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子供のためのオランジュリー美術館(170)子供の気持ち/ルソー、いろんな事情・中世をモダンに


あかいドレスに水玉みずたま少女しょうじょなにているのでしょう。


ゆううつで心配しんぱいそうな

子供こども世界せかいはそんなたのしくも、のんきでもないのよ。いろいろと。


ルソーは、青空あおぞらとたくさんのおはながある芝生しばふまえにかたまっている、たくましいあしおんなきました。


みどり芝生しばふには、むかしむかしにつくられたタペストリーのように


丁寧ていねいいたおはなでいっぱい。

なのに、ひとりぼっちで、ちょっとびっくりのへんくびはないしあしだけが横向よこむいてるし。


ルソーは、まわりのあたらしい時代じだい画家がかいている、本物ほんものそっくりのかわいい子供こどもきません。
むかしむかしの画家がかいたようなきかたで、なぞつつまれた子供こども真剣しんけんかお


だって、子供こども世界せかいは、まったく不思議ふしぎ堂々どうどうとしてて


ぜんぜんわからない魅力みりょくにあふれてて


どんなやまでもへっちゃら。らくらく世界せかいをまたにかけちゃうし。


こんなルソーのは、ピカソにもつよいインスピレーションをあたえました。
ピカソのひとりぼっちのおんなの子は 人形にんぎょうしずかにはなしをしているところだけど、

Maya à la poupée 16 janvier 1938 Paris Peinture Huile sur toile 73,5 x 60 cm D.B.G. : 16.1.38. Dation Pablo Picasso, 1979 Inv. : MP170 © Succession Picasso Crédit photographique : Adrien Didierjean/Agence photographique de la Réunion des Musées Nationaux - Grand Palais des Champs Elysées

ピカソのもやっぱり、おもしろいかおだね。



HENRI ROUSSEAU, DIT LE DOUANIER
L'Enfant à la poupée Vers 1904-1905
アンリ・ルソー
人形を抱く子供 1904〜1905

まっすぐこちらを見つめる子どもは子どもらしさがまったく感じられない。彼女の体は巨大で不釣り合いだ。草むらに奇妙に消えていく彼女の足は、特に当時人気の人形を抱えている右腕と比べると巨大である。体は「エジプト様式」で表現されて、上半身は正面から足は横から描かれている。少女の赤いドレスの白い水玉模様が、文字通り背景に張り付いているかのように見え平面的な印象を強調している。
風景は極端に簡略化、ほぼ一様に青い空と、中世のタペストリーを思わせる花々が点在する草原が描かれている。しかし、ルソーは遠景の草を暗くし、ヒナギクのサイズを縮小することで、わずかながら遠近感を生み出している。子供の太ももに陰影をつけることで、彩色写本の挿絵を思わせる効果を出している。
ルソーは、あらゆるジャンルでプリミティヴィスムが注目されていた時代に、フランスやイタリアの「原始的な画家」たちの昔の美を再発見した。それは同時代の芸術家たちを魅了した彼の芸術の一側面であり、アンドレ・ロートをして「中世であれば、彼は群衆を喜ばせたことだろう」と言わしめ、アルセーヌ・アレクサンドルには「20世紀のパオロ・ウッチェロ」と評されるに至った。

musée d’orsay/l’orangerie

DAME À LA LICORNE
Tapisserie, Haute lisse Laine, Soie 1500
musée de Cluny, musée national du Moyen Âge
貴婦人と一角獣 1500
タピスリー
クリュニー国立中世美術館

Peintre anonyme de l'entourage de Duccio
Vierge et l'Enfant Vers 1285.
Tempera et or sur bois
ドゥッチョ側近の匿名画家
聖母子  1285
ルーブル美術館 木にテンペラと金

Pour fêter le bébé !  1903
Musée des Beaux-Arts de Winterthour
アンリ・ルソー
赤ちゃんのお祝いに! 1903

L'Enfant aux rochers 1895-97
la National Gallery of Art, ワシントン
アンリ・ルソー
岩の上の子供 1895-97

お読みいただきありがとうございました。
アンリ・ルソー、当時のフランスの嘲笑と批判と同様の、間違い探しをするおもしろおかしい楽しみ方が日本でも人気があるようですね。どちらにしても、中世の美をモダンに再現してその自信が揺るぎないからこそ画風を変えないパワー、夢のような神秘的な力を感じていただけたら嬉しいです。
子供のようなルソー、ピカソがその見かけの単純さ素朴さに圧倒され「子供のように絵を描く方法を知るために、私は生涯をかけてきた」と言わしめたように、ルソーの絵は圧倒的な真実を見せています。

最後にアポリネールの当時の一節を。
「生涯でルソーほど嘲笑された芸術家はほとんどいない。この礼儀正しい老人は、常に変わらぬ平静さを保ち、幸運なことに、自分に対して最も悪意のある人々が、自分の作品に何らかの形で示さざるを得ない関心をまさに嘲笑の中に見出そうとした。もちろん、この穏やかさはプライド以外の何ものでもなかった。ルソーは自分の強さを自覚していた。一度や二度、「自分は当代最強の画家だ」と言い逃れたこともあった。だがそれは、多くの点で大きくは間違っていなかった可能性がある」ギョーム・アポリネール


参考 彩色写本 共通する陰影、モチーフ草花、遠近感 (ルーブル美術館企画展)

François Le Barbier fils (actif à la fin du 15e siècle) Le Roi David et un fou Psalterium latino-gallicum, dit Psautier de Charles VIII Paris, vers 1492 ? Enluminure sur parchemin
Paris, Bibliothèque nationale de France, département des Manuscrits,


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