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香澄 海
2023年11月6日 12:47
世界中に烙印を押す音が響いている正しい人でありたいのか正しい人だと思われたいのかその闇は深くて正しいをふるえながら放り投げてみる誰も誰かが傷つくのを見たくないのに傷つけている人の傷ついたこころは見えにくいからオロオロしてる間に弾丸が飛び交う優しい人でありたいのか優しい人だと思われたいのか誰もが優しさを持っているはずなのに互いに届けあえずにいる正しさが激しさを増
2023年10月28日 19:23
フラミンゴを見たかった母がとても綺麗だと教えてくれたから動物園のフラミンゴは淡いピンク色で少しオレンジがかっていて長い華奢な足とダンスに顔が開いた動物園に行くたびにフラミンゴを真っ先に見に行ってふわふわした今テレビで赤い湖にたくさんのフラミンゴああフラミンゴふっともう見とれない自分に気づいて宝物を無くしたよう赤い湖のフラミンゴの群れより柵の中の数
2023年10月24日 10:58
果てしない空に円盤みたいに浮かぶ巣があったなら鳥たちは地上に降りずに休めるだろうけど水はないしミミズはいないし木や大地にだって足をつけたいだろうあなたたちの羽根を一本ずつ私にくれませんかそしたら運びましょうあなたたちにそう木の代わりに私に止まってください巣の中で海を見下ろしながら一緒に酒でも飲みますかまた空を飛べるようになるまで空を飛べるなんてい
2023年1月12日 18:30
さわさわと流れ落ちる陽の中少年がひとりまたひとりと青ざめていったさざ波も立てずゆっくりと息をひきとる細胞のかすかな重みが流れ出す少女の初潮が陽を浴びて柔らかく膨らみ頬がひとつまたひとつと赤く染められていったはしばみ色の目がふせられうなじの白さがさらされていく遮断された光が屈折することでたどり着くようにたどたどしく少女は少年を採集した細胞を手折る正直な指
2023年1月5日 20:30
ダンスに浮かれて青い悲しみを散らそう輝く風に身をまかせて凍える心を暖めよう君が言った「限りなく闇に近い箱」を見つけた時には君の汗の匂いと閉め切ったカーテンだけが残っていた君が一人で去ってしまったので僕は窓を開けたよ君のにおいも 君の寂しさも吹き飛んでしまうくらいあっけらかんとした風が吹き込んできた窓辺に置かれた糸の切れた風鈴が君の器用な指先で吊るされる日を待
2023年1月3日 19:22
ミルクセーキを飲みませんかかすれた声でそう言うので卵を割り砂糖を入れ牛乳を注いだ赤いサクランボはなかったがお盆にのせて持っていくともう事切れていたミルクセーキは飲まないの?ーもう飲めないんだよサクランボがなかったから?ーあぁ あの赤いサクランボ 君は好きだったね 僕は見てる方が良かった夜が引き裂かれながら明けていく私はあたたかいタオルで顔を拭き
2023年1月1日 01:47
あいみてのあたしみてのあしもとのいしのだれでもなさとあんただけの顔つき迷い石のコロコロ砂味のコンペイトウいっそ ほろ苦く響けばいい冬のコオロギみたいにあの子が欲しいこの子はいらない声の反響がちっぽけになった食卓で生き物を飲み込むつぐんだ口に棒でグイグイ入れていく口は徐々に開いていく歯に 舌に 喉に生き物が通り過ぎるあたしだけ だものあた
2022年12月30日 14:05
こんこんと眠るおかさんを見て死んでしまったのじゃないかとおびえてた頃雨上がりの工事現場の大きな穴に柔らかいチョコレートみたいな土がたまっているのを見つけて思わず飛び込んだ靴下まですっぽりはまってそのまま裸足になり夢中で 土の香りとなめらかな粘りのあるその肌触りを楽しむ足指の間 ひんやりと抜け目のない土が隙間にすべり込んでくる周りは土の壁誰か通りかかると思って
2022年12月29日 22:06
京都の横断歩道で雨に降られていた人並みに押されて歩き出したとき一本の赤いカーネーションが落ちているのを見かけた「かわいそう」とうつむく私にお姉ちゃんは怒ったように「仕方がないの。行くわよ」と言ったきっとお姉ちゃんもそう思ってたのに立ち止まろうとする私をかばったのだ私はカーネーションを拾わなかったすぐにしゃがんで拾えばお姉ちゃんは怒らずに済んだのにカーネーションは雨にぬ
2022年12月29日 21:44
冷水を浴びせかけられびしょびしょのグー小指から開くと 小さな傘があった「何故」と問うには細心の勇気が必要だ「どうして」に至ってはよく咬んで生殺しにする「誰」かの「何時」かと重なる事を求めたり傘をすぼめて首をねじったり「如何」に生きるか迷走する私の中心で水を恐れる傘が くるくる回る賢治が願った人のようにはなれないと傘をたたむたび自分に「だれ」っと寄りかかる雨粒が激し