【随想】小説『奇妙な仕事』『死者の奢り』『他人の足』『飼育』大江健三郎
大江健三郎
初期の短編を四つ読んだ。
『奇妙な仕事』
『死者の奢り』
『他人の足』
『飼育』
とにかく描写が凄まじかった。
日本語がとにかく独特で難しい。
この筆力は、現代作家では
確かに誰も及ぶべくもないと、感じる。
最近は読みやすい現代小説ばかり読んでいたせいか、
日本語の判読に、酷く、手こずってしまった。
つい何度も何度も同じ箇所を読み直していた。
文意を理解するまでに時間がかかるのだ。
しかし繰り返し読んだとしても、完全には理解できないていないなと思いながら、次に進むことが多々あった。
このどこか読みきれていないという持続的な消化不良さが、読むという行為全体に疲れを生じさせた。
物語の展開については、特に目新しいと感じるものはなく、登場人物の人格や思考についても、違和感なく咀嚼できた。
ただ、物語のモチーフ(設定)には、これはフィクションなのか、フィクションにしては描写が真に迫りすぎているというか、目の前で実際に見ていないと描写できないだろうと思うような、新鮮さと驚きがあった。
『奇妙な仕事』は犬殺しのアルバイト、『死者の奢り』は死体運びのアルバイト、『他人の足』は脊椎カリエスの患者の病棟、『飼育』は森の奥の谷間の村で敵兵を飼育する話…
『飼育』が、大江健三郎23歳の作品、ということで、
恐るべく早熟の天才である。
では、凄まじい『死者の奢り』の冒頭を、引用しておくことにしよう。