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CHATSUBO CLIPS

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記事一覧

無意識の〈法〉って?何だそれは!正体を知ると怖すぎるじゃないか!

いや~、おっそろしい本を読み始めてしまった。 『ゼロから始めるジャック・ラカンー疾風怒濤精神分析入門 増補改訂版』だ。 千葉雅也が『現代思想入門』のラカンのところで紹介していたので読み始めたのだが、いや~、ほんとにおそろしい。 村上春樹は妙な回文とか、寒いジョークとか、好きっぽいですよね?小説のなかには目立つ形ではでてこないけど、なんかうっすらと無意味なガラクタっぽい感じで、そういうナンセンスがいつも漂ってはいる。 で、村上春樹がなぜそういう味付けをいつも忘れずに振りか

新潮文庫最厚『魂に秩序を』は計算された〈地獄巡り〉だ。

マット・ラフの『魂に秩序を』を読み終えた。新潮文庫最厚の1088ページ。三日かかった。とりあえずの達成感は得られた。 とはいえ、こういう話で、こういうところが共感できるとか、そういう言語化がしにくい。マット・ラフが伝えたかったことが、幾重にも包まれて奥底に隠されているような、そんな感じで、読後感があいまいなままで終わっている。もちろん、僕の理解が今のところそこまでだ、というだけで、作品が不出来なわけではない・・・・・・(翌日になって、僕は新たな気づきを得るのだけど)。 本

文学系Youtubeのおかげで、読めなかった本が読めるようになる。

「アサヒ 音楽と文学は色ガラス」というチャンネルで、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を取り上げた回があって、とてもおもしろかった。  どこかバランスを失った構造ってのは、僕にとってはいつも心惹かれる。『ねじの回転』で主なストーリーテリングを担う女家庭教師。その女の張りつめた語りも、見るからにバランスを欠いていて美しい。  とはいえ、僕もどこまでもアンバランスさを楽しめるかというと、そんなことはない。すぐに限界を迎える。    たとえば『百年の孤独』のありえなさ感、ぶっ

何でかわかんないけど赦される、つうか・・・。そういう本。

ベテラン精神科医・春日武彦 × 特殊系小説家・平山夢明の対談集を読んでいる。 いや~、溜飲が下がるとはこのことか。誰かに言ってほしかったことがあまりにもあけすけに口にされている! ほんでもって、何やかや言っても彼らがプロであるところが詳らかにされていて、カッコいい。 ライターズブロックに罹っている作家平山氏が、春日先生の外来を訪れる。白衣の春日氏が、話を聞く。すると春日氏は「きみの部屋はめちゃくちゃ汚いんじゃないか」と看破する。で、平山氏は「掃除かぁ・・・・・・」と怪訝

夏目漱石と能。村上春樹とメタファー。

能楽師の安田登さんが、「夏目漱石と能」という記事の中で次のようにおっしゃっています。 能の仕草の「型」ひとつひとつには、象徴的な意味はないのだ、と。能の動きは抽象で、状況によって同じ動作からでも違う意味が立ち現れるのだと。 象徴ではないんだ! 象徴/ メタファーと、抽象は別の物だという考えは衝撃的だ! 夏目漱石の『夢十夜』の第三夜で、歩いては立ち止まる、という仕草が「型」のようにして、三度、用いられている。その仕草が差し挟まれるたびに場面が転換する。三回ごとに違う意味

村上春樹の地下事情。

村上春樹のインタビュー本を読んでいる。聞き手は作家の川上未映子。 ものすごく引き込まれる。 kindleで読んでいるのだけど、インジケータが進捗率32%を示している。まだ残りが2/3もある! 僕はとてもうれしくなる。 僕は村上春樹を読むことにかけては、年季がはいっている。小説だけではなくて、彼が職業観のようなものを語っている文章もずいぶん読んでいると思う。 それでも! このインタビューでは、川上氏によって初めて引きずり出されたような、知らなかった村上春樹がたくさんある。

私は「この私」を通じてしか世界を経験できない──柴崎友香さんと横道誠さんの対話

「文学×当事者研究」の最前線に芥川賞作家が乗り出してきた!?【横道】 まず、私が柴崎さんを初めて認識した時がいつかという話をしたいんですけど。 【柴崎】 はい。 【横道】 2000年代にmixiっていうSNSが流行ったじゃないですか。そこでいろいろと面白い映画の情報を集めていたら、『きょうのできごと』を知って、レンタルショップで借りて観てみたんです。当時、私は京大の院生で、出町柳あたりとかもろに生活圏内でしたから、そのあたりを舞台にしたこの映画に親近感を抱きました。それで、

金曜の夜はプログラミング以外のことをしないと

最近Twitterの文字数では書ききれないとりとめもない心のつぶやきが増えてきたから、noteを始めてみた。 WEBシステム開発の仕事に転職して1ヶ月経つけど、今はまだたいした戦力になってなくて、参考書を使って勉強したり、システムのソースコードを読んで仕様理解したり、勉強がてら軽微な保守をさせてもらったり、来る日も来る日も朝から晩までプログラミングやシステム仕様に向き合う、余裕は与えられつつも泥くさいような日々を送ってる。 泥くさいって貶してるみたいだけど、そういう泥くさ

傑作読み切りを読んで「ドラマ」とは何かについて気づかされた話

どうもお久しぶりです、STUDIO ZOONのムラマツです。 イキナリですが、先日こちらの読み切りを読んで衝撃を受けました。 タイトル通り、「キャロット通信」という創作文芸サークルが崩壊するまでの物語なのですが…なんというか……すごい。 すごい作品は時に様々な気づきを与えてくれますが、僕はこの読み切りを読んで「ドラマを描くとはこういうことなのか!」という気づきを得ました。 「なんでこの読み切りを読んでそんなことに気づいたの?」って話を最初にしておくと、読み切りには連載の

これから書き手をめざす人へのメッセージ(小説家・藤野可織)―文芸領域リレーエッセイ①

2023年度に新設する文芸領域への入学を検討する「作家志望者」「制作志望者」へのエールとして、作家、編集者、評論家の方がリレーエッセイとしてお届けします。 今回は文芸領域の教員で小説家の藤野可織さんのエッセイをご紹介します。 藤野 可織(ふじの・かおり) 京都市生まれ。同志社大学大学院修士課程修了。2006年「いやしい鳥」(『いやしい鳥』河出文庫)で第103回文學界新人賞を受賞し、作家デビュー。13年「爪と目」(『爪と目』新潮文庫)で第149回芥川龍之介賞を受賞。14年

ファッションについて:個性と匿名性のジレンマ

ファッションについて書いてみる。 服のことを大きく捉えると、それは「ファッション」と呼ばれるので、その言葉を使うけれども、「服をどうするか」ということ。それについては中学高校からいろいろ経緯があって、黒歴史的なものもあるが、自分の家族が服をどうでもいいとは思わず、工夫するし、良し悪しを語る人たちだったので、そのなかで一定の考えができていったと思う。 まず、ファッションについて考え、語るというときに、人が想定している「どういう話か」が、けっこう違うんじゃないかと思う。まずそ

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身辺雑記(7月)

大学の講義も一段落して、なんとなく少し休めている気がする。東中野のシーシャ屋でボンヤリしてたらブログでもやるかって感じになったので、書いてみる。最近ボドゲつくったりメルマガ立ち上げたり、自主制作いろいろやってるので、そのへんの内容とか過程の気分とか。 ecg.magの立ち上げ厳密には6月からだけど、ecg.magっていう月イチ刊行のメルマガを始めた。その月に各自が触れておもろかったURLを3-5本くらい紹介している。編集部はぼく以外に太田・松本。 「切り抜き動画からデザイ

小説論1 定式:出来事+理由+感覚

小説論、というと大げさだが、2作目の中編を書きながらのメモを連載したいと思う。メモだが、人に読んでもらうとその「圧」によって考えが進むので。 先日、次のような図を描いた。 これは僕が考えるところの小説の基本構造を、アイロニーとユーモアという『勉強の哲学』の二つの軸で整理したものである。 小説にはまず、出来事の進展がある。

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継続するコツ 第3回 作りたいのに作れないというスランプについて

 僕はスランプがないんですね。スランプってわかりますよね、作家にはライターズブロックなんて言葉もありますね。書きたいのに、書けないというものです。作品を作る時には、必ず訪れるらしいあのスランプです。僕はスランプがありません。書きたくない時には書かないから、書けないということがない、というわけです。と言いつつ、書きたいのに書けないと思うことはあります。多々あります。書くことだけじゃないですね、作ること全般に関して考えてみましょう。作りたいのに作れないというスランプについて。