小さい神社が現れる。
いつも気になって通りすぎるのだか、未だ境内に入ったことはない。
なんなく得体の知れない不気味さがあり、足を止めずに通り過ぎる。
道は住宅地に移行してい

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電車にて、若者のこれから

電車にて、若者のこれから

「やっぱり教育が大事なんだよね。」
「うん、だね。」
「俺なんか子供のときに一通りの習い事やらせて貰ってたから、今思えば本当親に感謝しかない。」
「俺も同じ全く同意見。本当ありがたいわ」
「なんだかんだで、毎日何かしら、やってたからな~」
「なんかでも、練習とか、しんどかったなー」
「これ?(ピアノを弾くジェスチャー)」
「うん、あと水泳もやってたし」
「今になってさ、やっとわかったけど、将来その

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褒められた日

毎日、電話とメールの対応を繰り返す仕事をしている。
相手は企業なので、クレーマー的な人の対応をすることは少なく、嫌な思いをすることは、ほとんどない。
ただ粛々とメールをさばき、電話を取るのだ。
やってることは「〇〇(サービス)の使い方や操作で分からないことを教えてあげる」的なやつだ。

実際に使ってる人に会ったことはない。

定期的に講習会みたいなこともやっていて、その日は顧客が来訪してくる。

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もし殺してしまっていたら

もし殺してしまっていたら

深夜の3時ごろ、ふと目が覚めた。
耳の穴がかゆくて、体を起こす。
常夜灯の明かりの下で、耳かきを探した。
部屋は散らかっている。
脱ぎ捨てた洋服や毎朝使うヘアドライヤー、溜まっていた郵便物や診療所の領収書と処方された薬剤情報の紙、フローリングに敷いたカーペットのうえに散らばっている。

そういえば、診療所の領収書や薬剤情報は保存しておくのがいいのだろうか。

散らばった紙を、一枚づつ、一所に重ねて

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「男と女の観客」

デスクに女が座っている。
ノートパソコンを覗き込み、キーボードを走らせている。
上手から男が登場がしてきた。
彼も片手にはパソコン持ち、おもむろに女の右隣りのデスクに座る。
女は体をはすに動かし、少しだけ男の方に向いた形となる。
男は業務上の話をしに来たようだ。
不自然な間が観客に奇体を飲み込ませる。
男は女の右耳辺りに視線を向けてながら、彼女の変化に言及する。
「新しいピアス?」
「うん」
女の

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侵入者

侵入者

心療内科から処方された薬を飲むようになって、日中でもよく眠くなる。
仕事中であれば、耐えられる程度の眠気がなのだけど、休みの日に部屋で本を読んだり考え事にふけっているときは、気づくとベッドで寝てしまっている。
今日も散歩から帰ってきて、一息ついていたら寝てしまった。
足をベッドの枕側に向けたまま、眠りについて行った。

うつらうつらと、10分くらい経ったのだと思う。
私が頭を向けている先には、右手

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富士額と前髪が切れない理由

富士額と前髪が切れない理由

先日、夏目漱石を読んでいて”富士額”という言葉を知りました。
正確には、意味を聞かれたら説明できない言葉の意味を知ったのです。
そして、ひとつの驚きがありました。
「なんだ、私の生え際が富士額なのか」

その昔、当時お付き合いしていた人が、私が前髪をかき上げたところを見て、
「ベジータみたいだね」と言いました。
だから、私にとっての生え際のあの山は、”ベジータ”でした。

ちゃんと言葉を知れて良か

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