ひとりになったら寂しくて死んじゃうやつ

ぼくはやっと一人でよたよたと歩けるようになったくらいで、まだ1歳にもなってない。正直ママがいないと寂しくなって世界の終わりかのように泣いちゃうくらい。基本いつも抱っこされていたいし、いつまでもママに包まれていたい。つまりは幼くって、まだ赤ちゃんだということ。

その日は一人で大きな公園の芝生広場の真ん中に座らされていた。

いつもの公園よりずっと大きくて広い芝生広場にはイチョウの落ち葉がたくさんあって、緑と黄色で一面が覆われていた。太陽の日差しがビルの窓ガラスに反射してぼくの周りだけをよりきれいに輝かせている。

ぼくはそこに座りながらずっとそらを見ていたかった。すごく青い色がきれいで、緑の芝生と黄色い落ち葉を見ていた。


ぼくはすごく心地よかった。

ママやパパもおんなじ気持ちなのかな? 
ぼくが見ている景色はママも見ているのかな。
なんて素敵な光景だろう。なんてきれいな空なんだろうって。

ぼくがそう思ったのは、これからぼくが成長していく中できっと出会ってしまうであろう人たちのこと。
高校生になったくらいでバイク事故で死んじゃったお兄ちゃんや、お金を貯めるだけ貯めて墓場までお金を持っていったおじいちゃんや、自分の欲望を満たすために盗撮を繰り返していた僕が生まれた病院の先生や、狭い道でよけようともしないでぶつかってくるさみしい女の人や、ベビーカーを見ると舌打ちしてくる白髪混じりのサラリーマンや、差別をしてお金を稼ぐ人や、人を騙す人や、暴力を振るう人や、戦争をしようと考えている人もみんな今のこの景色を一緒に見れたらもう少し周りの人にやさしくなれるんじゃないかなって。
そう思ってるよ。
だって、ぼくはまだ赤ちゃんだから人を信じられるんだよ。


ママ、パパ、いまどこにいるの?

ぼくはそこにいるの?


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