寝てたら鬱は治るの?

鬱関連の本を読むと、大体「薬を飲んで、休養してストレスのない生活をおくりましょう」と書かれている。ただ、これをしていて鬱が治ったら苦労しないだろう。大半の人は、これでは鬱が治らないと思う。いや、大半の人は、これで鬱が治って、実はこれで鬱が治らない人が少数派なのかもしれない。

例えば、僕が好きな坂口恭平さんはこう言っている。

 鬱を早めに切り抜けたくないですか? 検索をすればするほど、鬱は長引きます。体を起こせば起こすほど、鬱は長引きます。とにかく目を瞑って、体を横にしましょう。検索すればするほど、焦ります。煽られます。頭を使います。使えない頭を使って考えると妄想がひどくなります。悪いことしかないので、検索はしないでください。鬱のときはカンダバシ語録をプリントアウトして読むか、この僕の躁鬱大学を読んでください。

 それだって、本当はしなくていいんです。多くの時間寝ていてください。寝れば治ります。寝たぶんだけ、治るのが早まります。鬱の信号には、体を休息させたいという意味があるからです。はっきり言えばそれだけです。自己否定的な信号を出さないと、すぐ立ち直って、あなたが動き出すことを体は知っているわけです。

坂口恭平『躁鬱大学』

要は「寝てたら鬱は治る」と言われている。

また、僕が好きな北杜夫さんはこう言っている。

 うつ病で一番恐いのは自殺だ。しかし、躁うつ病は循環するもので、時期が来れば必ず治る。私は自分がうつ病のときは、「虫の冬眠」と称して、「必ず治るものだ」と信じてグータラしていた。食事も一日一回だけ。夜の七時まで寝ていた。それがよかったようだ。

 もし、うつ病で落ち込んだりしたときは、まず専門医にかかり、薬をもらって、じたばたしないで、ただただジーッとしているのが一番よい。

北杜夫・斎藤由香『パパは楽しい躁うつ病』

要は「虫の冬眠」で、「じたばたしないで、ただただジーッとしているのが一番よい」らしい。

僕がよく転載させてもらっている、noteに記事を書かれている精神科医である基礎知識さんは、記事でこう書かれている。

本当に何もしないで休むだけで治るうつ病

「何もしないで ゆっくり休みなさい」と伝え続ける必要があるのは、従来診断でのうつ病の多くを占めていたメランコリー親和型のうつ病だけである。

メランコリー親和型は病気になる前の元々の性格が、責任感や役割意識が強く、仕事熱心で、病気になる前は社会的にも家庭的にも上手く行っている場合が多い。

このタイプの人は、自分がうつ病であることを否定し、自分の努力が足りないだけだと信じできない自分を責め続け、ちょっとでも動けるようになると、焦って動きだしすぐに力尽きて動けなくなることを繰り返す。

そのため「病気なんだから何もするな!」「何もしないことが今のあなたの仕事」と伝え続けることで回復する。

正確に言えば「何もするな」と言い続けても、ある程度回復したら少しずつブレーキをかけながら動き出し、体力や精神力も回復させていく人たちである。

基礎知識『うつ病は休むだけで治る?』

要は、「『何もしないで ゆっくり休みなさい』と伝え続ける必要があるのは、従来診断でのうつ病の多くを占めていたメランコリー親和型のうつ病」と言われている。

また、いわゆるメランコリー親和型以外のうつ病に関してはこう書かれている。

メランコリー親和型以外のうつ病

同じうつ病という診断でも、何もしないで休むだけでは回復しない。

1~3ヶ月しっかりと休んだ後は、つらいけれどちょっとだけ疲れる程度 身体を動かし心身の回復を図るのがうつからの回復に不可欠である。

ただ「身体を動かすように」というと、いきなり30分歩いて、翌日から疲れきって動けなくなってしまう人がいる。初めは数分程度の、家の周りの景色をみながらゆっくりと歩くので十分である。ちょっと物足りない程度の運動に留めておいて、続けることで体力が回復していき、体力の回復に合わせて、少しづつ時間や運動強度を強めていくことが大切。

基礎知識『うつ病は休むだけで治る?』

要はメランコリー親和型以外のうつ病は「同じうつ病という診断でも、何もしないで休むだけでは回復しない」らしい。

まとめると、坂口恭平さんや北杜夫さんは要は「寝ていたら鬱が治る」と言われている。また、『基礎知識』さんはメランコリー親和型のうつ病に関しては、それでいいらしい。ただ、厳密には「正確に言えば『何もするな』と言い続けても、ある程度回復したら少しずつブレーキをかけながら動き出し、体力や精神力も回復させていく人たちである」らしい。

それ以外のうつ病の場合、「1~3ヶ月しっかりと休んだ後は、つらいけれどちょっとだけ疲れる程度 身体を動かし心身の回復を図るのがうつからの回復に不可欠である」らしい。

僕は精神科医でも学者でもなんでもないのでよく知らないが、これは正論だと思う。

僕が思うに、坂口恭平さんや北杜夫さんのような真にピュアな躁鬱病の人は、寝てたら鬱が治るのだろう。北杜夫さんは「循環する」と言われている。また、『基礎知識』さんが書かれているように、従来型のメランコリー親和型のうつ病も寝てたら大体鬱が治るのだろう。

ただ、坂口恭平さんや北杜夫さんと僕ら(僕らと言って失礼だが)が違うのは、坂口恭平さんや北杜夫さんは、文章を書いたり、絵を描いたり、曲を作ることで生計を立てている。だから彼らにとっては、精神科のデイケアや作業所やリワークといった、いわゆるリハビリが必要ない。彼らは極端な話、文章を書けたり、絵を描けたり、曲が作れればそれでいいのだ。ただ、大体の人は、どこかに雇われていて、復職することを目指しているだろう。この違いも結構あると思う。

『基礎知識』さんが言うように、ある程度、休養していても治らない鬱は作戦を変える必要があると思う。要するに、治していくためのある種の「努力」が求められるということだ。

そりゃ、寝て鬱が治るならいつまでも寝ていたいですわ。

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