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    中学校~高校の数学・物理・化学に関する記事。

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2次元回転の導き方の眺め方

2次元回転問題 2次元座標 $${ \bm{a} = \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix} }$$ を 左回り $${ \theta }$$ だけ回転した座標 $${ \bm{a'} = \begin{pmatrix} a' \\ b' \end{pmatrix} }$$ を計算する際、次の2つの方法で説明されるようだ。 1つ目は$${ \begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix} = a \begin{pm

    • 放物線の英語「parabola」の語源

      日本語「放物線」は読んで字の如くに「物を投げたときに描く曲線」である。対し、その英語「parabola」は古代ギリシア語「παραβάλλω (paraballo)」まで遡り、「横へ」を意味する接頭語「παρα- (para-)」と「投げる」を意味する動詞「βάλλω (ballo)」に分解できる。ところが、一見「水平投射」の意味に見えるものの、語源的には「適用、比較、同等」という別の意味になっていた。「物を投げる」意味とは無関係だった。 そもそもの疑問「parabola」

      • 二階微分のライプニッツ表記の分数的性質

        一階微分は分数と見なせることが良く知られている事実だが、実は分数であることまで良く知られていないのが残念な事実である。さらに、二階微分は分数と見なせないことも事実だが、あまり論じられてないのが寂しい事実である。 結論から言うと、まず二階微分のライプニッツ表記は分数と見なせない。仮に二階微分を分数として扱えたところで嬉しいことが見当たらないから、結局は現状維持される、というオチになる。 1 一階微分が分数である故形式的には、関数$${ y = f(x) }$$に対するライプ

        • 点と直線の距離

          直線 $${ ax + by + c = 0 }$$と参照点$${ O =  (p, q) }$$の距離$${ d }$$は、割と簡単な式で与えられている。 $$     d = \frac{| ap + bq + c |}{\sqrt{a^2 + b^2}} $$ これの導出は様々な手法があるが、以下では参照点を原点とした座標系に変換した後、三平方と三角形の面積で導てみる。 1. 距離の式の導出1.1 参照点を原点に座標変換 まず、点$${ O }$$との距離は、点

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          冪乗の下位周期

          冪乗の下位を切り出すと、周期性があることが判明している。 https://twitter.com/N2Dlz/status/1597594071828398081 周期性を持つことの証明10進法表記で下位を切り出すことは mod 10 や mod 100 と等価である。そして、mod 10 であれば余りは多くても 10 通りしかありえない。そのため、少なくとも11個の累乗を並べたら必ず被る。鳩の巣の原理である。 そこで、最下位の乗算結果は最下位のみで決まるため、同じ最下位

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          二次方程式の解の公式の覚え方

          二次方程式$${ ax^2 + bx + c = 0 }$$の解を与える公式$${ x = \dfrac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac\,}\,}{2a} }$$というのがある。これさえ覚えてしまえば二次方程式を解けるようになるので、この公式を有難く覚えようとする人と、覚えさせようとする人が現れる。しかし人並みの記憶力では厳しいと考えた方が良い。 1. 地味な平方完成 平方完成自体は$${ x^2 + 2kx + k^2 }$$の形を作ってから$${ (x

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          tan' x = 1 + tan² x の眺め方

          1. 正接微分での錯覚正接関数の微分 $${ (\tan x)' = 1 + \tan^2 x }$$という形をしている。自己完結していて、面白い。 これを$${ (x^n)' = nx^{n-1} }$$と照らし合わせ、微分してるのに$${ \tan }$$の次数が1乗から2乗に上がるという錯覚に陥る。もちろん、微分で次数が下がるのは多項式の性質であり、正接関数は無関係。ただ、次数が上がる理由を多項式展開に基づいて眺めることはできそう。 2. 正接のテーラー展開正接関数

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          抵抗のある落下運動

          雨粒の落下運動について、空気抵抗のある自由落下として扱う場合が多い。 その場合の支配方程式は $${ ma = mg - kv }$$となる。 ただし、  ・$${ m }$$は雨粒の質量  ・$${ a }$$は雨粒の加速度  ・$${ g }$$は重力加速度  ・$${ k }$$は空気抵抗定数  ・$${ v }$$は雨粒の速度 1. 地道な計算$${ ma = mg - kv }$$ は変数分離形として解ける。 $${ f = mg - kv }$$と置けば、$$

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          部分和で定義される数列の回答例と注意点

          問題$${a_1 = 2}$$、$${S_n = \displaystyle\sum_{n\in\N_1}^n a_n}$$、$${S_n\,S_{n+1}=9^n}$$、$${a_n =\;?}$$ 回答例調査 $${S_1 = a_1 = 2 }$$、$${S_{n+1} = \dfrac{9^n}{S_n}}$$   $${S_1 = 2 \rule{0ex}{3ex} }$$   $${\rule{0ex}{5ex}S_2 = \dfrac{9}{S_1} = \

          部分和で定義される数列の回答例と注意点

          数式の読み方:常微分

          微分は連続関数の解析で使える強力な道具である。高校では簡単な1変数関数$${ f(x) }$$に対し、$${ f(x) }$$の常微分を$${ f'(x) = \displaystyle\lim_{h\to0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h} }$$と定義して扱う。歴史的に常微分は微分商、微分係数、導関数など複数の呼び方があり、表記法も複数使われている。特にライプニッツの記法$${ \dfrac{df(x)}{dx} }$$は分数形で微分が分数である一面を直観

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          球の体積と表面積の積み上げ方

           中学校数学では球の体積と表面積の公式を学ぶ。困ることに、現行の教科書ではこれらは天下り的に与えれ、実験的手法で説明されても、理論的に導かれることはない。その結果、公式の丸暗記、下手すると語呂合わせによる暗記を助長する有様である。   $${V=\displaystyle\frac{4}{3}\pi r^3}$$   $${S=4\pi r^2}$$ 球の体積や表面積が既存の知識と繋がらないのはカリキュラム構成上の課題である。しかし、理論的に導けないものではない。本記事で

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          鉄道模型のエンジンがかかった瞬間

           鉄道模型が趣味で、電子工作も趣味。この2つを組み合わせると歌うドレミファ電車が作れる。更に怠惰を加えると、歌う電車が出来ず、代わりに震えるディーゼル列車が出来上がる。そんなナゾ技術にエンジンが掛かった瞬間の顛末をここに綴る。 Nゲージ×Arduino=ドレミファインバーター 鉄道模型は本物の鉄道を小さくしたものであり、見るだけでなく、レールに電流を流すことで運転もできるのが醍醐味。日本では住宅事情でNゲージと呼ばれる軌間 9mm の小型が好まれる。小さいと自作が難しく、多

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          多項式除法の筆算の長除法と組立除法

          多項式の除法を筆算する際、主に2つの方法が用いられる。1つ目は整数除算の筆算でお馴染みの長除法、2つ目はそれを簡略化した組立除法である。高校数学の教科書では長除法のみを例示し、組立除法は扱ってない。しかし、長除法よりも組立除法の方が記述量が少なく高速であるため、参考書や勉強サイトで扱われることが多い。 ところが、組立除法の計算の仕方を計算して手順の暗記になる場合が多い。組立除法が長除法の簡略化したものであり、その手順を追えば、自ずと対応関係が分かるようになる。そして、除数が

          多項式除法の筆算の長除法と組立除法

          円がダメなら半円で考えば良いじゃない?

          角度を表す方法には、度数法と弧度法がある。度数から弧度に変換する際に π/180 を掛ける。ところが、それが本質はで無く ×2π/360 が本質、『ラジアンへの変換を「π/180をかける」と覚えるのはやめなさい!』とネタで言う人まで出てきた。ところが、暗記は理解に繋がらないが、物は考えよう。円で考えると π/180 よりも 2π/360 の方が説明し易いが、円がダメなら半円で考えれば π/180 もまた本質と言える。 角度とは 図形的には 1つの半直線が  1点で交わる図形

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          化学漢字 第0章

           中国語では化学元素を全て漢字1字で表している。その多くは日本語には無く、ここ百年やそこらで作られた新造字である。つい最近、2016年にも新元素の発表に合わせて新しい漢字が新造されたばかりだった。これからも新元素が見つかる度に増やしていくだろう。  元素のみならず、同位体や化合物用にも限定的ではあるが、その代わりかなり斜め上な造字が為されている。そこで、元素を表す漢字を元素漢字、他の化学種を表す漢字も合わせて化学漢字と称して、以下に紹介してみる。 §0.1 総目次第0章では

          化学漢字 第0章

          命題とその逆、裏、対偶の見方

           命題論理には、2つの命題変数 p と q の含意「p⇒q」で表され、含意命題と呼ばれる類の命題がある。含意命題に関して、逆、裏、対偶という関係性が高校数学レベルで扱われる。これらは命題と命題の関係であるが、命題の分類と勘違いされやすい。本記事では、様々な見方を整理する。 §1 前提とする定義  まずは依存する定義を羅列する。 真:物事が正しい状態。 偽:物事が正しくない状態。 真偽値:真と偽のみを元とする集合 𝔹。 否定(¬):真偽値の単項演算。真偽が反転する。   ¬

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