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【随想】小説『店長がバカすぎて』早見和真

読みました。もっと駄文認めないと駄目ですね。読んだことすら忘れてしまう。吉祥寺にある架空の本屋が舞台。そこで契約社員として働く主人公から見た店長やその本屋に関わる悲喜こもごもが描かれる。テイストとしては伊坂幸太郎の『チルドレン』、最近のだと宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』が読み心地として近い。『チルドレン』であれば、陣内というトリックスターを、『成瀬は天下を取りにいく』は成瀬という風雲児を、周りにいる存在が、時に振り回されながら、時に奇跡に遭遇しながら、目撃していく。今作では、その存在が店長となる。店長には、陣内や成瀬と違い、カリスマ性はない。ただただ侮られるバカとして描かれる。しかし、その店長が作り出す吸引力から、物語は逃れることができない。愛すべきバカなのではないか、と読者が思ったその時に、その期待さえも裏切っていくのが店長その人なのである。これは、確かにキャラクター小説で、店長とその周りの出来事を通して、主人公が自分を見つめ直す物語でもある。店長の周りで起こるミラクルを、店長の魅力に収斂させて救いを用意しないのは、作者の照れのように感じた。物語の虚構で読者がカタルシスを感じないように、現実なんてこんなもんですよと我に返されるのだ。きちんと店長を嫌いになれる小説は珍しい。


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