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「マルクス解体」を紐解く|レビューエッセイ#1

第一章 はじめに


今では伝説の古典のように扱われている「資本論」。その内容はたぶん、資本とは何か、資本を突き詰めた先に何があるのか、そして人類はどこへ行くのか、というようなものだと思う。

一応「資本論」を通読はしてみたものの、正直問題が込み入り過ぎて読み解けなかった。20時間以上かけて読んだのにその内容の10%も理解できていないと思えるほど、難しかった。そして悲しかった。

勝手な解釈だが、おそらく”読書家”と呼ばれる人の多くは、いつかは「資本論」を読まないといけないという使命を抱えているのではないだろうか。だが、その羨望に近い義務感によって、間違いなく多くの本読みの心はズタズタになるだろう。いつも通り読書をしているはずなのに、ページが全く進まない。果てには読むのを諦めてしまう。
僕の”読書筋力”は全然だったのだろうか? なぜ書いてある言葉が理解できないのだろう? 恐らく挫折というかたちで悲しくなるのがオチだろう。(サンプルは既に1ある)

だから初めに「資本論」なんてよく分からない本を開かずに、それを解説している本を読むのを勧める。そしてカール・マルクスという人物の核に触れたければ、斎藤幸平先生の「マルクス解体」という著書が良い。


著書「マルクス解体」の簡単な概要

この著書の副題は 、~プロメテウスの夢とその先~、といういかにも厨二心をくすぐるカッコいい題が添えられている。だが、”プロメテウス”という言葉は専門用語であり、多くはプロメテウス主義と使われる。

”プロメテウス主義=生産力至上主義”

なのでこの著書は、現代社会の生産力や効率ばかりを重視した資本主義経済を続け、その理想を追い求めていくその先に何があるか、それを解き明かしていくのを目的としている。答えを言ってしまうが、このまま今の経済を発展させていけば、人類の行き着く先は破滅しかない、というありきたりな結論に行き着く。
それは多くの人が薄々感じていることで、多くの経済学者にとっては自明のことだ。(反対に技術革新を推し進めれば環境問題すら解決できる、と考える楽観主義の立場を取っている方ももちろんいる)

だが、斎藤幸平先生の「マルクス解体」はその平凡の結論のその先を描く。これから僕たちは、どうやって生きていけばいいのか(あくまで経済の目線で)をきちんと提唱してくれる。
これからの僕たちには「脱成長コミュニズム」が必要だと言う。
この概念は少し説明が難しい。だからここでは割愛する。だが、資本主義に代わる新たな経済のかたち、脱成長コミュニズムが必要となることは意識して欲しい。

この本は世に溢れる平凡な批評書とは違う。きちんと確からしい答えを読者に提供している。この逃げない姿勢が、研究者としてとてもカッコいいし、信頼できる。これがこの本を勧める理由の一つでもある。

「マルクス解体~プロメテウスの夢とその先~」は2023年10月に発刊された。元は英語で記述され、ケンブリッジ大学出版で2023年1月に出版された。


斎藤幸平という才能

2023年時点、斎藤先生は東京大学大学院総合文化研究科で准教授として教鞭を執っている。最終学歴はベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。(この大学は、あの有名なフンボルトペンギンを命名したアレクサンダー・フォン・フンボルトの兄、ヴィルヘルム・フォン・フンボルトが創立した)

専門は経済思想、社会思想と、経済学者であり思想家である。

著作は以下であり、それぞれ凄い。一作目はドイッチャー記念賞というものを、最年少+日本人初という快挙を成し遂げ、二作目では新書大賞2021を受賞している。

  • 「大洪水の前に」

  • 『ゼロからの『資本論』』

  • 『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』

  • 『ゼロからの『資本論』』

  • 「マルクス解体」(※紹介本)

現代で最もマルクスに詳しい人なんじゃないかと思っている。


余談

この本は講談社から出版されている。
値段はちょっとお高い2700円(税別)。
個人的な意見だが、この本を通読するには50時間くらいは覚悟した方が良い。まあ、50時間を3000円で割ると、もの凄いコストパフォーマンスなことは確かなので、凄くお得だ。

装画はマツダケンさん。(この方の絵も抜群素敵だ)
なのでKindleよりもハードカバーが良い。

アマゾンのリンクを貼っておくので、気になる方は是非。

次回はカール・マルクスを紹介しながら、本著に触れていく。

Mr.羊

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