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子供のためのオルセー美術館(81)助けて!気球に願いをかけて/シャバンヌ・オリンピックの気球の聖火と

戦争せんそうパリがあぶない


1870ねんだい1回印象派展覧会いんしょうはてんらんかいひらかれる4年前のパリ、そらにはたくさんの気球ききゅうがりました。
いったいどうしたのでしょう。

戦争せんそうはじまって、パリのまちのまわりをプロイセンぐん包囲ほういされてしまったのです。
このままだとパリの人々はたたかうどころかものさえなくなります。

ガンベタのパリからの出発 1870/10月7日

そこで、気球ききゅうばしててきうごきをさぐり、写真しゃしんって地図ちずつくり、たくさんの手紙てがみはこんだのです。また、ガンベタ大臣だいじん地方ちほうのフランスぐん基地きちにパリから脱出だっしゅつさせたのも気球ききゅうでした。
数カ月すうかげつあいだ何十回なんじゅっかい気球ききゅうはパリをびたったのです。

そら気球ききゅうは、パリの人々ひとびと唯一ゆいいつ希望きぼうほしになりました。


パリの城壁じょうへき警備けいびをしていた画家がかシャバンヌは、
この気球ききゅうて、モン・バレリアンの基地きちかってんでいく気球をきました。

くろいドレスを城壁じょうへき武装ぶそうしたおんなひとは、気球ききゅうねがいをこめます。
「どうかとどいて!」

シャバンヌは、このかなしくてどうしようもないできごとを、茶色ちゃいろの色だけできました。
そしてこののリトグラフはすぐに新聞しんぶんって、パリの人々に勇気ゆうきあたえたのでした。

パリオリンピック2024・日中の聖火

さて、このおはなしの絵にはつづきがあります。

数週間後すうしゅうかんご、シャバンヌはつづけて、もう一まいおなじ大きさの絵を描きました。

じつは、気球ききゅうには手紙てがみ一緒いっしょ伝書鳩でんしょばとせてありました。
パリにもどる気球は、大事だいじ情報じょうほうてきられてしまう危険きけんがあったのです。

Canon anti-ballons 1870

手紙の返事へんじは、訓練くんれんされたハトがパリにはこびました。
パリにやっとたどりいた白いハト、

ワシにおそわれるところをたすけたくろいドレスの女の人を、シャバンヌは今度こんど正面しょうめんからきました。

さあ、この絵の景色けしきてみましょう。

右手みぎてにはノートルダム寺院じいんひだりにはアントワネットの牢屋ろうやがあった三角さんかく屋根やねのコンシェルジュリー。
そしてながれるセーヌがわにかかったはし

いつものパリ。
でも、孤立こりつしたひとりぼっちのかなしいパリをシャバンヌはいたのです。


このときから150ねんたったいま
パリではオリンピックがはなやかに開催かいさいされています。

まさにここで、ですね。


Pierre Puvis de Chavannes
タイトル La Ville de Paris investie confie à l'air son appel à la France, ou Le Ballon 1870
ピュヴィス・シャヴァンヌ
気球 1870

タイトルはテオフィル・ゴーティエの詩から取られた。プロイセン軍によるパリの包囲。黒い服を着た女性が後ろ姿で、片腕は気球に向かって伸ばし、もう片方はシャスポート銃を持っている。背景はモン・ヴァレリアンの砦

musée d’orsay 

Pierre Puvis de Chavannes
タイトル Échappé à la serre ennemie, le message attendu exalte le cœur de la fière cité, ou Le Pigeon 1871
ピュヴィス・シャヴァンヌ
鳩 1871

鳩は、気球と対になるように描かれた。この作品は、パリの歴史的中心であるシテ島の眺めと、攻撃を受けている首都を擬人化した人物を組み合わせたものである。黒い服の女性は希望を運ぶ伝書鳩をプロイセンの鷲の魔手から守っている。
画家は後の1874年頃、1871年のシカゴ大火の犠牲者のためにニューヨークで行われた宝くじに、この2点の絵をフランス政府に寄贈した。しかし、彼はこれらの絵に非常に愛着を持っており、その後、この絵を手放したことを後悔した。1887年にデュラン=リュエル画廊で開催された個展では、不在を補うためにこれらの作品の写真まで展示した。後にオルセー美術館に寄贈された。

musée d’orsay

お読みいただきありがとうございました。
オリンピックで賑わうパリ、チュイルリー公園の池に設置された巨大な気球の聖火を見ているうちに、このシャヴァンヌの絵を思い出し取り上げました。
気球はフランスでは盛んにあげられ昔から人気のある乗り物ですが、この普仏戦争当時パリ包囲の中にあって希望の気球、まさにシャヴァンヌの描いた絵の気球が、今回のパリオリンピック聖火の発想の要因のひとつにあるかもしれません。(発表はないので確かではありませんが)
世界初の航空郵便、ほんの数カ月のうちにパリから各地へ250万通の郵便が気球で輸送されました。孤立した不安なパリ市民にとっては確かにたった一つ、希望を与えてくれるものが気球だったのですね。

オリンピック閉会式前日の夜の気球聖火 

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