転職体験記 シリコンバレーのベンチャー企業に その6 当たり前過ぎて意識しなくなっていること
時は昭和のバブル時代真っ只中。
経緯
シリコンバレーにある高速半導体メモリを開発·製造している会社に転職となったのです。
形式的には鉄鋼会社の米国駐在員で、鉄鋼会社の社員としての給与を貰い、その米国ベンチャーの社員としても給与を貰い、日米の年金保険料はダブルで払い、税金は日米の給与と駐在員手当(住居費、自動車購入費、交通費など)も含めた全収入に対して米国の税金を支払うという形でした。 渡米に際しては先ずは米国大使館でのビザの取得。形式的に半導体技術開発のエンジニアという建付けでの渡米でしたので、取得したビザは、H-1B。ビザ取得に際しての大使館での面接、その後の手続きとそれなりに面倒でした。
その2は渡航前の明るく楽しいひと時の話。
その3は、予防接種の重要性と就労ビザのご利益の話でした。
その4からは現地での流れ。
レンタカー、ホテル、外食で仮に生活を立ち上げ、仕事が可能な体制に。そして銀行口座開設、年金、健康保険の手続きをして入社した会社の社員としての基礎的な手続きを完結させました。
その5は仮生活からの脱却です。
今ならスマートフォン手配は必須ですが、当時は携帯電話すら無く会社支給のポケットベルという時代でした。
ということで、先ずは空港で借りたレンタカーは高いので、急いで自動車を購入ということに…。レクサスLS400は狭くて保留。
戯れにシボレーカマロを見に行ってプレミアがついていたのに驚くといった感じ…
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今回もその続き。
アメリカでは車は極めて重要なアイテム
で、実際に皆さんどんな車に乗っているのか興味津々なので…
会社やショッピングモールの駐車場に車を止めていると、
「いい車だね…一寸見せて…」
とか見ず知らずの方からお声がけされる…そんな雰囲気でした。
折角アメリカに駐在するのだからアメリカ人に成り切って楽しもうと思って居ました。まぁ、私自身車好きなのでとても楽しい時間でした。
まだシリコンバレーに慣れていなく、カーナビも無い時代。頼りはサンフランシスコ国際空港のレンタカー会社から貰った簡単なサンフランシスコ国際空港周辺地図のみ。これも今では考えられませんが、それでも何とかしていました。
運命の日となった初めての土日の日曜日、昼下がり。適当にドライブしていたのですが、道に迷ってしまいました。取り敢えず広い道に出たので、その道を走っていたところ道路沿いに
Lincoln Mercury
の看板が…
以下に当時の雰囲気を伝えるコマーシャルをご紹介しますね。
と言っても1985年のものなので私が渡米する数年前ですが…リンカーンタウンカーも1世代古いものが写っています。
車の下見がてら道を訊こうと思いました。
アメリカで車を買う時の雰囲気を実況中継しますね…
店舗に車を入れると直ぐに販売店の方が出て来てくれました。駐車場に誘導され、メキシコ系の訛った英語で話しかけられました。
何とか聞き取れる…
閑話
因みにメキシコ系の方の英語。会社の自席の留守番電話に良くメッセージを残してくれたのですが、特に電話の録音となると聞き取れず閉口していました。当時のチェコスロバキア系移民の子孫で工学博士の技術開発でのパトナーに聞き取れないので助けて欲しいとその録音メッセージを聴いて貰ったところ
「アハハ…こりゃあ酷い。私にも聞き取れないよ。気にしなくて良いよ。この国はそういうもんだから…」
とのコメント。
これもアメリカ生活を理解するのに役立った至言の1つとして今でも覚えています。
自分自身の力不足と感じる時
第三者の方の公平な状況判断を仰ぐ
岡目八目かなぁ
老婆心ながらこんな機会があったらこの話しを思い出して心の整理にお使い頂ければと思います。
閑話休題
そこで、日本から来たばかりで、車を探していて、Lincoln Towncarを見せて欲しいとお願いしました。勿論ということで在庫してある車を数台見せて下さいました。当時はアメリカ車は不人気、特にフルサイズのセダンはシリコンバレーではシーラカンス…絶滅危惧種という扱いでした。25000ドルから35000ドル程度の範囲で主にSignatureという当時の最高級シリーズを見ました。
丁寧に在庫してあるタウンカー全てを説明して下さいました。まぁ不人気のフルサイズのアメリカ車を買いたいと言う奇特なお客さんなのでしっかり対応してくださったのかと思います。中古車も一応と言われましたが、日本に持って帰って一生乗る積りだったので丁重に遠慮しました。
因みに注文して買うと言うスタイルも有りですが納車に時間が掛かるので現実的ではないようでした。
そして、選んだのは…
高級車なので元々標準でFordのPremium Audioが装備されているのですが、その中でもSONYのCDとJBLのスピーカーシステムが着いている物が1台だけ有りそれを選びました。当時はCDはレーザーダイオードがまだまだ信頼性が低く、またトラッキングも車の激しい振動では音飛びをするので余り普及していませんでした。そこは流石にPHILIPSと並ぶCDご本家たるSONYなのでクリアしていました。
色はワインカラーで室内も天井や床のカーペットは同色。まぁレッド・カーペッテッドってヤツなんですかね…。しかもこれも特別仕様で、腰から下はチタンコーティングされていてのツートンカラーという芸の細かさは流石アメリカのフラッグシップモデル。
それがカリフォルニアの青い空に似合う明るくて上品な感じでした。日本ではパールマイカのツートンとか、その前はグレーのツートンを選んでいなので、真っ白とか白系のツートンとかも良いと思って迷ったのですが、Audioが決め手となりました。
買う気満々。試乗をお願いしました。午後3時頃の晴天のカリフォルニアの空の下。エンジンを掛けると、サスペンションが柔らかめの設定のエアサスペンションなので微かに身震いし、運転席の遥か遠くでこれも微かにですが、V8の4600ccSOHCのエンジン音がしていました。
2席に分かれ、格納式のアームレストが付くベンチシート。これなら吾妹とイチャイチャできる(笑)…
コラムシフトなので全席は広々していました。兎も角クレスタと余り広さが変わらなかったレクサスに比べ、申し分ない上品な広さが気に入りました。背もたれも勿論分厚いのですが、私の多めにリクライニングする運転姿勢それでも後席の足元は広々していました。レクサスでは狭くて後席の方に気遣いが必要でしたが…。まぁ世界で最も広々したフルサイズのセダンですからこれで不満なら観光バスを買うしか無い(笑)
(実は今、夢として密かに大型免許を取得して観光バスを買いたいと思っているのです。)
付近を走りましたが、トルクがレクサスよりも3割以上高いことも有りアクセルに軽く力をいれるだけで殆ど無音でスーと加速します。レクサスはサスペンションが固く荒れた路面の凹凸を感じましたが、タウンカーは全く感じない。レクサスはモノコックというボディー構造ですが、タウンカーは古典的なフレームにダンパーを介してボディーが載っているのでそれも効いていました。そういう構造ですから、モノコック構造に慣れた身としては、ハンドルを切ってから僅かなタイムラグを感じてボディーが着いてくるという感覚がたまりませんでした。
スポーティな走りとは無縁ですが、その割り切りが潔い。わたしもスポーティな走りなら大型の2輪車VF750Fの方が楽しいと思っていましたし…
ハッキリ言ってアメリカ専用に作られ、熟成し続けられただけ有って、この国には最適解という理解でした。
SONYとJBLの組み合わせも最高で、試乗時はKKSFというサンフランシスコのスムーズジャズ系のFM局でしたが、これもレクサスよりも音が良かった…
今契約するから、アフォーダブルな提案をして欲しいとお願いしました。車のフロントガラスに貼ってあった価格は34000ドル台。そこからフルフルのメーカーとディーラー保障、ボディーコーティング、アスファルトのアンダーコーティングもしてもらって30000ドルを切る価格の提示が得られました。何度もマネージャーと相談して貰ってその場での成約を条件に交渉したのでした。
買う
ということでそこからがまた大変。なかなか帰れない…
つづく
蛇足
リンカーンタウンカーネタです。
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