鬱関連の本を読み漁って、皮肉にも読書力がついた。
僕は鬱が辛いので、鬱関連の本を読み漁った。それで皮肉にも読書力がついてしまった。それは、どの分野の本にも色々な意見があるということ、書かれている内容を全て読むこと、そして、その本を通して著者が主張したいことがある、これらのことを学んでしまった。
まず「どの分野の本にも色々な意見があるということ」だが、一つの分野における意見は色々ある。肯定派、中立派、反対派などだ。だから、ある分野に関することを調べようと思ったら、最低この3冊は読んだ方がいいと思う。仮に肯定派だけの本を読んだら、自分の中でその考えだけが正しいと思うようになる。これではちょっと危ない。こうなるくらいなら、読まない方がマシなレベルだ。鬱に関してもさまざまな意見がある。良書もあれば、悪書もある。これらを読むことによって、中道みたいなのが見えてきた。
そして、「書かれている内容を全て読むこと」だが、都合のいい所だけつまみ読みするのは、これもまた偏った考えをもつことになる。例えば、鬱に関する本を読むと、基本的には、鬱とはこういった病気で、症状で、薬物療法があり、精神療法があり、生活療法が大事、と書かれている。それで、つまみ読みしてしまうと、「鬱はこういう『病気』なのだから、要は薬を飲んで寝ていたら治るんでしょ?」となりかねない。これはもちろん僕の経験談だ。ただ、よく読むと、精神療法や生活療法も重要と書かれている。鬱を治していくためには、これらの療法が重要になるのだが、つまみ読みすると、どれかに偏ってしまう恐れがあるのだ。このことは、他の本でも当てはまると思う。ただ、本によっては、辞書的につまみ読みしたほうがいい本もあれば、興味のないところは飛ばしてもいいと思うので、何でもかんでも全部読めというわけではないと思う。
最後に、「その本を通して著者が主張したいこと」だが、本を書くということは、何か主張したいことがあるはずだ。そして、本というのは往々にして、三段論法で書かれている。要は、「こうで、こうだから、こうなる」といった具合の構成になっている。また、直接的に主張はしていないものの、「要はこういうことを言いたいんでしょ」というのが見えてくる。僕は最近気づいたのだが、本を読み終わって、改めて目次を読んで、その本の骨組みを理解することで、結局何を伝えたかったのか分かるようになった。
鬱に関する本を読みまくることで、皮肉にもこのような読書力がついてしまった。
ただ、鬱の時にこういう読み方をするのは、かなり大変なのだ。なぜなら頭を使うからだ。だから僕は本を読むとヘトヘトになる。そして、鬱に関する本はそれほど読まなくてもいいと思っている。
仮に、「うつ病」と診断されたとしましょう。いや、他の病気でもいいかもしれません。その手の病気の分かりやすい教科書的な本が売っていますね。文章が少なくて、図解が大きい本です。正直これ一冊で充分です。それで、「ふーん。こういう病気なんだ。こういう症状がでるんだ。こういった療法があるんだ」くらいの感覚でサラッと読むのがいいです。後は、主治医を信頼して、自分に出来ることをコツコツとやるのがいいです。下手に色々読む必要はないと思っています。色々な意見がありますからね。そして、こんがらがってきますしね。そして、疲れますからね。
ちなみに僕は18歳くらいまで文章が読めなかった。教科書はもちろん、漫画も読めなかった。また、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストなどのRPGの類もできなかった。もしかしたら知恵遅れだったのかもしれない。
さすがにこれはマズいと思い、18歳頃に本を読む訓練をした。訓練といっても、何も特別なことはしていない。ただひたすら読むのである。本を読むということは、体をジッとさせなければならない。多分これが嫌だったのだと思う。それで我慢してひたすらジッとしてたら、読めるようになった。ここから読書中毒である。
本を読み始めると、本に書かれていることは全て正しい、と思ってしまうところがある。つまり、書かれている内容を無批判に受け入れるのだ。これは結構危ないことなのだが、筋トレでいう筋肉痛みたいなものだ。要は、良い作用もあるが、副作用もあるということだ。
それで、次の段階として、本に書かれていることは、必ずしも正しくない、と気づき始める時期がくる。つまり、批評的に読むようになるのである。「そりゃさすがに極端な考えだよ」とか「結局あなたの解釈でしょう」とか突っ込みながら読むようになる。僕は18歳から読書を初めて、批評的に読めるようになるのに、10年くらいかかった。これは随分長かったですな。つまり、ここ最近ようやく批評的に読めるようになったんですな。
そして、次の段階として、本に書かれていることを受け入れ、批評し、ようやく自分の考えがもてるようになるのだと思っている。要は、この3つの段階を経るのだと思っている。
本というものは奥が深いですよ。そして、結構危ないですよ。