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圧倒的、夏目漱石「愛」に満ちあふれた作品!『夏目漱石ファンタジア』感想

夏目漱石。

過去にお札の顔になった人ですよね。

とは言っても。

やはり、『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』などを執筆した。

有名な作家様といった方がいいでしょうか。


いずれにせよ。

後世に名を残している。

偉大な人であるということには。

変わりないと思います。


では、なんでこんな事を書いているのかと言うと。

本日、ご紹介するライトノベルが、零余子先生の『夏目漱石ファンタジア』(2024年2月刊行)だからです。

さて、最初に書いておきますが。

今回の作品は、かなりの怪作ですよ!



あらすじをどうぞ

今回は、「紀伊國屋書店ウェブストア」さんより、あらすじを引用させていただきます。

 西暦一九〇六年。夏目漱石、作家の自由を脅かす政府に反逆。
 西暦一九一〇年。夏目漱石、暗殺。
 西暦一九一一年。夏目漱石、樋口一葉の身体にて蘇生。

「――彼女の肉体に、俺の脳を移植したのか」
 森鴎外による禁忌の医術を受け夏目漱石は樋口一葉の身体で蘇った。それは帝都に渦巻く闇との戦いの再開を意味していた。
 誰が自分を殺したのか。どうして鴎外は漱石を蘇らせたのか。そして作家をつけ狙う殺人鬼『ブレインイーター』の正体とは。
 様々な謎が見え隠れする中、漱石の協力者の筈だった野口英世が独自の思惑で動き出し――文豪バトルファンタジー開幕。

夏目漱石ファンタジア / 零余子/森倉円 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア (kinokuniya.co.jp)


ということで。

本日のテーマは、「夏目漱石」です。



いや待って。何、このあらすじ……!

さて。

あらすじを読まれた方は、驚いたかと思います。

「夏目漱石が、樋口一葉の体で蘇った……? どういうこと?」と。

落ち着いてください。

説明します。


まず、この作品の世界観なのですが。

1910年代の日本を舞台として。

誰しもが聞いたことのある、人物ばかりが登場します。

夏目漱石樋口一葉はもちろんのこと。

森鴎外。

野口英世。

芥川龍之介。

小泉八雲。

正岡子規といった。

江戸から大正にかけての。

有名な人たちが。

この作品には大量に出てきます。

しかし、ただの作家や俳人ではありません。

夏目漱石は、武闘派集団をまとめる、戦えるリーダーとして。

森鴎外は、違法な治療を施す、超人的な闇医者として。

登場します。

つまるところ。

この作品の登場人物は。

かなりの奇天烈なフィクションが織り交ぜられているのです。


さて。

あらすじに戻るのですが。

とある事件によって、暗殺された夏目漱石でしたが。

森鴎外の「脳移植」という禁断の医療によって。

樋口一葉の体で蘇生します。

また、夏目漱石と樋口一葉の関係は。

史実では樋口一葉は、漱石の兄との縁談が持ち上がった位の関係性(※1)でしたが。

この作品で一葉は、漱石の元婚約者という設定になっています。


※1 本書の用語集より。出典は、漱石の妻である夏目鏡子の著書『漱石の思ひ出』とのこと。

『夏目漱石ファンタジア P207』


おまけに、若くして亡くなった樋口一葉の体は。

森鴎外によって、冷凍保存されていました。


もう、これだけの設定で。

お腹がいっぱいになるくらいですが。

このお話は、これだけでは終わりません。



ブレインイーターと呼ばれる、殺人鬼

このお話の最大のポイントは。

「作家の脳」だけを狙う、殺人鬼ブレインイーターの存在です。

この作品では。

正岡子規をはじめ。

作家である、国木田独歩と。

山川登美子が。

その殺人鬼の手に掛かり、脳を奪われてしまっています。

その上、本来なら、冷凍保存されていた樋口一葉も。

ブレインイーターによって、脳を奪われていました。

故に、森鴎外は。

頭だけ無事だった夏目漱石に。

樋口一葉の体を移植したのです。


ですが、謎が残ります。

どうして、ブレインイーターは、作家の「脳」だけを奪うのか。

どうして秘匿に冷凍保存されていた、樋口一葉を見つけることができたのか。

その謎を踏まえた上で、読者は。

物語を読んでいきます。

そのミステリー的要素。

私は、たまらなく面白かったですね!




とはいうものの

そんな謎を含めつつ、物語は進むのですが。

前半は、神田高等女学校(現:神田女学園中学校・高等学校。詳しい説明は、※2を参照)を舞台として。

第二の人生を「樋口夏子」として生きる、夏目漱石の話と。

後半は、ある人物の暗躍に翻弄されながらも。

バトルなファンタジーを繰り広げる、夏目漱石の話となっています。


※2 神田女学園の創立は1890年。初代校長の竹澤里先生は、当時極めて低調だった女子教育の必要性を痛感し、苦学力行して東京女子高等師範学校(現在のお茶の水女子大学)を卒業後、教育界に入り女子教育の先駆者のひとりとなりました。

 女性の社会進出など不要と言われていた時代に、女性が学校を創立させるためにどれだけの苦難を味わったか。そのような中でも「目的一貫」「敵を愛せ」と唱え、女子教育家になる夢をあきらめずついに学園を創立させます。以来、関東大震災や太平洋戦争など幾多の試練を乗り越えながら神田女学園の伝統は脈々と受け継がれ、今日まで女子教育の輪を広げてきました。

沿革・校訓 | 学園の紹介 | 神田女学園中学校高等学校 (kandajogakuen.ed.jp)



この話の面白い所

なんといっても、ぶっ飛んだ人物と世界設定ですね!

そして作者様の圧倒的な知識量です!

正直、奇天烈な設定は、他の作品でもあるので。

そこまで驚かないのですが。

作者様の、夏目漱石「愛」といいますか。

その時代にある、大量の知識がこれでもかと詰め込まれています。

これは、他のどの作品でも見たことがない!

作者様の後書きで。編集者から。

「君はただアクセルを踏み給え」(P331)という言葉を、いただいたらしいのですが。

全くもって、その通りだと思います!

とにかく。

夏目漱石「愛」が、これでもかと描かれた作品は。

私は、見たことがありません。

またライトノベルには、珍しく。

大橋崇行先生という、成蹊大学の准教授様が。

解説を書いているので。

そこもポイントの一つだったりもします。



この作品の欠点について

物語の後半からは。

非常にライトノベルらしい内容になってくるのですが。

前半部分が。

普段のライトノベルに慣れ親しんだ人にとっては。

非常に、面食らう内容になっている事だと思います。

私は、面白く読むことが出来ましたが。

この作品は、最初の段階で。

読む人が、脱落するのではないかという思いが。

あったりするので。

そこが心配事項です。


最後に

とはいうものの。

ここまで、夏目漱石や他の文豪についての。

圧倒的な知識で描かれた作品を。

私は見たことがありません。

なので。

そういった歴史的な物が好きな方には。

非常にオススメできる作品ではないかと、思っています。


さて。

最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

この作品に、ご興味がありましたら、是非、手に取ってみてください。

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