【人事必見】会社の未来が変わる!セルフ・キャリアドックについて徹底解説!
少子高齢化の影響により、日本の労働力人口が不足している中、終身雇用・年功序列の崩壊、VCCA時代、人生100年時代といった日本の労働環境はここ数年で大きく変化しています。
現在、転職を希望している労働者は1,000万人にも上り、これは働く人口(労働力人口)が約7,000万人いるので、7人に1人は転職を希望しているということになります。
そんな中、企業は経営を継続していくためには、優秀な人材の確保+従業員がそれぞれの能力を活かしながら意欲的に働けるように支援し、離職者の防止に努めなければなりません。
そこで、今特に注目されているのが、セルフ・キャリアドックです。
今回の記事では、セルフ・キャリアドックについて徹底解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
⚫︎セルフ・キャリアドックとは
まず、セルフ・キャリアドックの定義についてですが、厚生労働省の資料によると、以下のように定義されています。
よりわかりやすく説明すると、各従業員が中長期的な視点でキャリアビジョンを持てるように、またそのキャリアビジョンを自身が主体となって実現していくための支援として企業がする取り組みのことを指します。
また、"主体的なキャリア形成"とは、私は下記のように定義しています。
「主体的なキャリア形成」や「キャリアの定義」については、こちらの記事で詳しく紹介しておりますので、興味のある方はご覧ください。
⚫︎セルフ・キャリアドックが注目される背景
◻︎少子高齢化による労働力人口の減少
現在の日本は、少子高齢化が深刻な問題であり、労働人口、つまり15歳〜65歳未満の働くことができる人口が年々減少し続けています。
また近年の有効求人倍率を見ても、コロナの影響で一時は下がったものの、2023年は1.31であることから、求職者側が有利の売り手市場になっています。
※有効求人倍率が1より高い場合、企業側としては応募者がなかなか集まらない状況になります。
そのため、企業にとっては今後、継続的に人材を確保することが難しくなってくると予想されます。
つまり、企業側は、人材を確保できない分、1人当たりの生産性を高くして、そういった生産性の高い優秀な人材に長く働いてもらえるようにしないといけません。
したがって、今働いている人材の育成がより重視されるようになり、セルフ・キャリアドックが注目され始めました。
◻︎終身雇用の崩壊&人生100年時代の到来
もう一つは、終身雇用が崩壊したのにも関わらず、人生100年時代が到来したことによって、今までのキャリア形成が全く通用しなくなったということです。
今までは、「偏差値の高い大学に入って、大企業に就職すれば、定年まで一生安泰」というのが共通認識としてあり、「その企業の中でどう出世していくか?」というのがキャリア形成でした。
これは終身雇用が保障されており、定年が60歳かつ、年金支給年齢が60歳という制度があったから成り立っていたのです。
しかし、今の時代は終身雇用が崩壊し、定年は60歳から2025年4月からは65歳までの継続雇用制度が義務化され、近い未来に70歳まで定年が引き上げられることが予想されます。
つまり、今までのキャリア形成は、「今の会社でどのように出世して60歳まで働くか」という計画で良かったのですが、これからのキャリア形成は、「個人が"どう生きたいのか"というのを中心に、生涯にわたってのキャリアビジョンを明確にし、その実現に必要な知識やスキルを様々な企業を経験して得ていくこと」が重要です。
また、人生100年時代をネガティブに捉える方も多いと思います。
しかし、これは逆にいうと、今まで50歳であれば、「あと10年どのように逃げ切ろうかな?」と考えれば良かっただけですが、今後は50歳でもあと20年あるので、50歳からでも一花咲かせるための挑戦が可能になるということです。
さらに、今後は60歳以上の労働者も増えてくると思うので、企業側からしてもそういった年齢の労働者を支援していくことが必要になってくるでしょう。
したがって、終身雇用の崩壊&職業人生の長期化によって、企業にとっても、従業員にとっても主体的なキャリア形成・その支援をすることが重要になってきたのです。
⚫︎セルフ・キャリアドックを導入する効果
セルフ・キャリアドックを導入する効果は、主に下記の2点が挙げられます。
◻︎企業側の効果
企業がセルフ・キャリアドックを導入して得られる効果として、まずは人材の定着・従業員の生産性向上が挙げられます。
先ほどもお伝えしましたが、少子高齢化の影響によって、企業は今後継続的に人材を確保することが難しくなってくると予想されます。
ちなみに、「従業員を1人雇用するのにかかるコスト」はご存知ですか?
リクルートが出している「就職白書2020」では、2019年度の新卒1人あたりの採用コストは93.6万円、中途の場合は103.3万円かかっていると言われています。
さらに、厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、2019年3月(平成31年)に大学を卒業して、就職した人の3年以内の離職率は31.5%となっています。(ちなみに、高卒は35.9%、短大卒は41.9%)
つまり、企業側からすると100万円近くかけて新卒社員を採用したとしても、3年後にはその3割は退職してしまうので、かなりコスパが悪いです。
そのため、100万かけて採用した新卒社員に長く働いてもらうためには、「個人のキャリアビジョンを明確にし、それを実現できるのはうちの会社なんだよ」と従業員に対して促し、働くモチベーションをアップさせる必要があるでしょう。
人材の流出が減れば、採用・教育コストの削減も期待できます。
また、100万かけても3年以内に辞めてしまうのであれば、そもそも採用する人数を減らすという選択肢もあります。
その場合は従業員の数が少なくなってしまうので、必然的に従業員1人あたりの生産性をアップさせる必要があります。
つまり結局は、従業員の働くモチベーションが上がれば、人材の定着や1人あたりの生産性アップにもつながると考えられ、モチベーションを上げるためには個人が「何のために働くのか?」というキャリアビジョンを明確にする必要があるでしょう。
その他の効果としては、セルフ・キャリアドック制度を導入している会社は少ないので、求職者からすると「働く環境が整っている」などのイメージアップも図ることができます。
◻︎従業員側の効果
従業員が、セルフ・キャリアドックを導入して得られる効果としては、自分のキャリアビジョンが明確になることで、今後やるべきことや身につけるスキルが明確になり、働くモチベーションが向上することが挙げられるでしょう。
自分の自己理解が進み、今後やりたいことなどが明確になれば、仕事に意味を見出すことができると思います。
例えば、Aさんは、営業の仕事をしていますが、特に仕事の目的はありませんでした。
ある時、セルフ・キャリアドックを受け、「営業部のリーダーになり、営業もしながら、後輩の育成も頑張りたい」という目標を立てたとします。
その場合、Aさんは「リーダーシップスキルを高めるために、リーダーシップ研修に参加」したり、「後輩の教育をするためにカウンセリングスキルを学ぶ」など、様々な今後するべきことや身につけるスキルが明確になりました。
また、Bさんは事務の仕事をしていますが、あまり仕事にやりがいを感じていないとします。
ある時、セルフ・キャリアドックを受けたら、自分は「人と話したり、自分が本当にいいと思ったものを、人におすすめして喜んでもらえることにやりがいを感じることに気がついた」とします。
その場合、上司に「事務から営業に異動できないか?」と相談したり、「今の事務で人との関わりを増やすためにはどうしたらいいか」などの行動を起こすことができます。
また、企業にとっても、従業員を適材適所に配置できることは非常に良いことだと思います。
このように自己理解をすることによって、働く意味や目的を持つことができます。さらに自分が今後やるべきことが明確になることによって、働くモチベーションが上がり、仕事をすることで充実感を感じることができるのではないでしょうか。
また、もう一つの効果として、"自身のキャリアを考える時間を確保することができる"ということです。
働いていると、「目の前の仕事のことでいっぱいで、今後のキャリアなんて考えている余裕がない」といった方は多いのではないでしょうか?
実際に厚生労働省の調査では、令和3年度に自己啓発を行った者は、労働者全体の34.7%しかいないことがわかります。
(※自己啓発:自らの知識や能力を向上させるための自発的な行動)
また、自己啓発を行なっていない理由として、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が58.5%あります。
つまり、労働者の2/3は自己啓発をしておらず、その理由のほとんどが「仕事が忙しくて余裕がない」ということです。
そのため、そういった人にとって、会社側が強制的に自分のキャリアについて考える時間を設けてくれるのは、非常に良い機会だと思います。
また、セルフ・キャリアドックは、キャリアのプロである、キャリアコンサルタントと一緒に自分のキャリアを考えることができるので、無料でプロのキャリアコンサルティングが受けれると思うと非常に有意義な時間になると思います。
⚫︎セルフ・キャリアドックの導入で、逆に離職者が増えるのでは?
セルフ・キャリアドックを導入することによって、「逆に従業員が離職するきっかけになってしまうのではないか?」と心配される方もいます。
確かに、セルフ・キャリアドックによって自分の強みや価値観に気づくことができ、将来のビジョンを明確にすることができます。
そのため、従業員が「現在の仕事では将来のビジョンが達成できそうにない」と感じたら転職を考えるのは自然な流れでしょう。
しかし、「現在の仕事では将来のビジョンが達成できそうにない」と感じた従業員を無理やり止めることは、会社と従業員のお互いにとってデメリットしかありません。
もちろん従業員は、自分に合った職業に転職することで、今よりも仕事の満足度が高まると思いますし、企業からすると、仕事にやりがいを感じない従業員を長く働かせるよりも、やる気に満ちた従業員の昇進や、新規の採用を行った方が、長期的に見て効果的だと思います。
したがって、セルフ・キャリアドックを導入する際は、「逆に従業員が離職するきっかけになってしまうのではないか?」と一時的に離職を助長する可能性を心配するよりも、「従業員が積極的な姿勢を持つ」や「主体的に資格やスキルの獲得を目指す」など、長期的な効果に目を向けることが重要です。
また、セルフ・キャリアドックの根本的な目的は、「従業員の自己理解を促進とキャリアビジョンを明確にし、どのように自身の会社に適合していくか・自身の強みを今の会社でどう活かしていくか」ということです。
つまり、個人の自己理解促進やキャリアビジョンの明確化だけを進めてしまうと、離職率が高くなる可能性がありますが、"今の会社にどのように適合していけばいいか"、つまり"セルフ・キャリアドックを導入することで、会社の業績を上げる"という観点を重視しています。
そのため、従業員のキャリアビジョンが明確になり、今の会社ではそれを実現することが難しいという判断に至った場合は、その従業員が企業とマッチしていなかったということなので、企業側も採用の際にそれを見抜けなかった責任があるでしょう。
企業側は、なぜマッチしていなかったのかという反省をして、今後の採用基準に活かしていけば、その経験は無駄にはならないでしょう。
⚫︎セルフ・キャリアドックの事例
セルフ・キャリアドックの事例に関しては、下記のサイトを見ると、50件近くの事例がわかりやすくまとめられています。
下記に、「セルフ・キャリアドックの導入後の効果」について、事例の中で特に参考になったものをまとめています。
▼セルフ・キャリアドックの導入後の効果
資格取得や受講等の情報提供や助言を受けることができて良かった
「どうありたいのか」というキャリア目標を言語化する中で、より効果的な成長につながっていることが実感できた
中長期的な視点でのキャリアについて行動を具体化できていないという課題に気づく事ができた
これまでの経験を振り返ることで、自分の強みを再確認し、自信を取り戻した
主な相談内容の傾向から、人事評価制度が不明瞭であると感じている者が多いことを知り、今後の制度策定の参考となりました。
⚫︎まとめ
今回の記事では、セルフ・キャリアドックを導入する目的や効果など徹底解説してきました。
下記に、今回の記事のポイントを記載しておきます。
時代の変化により、これまでの企業主体のキャリア形成は通用せず、今後は個人の主体的なキャリア形成が求められる
今後、企業は継続的に人材を確保することが難しくなってくるため、現在働いている社員の育成がより重要になってくる
セルフ・キャリアドックを導入することで、従業員は働くモチベーションがアップし、企業は人材の定着や従業員の生産性アップが期待できる
セルフ・キャリアドックを導入する際は、短期的なリスクではなく、長期的な効果に目を向ける
実際にセルフ・キャリアドックを導入した企業は、従業員からたくさんポジティブな意見が上がった
私個人の意見としては、「セルフ・キャリアドックの導入は、全企業で義務化して方がいいのでは?」と思うくらい、これからの時代の人材育成においては非常に重要だと思います。
ぜひ人事担当の方は、今回の記事をしっかりご覧いただき、経営層の方に対して、セルフ・キャリアドック導入の提案をしてみてはいかがでしょうか?
最後までご覧いただきありがとうございました。
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