フィンランドの職場で体験 -ゆるり対話の時間-
僕は日本で博士号を取り、
今はフィンランドの研究機関で働いています。
この夏一番の思い出は、サマーコテージでの研究室旅行です。
研究室の仲間と心地よい時間を過ごしました。
前回の投稿ではサマーコテージでのドタバタと自然の中でのアクティビティーを紹介しました。ぜひご覧ください。
コテージには遊び100%でいったわけではなく、職場に関して気になることを話し合うのも大きな目的でした。
今回は、湖畔で行ったミーティングの様子を投稿します。
話し合いをしたロケーション、議論の中身と解決方法。どれもとってもフィンランドらしかったのでシェアします。
フィンランドで出会った「良い」職場環境
湖畔で行われたミーティングの議題は、「職場をより良い環境にするには?」でした。
良い職場環境と言っても国や文化によってその答えは異なると思います。まずはフィンランドの、少なくともうちのメンバーが共有する、良い職場環境に関する価値観を紹介します。
それを知ったのは着任初日。
教授と1対1で話し合う場がありました。
開口一番、こんなことを言われました。
「まず初めに、身の回りを自分にとって心地よい環境にしてね。」
続いて、こうも言われました。
「君のオリジナルな研究計画を発案するのはもちろんだけど、同僚の研究アイデアを聞きまわって、協力できる部分を探してみてね。まずはみんなと仲良くなって毎日を楽しんでね。」
先入観を持たずに現地の人の考え方に慣れていこうと思って臨んだ初日でしたが、あまりに予想外でした。
こちらに来て思うこと。
対等な立ち場でお互いの理解を深めることは、チームの活気を高めるだけでなく創造力も高めるんだなあと。
「研究者」というと、
実験室で黙々と試験管を振り、ひらめいた!と言っては黒板に小難しい数式を書きなぐる…というようなイメージを持たれるかもしれません。
しかしながら実際のところ、
フィンランド (ヨーロッパ) の研究環境では職員同士のコミュニケーションが重要視されます。
それは、働き方にも表れています。こちらでは、複数の研究室の主宰者が共同で大型の研究資金を獲得し、正に「同じ釜の飯を食う仲間」のように働くことが珍しくありません。また、専門の独立した部署が高価な実験設備を管理しており、いろんなラボでそれらの機器をシェアしています。
このような背景から、研究機関の様々な立場の方々と交流する必要性が自然と生じます。
幅広い人間関係のなかで、みんなで1つの仕事を作り上げるのが良いことだと感じています。
職場に友達はどのくらいできた?
これは、今回のミーティングでボスがみんなに投げかけた質問です。
フィンランド人というと、シャイで物静かというイメージが先行します。
そのようなステレオタイプとは裏腹に、
僕はフィンランド人の友人や同僚に違う印象を持っています。
彼/彼女らは正直な性格で、好きなことにまっすぐな方が多い印象です。誰かの発言に被せて物を言うことも臆さず、ストレートに意見を伝える場面が頻繁に見受けられます。
このようなコミュニケーションの方法はフィンランド文化の一部だと感じます。議論によって何かを形にすることを大事にしている人が多いです。
上で触れたように、幅広い人間関係の中で意見を活発に交換することが重要視されているので、自然とフランクでフレンドリーな交流をできる場が理想だと捉えられているようです。
そのような文脈の中での
「よい職場環境」そして「職場の友達」という話をしました。
ゆるっと解決
職場の話といっても、あくまで職場旅行ですので
和やかに話し合いは進みました。
今のメンバーは仲が良いです。
議論が白熱することは頻繁に起こりますが、理解しあう姿勢、高めあおうという意識を共有できているのがとても心地よいです。
湖畔に置かれた木の長机に座り、
フィンランドの菓子パン"プッラ"、コーヒーを飲みながら。人によってはジュースやビールなど各々好きなものをつまみながら話し合いました。
Hygge (ヒュッゲ)
デンマーク語で「居心地がよく快適な空間」のことを指します。今、日本でも注目されているマインドセットです。
フィンランドでも、いわゆる"ヒュッゲ"な環境は大切にされていると思います。
緊張をほぐした状態を作って、オープンなコミュニケーションを密に取る。職員同士の価値観、優先事項、悩み事を共有し、すり合わせる意識が高いと感じます。
今回の話し合いでは、メンバー間の研究アイデアの共有が足りておらず、気兼ねなく集まれる場が必要だよねという話になりました。
その結果、隔週でワッフルデーを開催して、日々の進捗や課題を共有、解決する場にしようという結論に至りました。
フィンランド、こういうところが大好きです。
おまけ
<余談>
途中で紹介したマグカップですが
ムーミンたちがニョロニョロの島に上陸したときのヘムレンさんが描かれています。まだ見ぬ植物を探そうと意気揚々と森へ入っていくも、夢中になるあまり知らぬ間にニョロニョロに囲まれてしまいます。結局、無事スナフキンに救出 (回収) されるのですが。
僕はシンパシーを感じて好きなんですが、いかんせん現地での人気がなく、大量に売れ残っているマグカップを見て心を痛めています笑
フィンランドにお越しの方、売れ残りのヘムレンさんを見かけたらお迎えしてあげてください。
<今日のフィンランド語>
今回から、投稿の最後に僕がフィンランドで出会った素敵な単語やフレーズを紹介します。ほっこり、またはくすっとなれるものを紹介できればと思います。
・mökki (モッキ)
訳: サマーコテージ
・(Pistää) aivot narikkaan!
発音: (ピスター) アイヴォット ナリッカーン
直訳: 脳みそを衣類ラックにかけてね
意訳: リラックスしよう、精神的に負担がかかる考えをとめよう
ではでは