『国民は知らない「食糧危機」と「財務省」の不適切な関係』を読んで
【名 前】国民は知らない「食糧危機」と財務省の不適切な関係
【作 者】鈴木宣弘/森永卓郎
【出版社】講談社+α新書
【発売日】2024年2月19日
【ジャンル】社会・政治・農業
要約
もし日本に「有事」が起こった場合、国民の9割が餓死するでしょう。戦争不安による各国の食糧輸出制限、気候変動による作物への被害、そして台湾有事。世界的な食糧危機が、現実になりつつあります。日本の食料自給率は現在37.6%ですが、有事の際は9.2%まで下がると予想されます。なぜなら、肥料などの農業に必要な物資はほとんど輸入に頼っているためです。食糧は輸入すればいい、という時代は終わりました。戦争不安による食糧の輸出規制をしている国は今や30カ国にも上ります。世界情勢が不安定な今、自国民の食糧確保を優先するのは当たり前のことです。
しかし、日本の政府は食料自給率を下げようとしています。日本の食糧政策はめちゃくちゃです。「米が余ったから田んぼを潰せ」「牛を減らすけどチーズはたくさん輸入します」「平時は農家をどんどん潰すけど有事の時はイモとか植えてみんなで頑張ってね」。こんなメチャクチャな政策をしているのは、農水省が財務省・経産省・日米のお友達企業に牛耳られているからです。
グローバル資本主義は終わりに近づいています。これからは「グローバルからローカルへ」「大規模から小規模へ」「中央集権から分権へ」と世界は変わるでしょう。食糧事情も同じです。輸入は消え、自分の分は自分で作る。余った分は近隣と交換。より小規模で、よりローカルになっていくでしょう。仕事をしながら、副業で農業をやる。これが未来のライフスタイルの一つになるでしょう。
食糧危機は人ごとじゃありません。日本で最初に飢えるのは東京・大阪でしょう。みんなで農家を支えることが、一番の安全保障になるのです。
覚えておきたい3つのポイント
本書を読んで、心に残った言葉、これは勉強になるな、と思ったことを3つ紹介します。
【1】最初に餓死するのは東京・大阪
・東京の食料自給率 0%
・北海道の食料自給率 220%
太平洋戦争の時、東京人は電車で郊外まで行き、着物などを差し出して頭を下げて食糧を分けてもらっていました。これと同じことが起こることは想像にかたくありません。
【2】農業を企業に全て任せるのは良くない
命に関わることを企業任せにするのはいいことばかりではないでしょう。企業は利益を追求するための組織なので、効率的な農業をするでしょう。安い化学肥料を大量に使ったり、安全性が保障されていない遺伝子組み換え作物を育てたり。効率的な農業を追求するあまり、健康への配慮を欠いた農業をやる企業は必ず出てくるでしょう。
【3】国民よ米を食べろ!
米は日本の土地にあった作物です。米は連作障害を起こしません。連作障害とは同じ土地で何回も作物を育てていると、土地が痩せ細り作物が育たなくなることです。気候的に見ても米は日本にあっている。米が余っているからと田んぼを潰すのは愚策でしかありません。なぜなら0から田んぼを作ることは簡単なことではないからです。米が余っているなら、米油にするなり米粉でパンを作るなり、加工食品にすればいいだけの話です。
そして国産のお米は安いです。米農家を守るためにも、米を食べましょう。何より美味しいですからね。
本書を読んだ感想
最近、地方から都会の方に引っ越してきたのですが、食料品の値段がとても高いことに驚きました。最初に餓死するのは東京・大阪という言葉が、実感として身に染みている今日この頃です。米の値段も1年前と比べてとても高くなりましたね。米を買うのをついつい渋ってしまうほどです。何となく米よりパンの方が安く感じますよね。でも茶碗一杯分で値段を考えると、まだ米の方が安いかも、とも思います。「国民よ米を食べろ!」と言われた時は、ガツンと頭を殴られたようでした。みんな米を食べましょう!
「化学肥料は体に悪い」とか「遺伝子組み換え食品は怖い」とか、そんな保守的な考え方は科学の発展には邪魔だと思っていました。でも、この本を読んで考え方が変わりました。私は極端だったんだと思います。技術革新で農業を効率化して食糧危機を救おうとすることは、正しいと今でも思います。でも、化学肥料や遺伝子組み換えに危機感を持って、有機農法を進めることも絶対に正しいことです。それぞれのやり方のメリットとデメリットを理解して、どっちに転んでも慌てずに対処できるようになりたいものですね。
命に関わることを企業任せにしては危険。これはとても一般的な考え方ですよね。食糧にもこれは当てはまると聞いて、なるほどなと納得しました。
資本主義が終わって「グローバルからローカルへ」「大規模から小規模へ」「中央集権から分権へ」の社会に突入する。と森永さんは主張していました。私はとても住みやすそうな社会になりそうだなと思いました。地方が権力を持って、各地方が独自の政策を出す。多様な社会が生まれて、自分のライフスタイルに合った地方に住むことができる。成田悠輔さんの著書『22世紀の民主主義』の中で、これと似た言葉が出てくる。
(この本は過激な言葉ばかりが取り沙汰されていて、とても勿体無いと思います。もっと面白い考え方が沢山出てくるのに、、、)
そんな多様な生き方の中に、仕事をしながら副業で農業をやる、というのは私個人としてはとても魅力的に写りました。