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円がダメなら半円で考えば良いじゃない?

角度を表す方法には、度数法と弧度法がある。度数から弧度に変換する際に π/180 を掛ける。ところが、それが本質はで無く ×2π/360 が本質、『ラジアンへの変換を「π/180をかける」と覚えるのはやめなさい!』とネタで言う人まで出てきた。ところが、暗記は理解に繋がらないが、物は考えよう。円で考えると π/180 よりも 2π/360 の方が説明し易いが、円がダメなら半円で考えれば π/180 もまた本質と言える。

角度とは

図形的には 1つの半直線が  1点で交わる図形を「角(カク)」と呼び、その開き具合を「角度(カクド)」と言う。具体例として分かり易いのが扇子。円弧と 2本の線分から扇型を作るが、その 2本の線分が弧の中心で交わり角を作る。そして、折り畳んだ扇子を開く度合いが角度になる。

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定量的には、閉じたときの開き具合を 0 とし、後は適当な角を基準に決め、その大きさに比例するように他の角の角度を決めれば良い。平たく言うと、同じ開き具合の扇子を2枚繋げて作る角度を2倍の角度と決めた。すると、直交する2本の直線が同じ開き具合の角度が4つ作り、それぞれを直角、その2つ分を平角、4つ分を周角と言うが、開き具合は 直角:平角:周角 = 1:2:4 となる。1周する周角を基準 1 turn と決めると、平角は半周で 1/2 turn、直角は更に半分で 1/4 turn になる。

度数法と弧度法

周角基準では周角以外の角度は全て分数になる。実用では扱い易い整数で表したいので、度数法が考え出された。度数法では周角を360等分した角を基準とする。360にしたのは、角度を多用する天文学では 1年がほぼ 360日で夜空の 1日の回転角になるのと、約数が多くて大変便利なためである。実際に1から10 までの数で割り切れないのは 7 しかない。

比例してれば基準は何でも良いので、数学では扇形の弧長を使い、弧度 = 弧長 ÷ 半径 で弧度法を定義した。数学では角度を整数で表すよりは、公式が簡単になる方が嬉しい。例えば、
 ・定義より弧長の計算式が簡単になる
  弧度法: 弧長 = 半径 × 弧度
  度数法: 弧長 = 半径 × 角度 × (π/180)
 ・三角関数の微分が簡単になる
  弧度法: (cos θ)' = sin θ 、(sin θ)' = -cos θ
  度数法: (cos θ)' = (π/180) sin θ 、(sin θ)' = -(π/180) cos θ
 ・三角関数が指数関数との繋がりが簡単になる
  弧度法: exp(iθ) = cos θ + i sin θ
  度数法: exp(iθ) = cos(θ×π/180) + i sin(θ×π/180)

もう式を見ても分かるように、弧度法は公式に表れる大量の π/180 を消すように定義している。そのため、これが度数から弧度への変換係数にもなる。
  弧度 = 度数 × (π/180)

変換係数の意味

度数と弧度は単位が異なる角度の表現なため、変換係数を掛けたり割ったりで相互変換ができる。90° と π/2 rad が同じ角度の異なる表現であり、度数法の単位 ° から弧度法の単位 rad への変換係数が π/180 で、弧度 π/2 = 90×(π/180)、度数 90 = (π/2) ÷ (π/180) になっている。これは、2m と 200cm が同じ長さの異なる表現で、メートル数の単位 m からセンチ数の単位 cm への変換係数が 100 で、センチ数 200 = 2×100、メートル数 2 = 200 ÷ 100 と計算されるのと同じ関係に当たる。

では、m から cm への変換係数が 100 であるのは cm の定義が 1m の 1/100 の帳尻合わせであるのに対し、° から rad への変換係数がなぜ π/180 という中途半端な数か。1つの答えは、公式に表れる π/180 を消すべく、1° の 180/π を 1 rad と定義したため、その帳尻合わせとなる。しかし、これでは公式に π/180 が大量に表れる理由が疑問として残る。

基本に戻って周角で考えると、角度が周角の扇は円であり、弧長が円周の長さで 半径 × (2π) となる。係数の 2π がそのまま弧度法の角度 2π rad となる。対し、度数法ではこれを 360° と決めている。このため、周数 1 turn を経由して考えれば、
 ・度数から周数への変換は度数法の定義で 周数 = 度数÷360
 ・周数から弧度への変換は弧度法の定義で 弧度 = 周数×(2π)
度数から弧度への変換は合わせて 弧度 = 度数÷360×(2π) = 度数×(π/180) となる。

そのため、係数の π/180 を覚えられないなら、周数を経由して ÷ 360 × (2π)と考えるのは良い理解と言える。これが冒頭で引用した記事の説明通りである。しかし、π/180 のまま理解に繋げられないものか。この π と 180 で本質的な思考ができないものか。──できる。理屈と膏薬はどこへでもつく。

π と 180 の解釈

円周率 π は円周と直径の比である。元々直径で考えて変換係数を単純に 1文字 π で表したのが、扇形で考える都合で半径で考えるようになり、直径が半径の 2 倍ということで 2π という係数が出てくる。
 ・直径で考える円周の弧長: 円周 = 直径 × π
 ・半径で考える円周の弧長: 円周 = 半径 × (2π)

すると、直径の代わりに半分の半径で考えるのなら、円周も半分の半円周で考えれば、再び辻褄があって丸く収まる。
 ・半径で考える半円周の弧長: 半円周 = 半径 × π

その結果、半円周を基準で考えると、
 ・度数から周数への変換は度数法の定義で 半周数 = 度数÷180
 ・周数から弧度への変換は弧度法の定義で 弧度 = 半周数×π
度数から弧度への変換は合わせて 弧度 = 度数÷180×π = 度数×(π/180) となる。

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まとめ

円がダメなら半円で考えば良い。
 ・ 弧度 = 度数 × (π/180)
 ・ 180 は半円を扇型と見なし、扇型の角を度数法で表した度数
 ・ π は半円の弧長、弧度法で表した角の弧度

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