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#14 教科書に出てくる英語の自己紹介は世界で通用するのか。英語xプロジェクト型探究授業の実践 ③
探究の問い:コミュニケーションは文化的要因によって影響されるため、効果的なコミュニケーションには相手を考慮する必要はあるのか?
バタバタしていて久々の投稿になってしまいましたが、今回は私が国際バカロレア(IB) コースで行った英語の授業を忘れないうちに少しだけ記録したいと思います。この授業は、私が勤務する前から、あらかじめバカロレアコースのプロジェクト型探究授業の単元としてすでに作成されていたもので、例年英語初心者の中学1年生の1学期に行っていたものでした。私も自分が中学1年生の担当になった時にこの単元を行い、初めて手ごたえを感じました。
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まずはテーマについて。
おそらく、中学1年生の英語の授業は「自己紹介」から始まると思います。
Hi, I'm ○○
I'm from Japan.
I like sushi.
のような定型文を教え、リピートさせ、練習させる、というのが一般的な流れかなと思います。そこまで自己紹介に時間をかけることもないです。
しかし、このような定型文は、実際に海外の人や海外に行った時に使えるのか?実際の場面を想定した場合は、通用するか考えたことがありませんでした。
例えばですが、国によって自己紹介の仕方や含む内容、マナーなどが違うと思います。なので、自己紹介に限らず、他国の人とコミュニケーションをとる際は、文化の違いなどで、相手に失礼になる言動などに気を付ける必要があるかもしれません。
国際バカロレアの教育の中に出てくる”Key concept"(重要概念)に"Audience" (観客)と "Culture"(文化)があります。
自己紹介に出てくる英語の単語や文をただ教えるのではなく、文化や状況に応じた自己紹介の内容や仕方を生徒に探究させ、より実践的な英語を身に着けることが今回の授業の目的でした。
授業の大まかな概要
こちらの記事を書いた際にも書きましたが、国際バカロレアの授業では、単元を通して「英語を学ぶ」だけではなく、「英語で学ぶ」ことが基本になります。
また、冒頭にもある「探究の問い」を通して、自身の考えを深めるために英語を読む、聞く、話す、書くというサイクルを行います。
今回は、コミュニケーションの一種でもある「自己紹介」を効果的に行うためににはどうしたらよいのか、というテーマだったので、生徒と一緒に以下の内容をワークシートなどを用いて議論しました。生徒には互いに意見交換を頻繁に行ってもらい考えを深めてもらいました。
《 1 》自己紹介とは何か議論する
まず、当たり前のように自己紹介を日本語でもしていますが、その概念から一緒に考えます。
・自己紹介とはなにか (What)
・自己紹介はいつするのか (When)
・どんな方法があるのか (How)
・なぜするのか (Why)
・どんな人がするのか (Who)
《 2 》文化の違いやマナーを考慮することが必要か議論する
例えば、好きな食べ物を自己紹介に含みたい時。
寿司の場合は、I like sushi!と言うと思います。
ただ、"sushi“は有名な日本食なので通じるかもしれませんが、例えば"Dorayaki"と言った場合、海外の人はそれが何かわからないかもしれません。その時に補足で説明をしなくてもよいのか?ということを生徒に問いかけます。
また、日本では宗教に配慮する機会はあまりないかもしれませんが、例えば、ヒンズー教の人に「僕は牛肉が大好きです」と言っていいのだろうか?
また、あえて相手の文化に合わせる必要もないという意見も出ることもありました。自分は日本人なのだから、日本のやり方で個性を出した方がよいと。それはそれで、面白い意見が出たなと思い、メリットやデメリットなどを話し合うこともありました。
《 3 》自己紹介の仕方を考える
動画などを生徒と見て、自己紹介の仕方などにも国の特徴がでるということを考えます。
日本ではあまりジェスチャーなどは使わず、ぴしっと立つか手を前でそろえたりするかもしれませんが、欧米ではそのような発表の仕方はせず、大胆に発表する方がより伝わるかもしれません。
また、文法なども教えてしまいます。自分のことについて、家族のことについてなどのどんな英語を使えばいいのかなど、どのように順序だてたらわかりやすいのかなど練習やペアワークなどを通して基本を教えました。
そんなこんなで、生徒たちは色々な視点から物事やその国の文化を見るようにこちらは様々な教材を使いながらサポートし、自分たちが実際に自己紹介する際にはどんなことに気を付ければいいのか話し合うことができました。
プロジェクト:好きなキャラクターになりきって海外の人向けに自己紹介
生徒が一番楽しそうに取り組んでいたのがこのプロジェクトでした。
もちろん、英語初心者の生徒たちは苦労もしていましたが(汗)
今回のテーマで議論した「自己紹介」や自己紹介で使用する英語について、どのくらい理解が深まったのかを表現する場として、最後にプロジェクトがあります。
それは、「好きなキャラクターになり、自己紹介をしよう!」というプロジェクトでした。自分のことを話すのは少しつまらないということで、一工夫して、好きなキャラクターになりきってもらいました。
実際の発表会では
Hi, I'm Winne the Pooh!
などと生徒が好きなキャラクターになりきったことで、少しクスっと笑えるような面白いものになりました。(中には私が全然知らない今どきのアニメのキャラなどもいたので、色々知ることができて面白かったです)
そして、質疑応答では、その国を対象としてどんなことを考慮したのか答えてもらい、きちんと今回のテーマについて考えることができたのか意見を述べてもらう機会がありました。
とてもユニークな発表が多かったのと、英語を全く話せないところから始めたのに、教えてない文法や単語もいつの間にか使いこなし、堂々と話している生徒が多く、感心しました。
振り返り・あとがき
今回のバカロレアの単元では、「自己紹介」というテーマを通して、うまく伝えられたかはわかりませんが、以下のようなものも生徒に考えてほしかったように思います。
・相手の視点にたって物事を考える、文化の違いを尊重するとはどういうことなのか
・コミュニケーション能力とはいったい何なのか
個人的には、英語力と同時に大事なのは、言語力、つまりは論理的思考力、判断力、想像力や表現力だと思っています。英語の教科に限らす重要なスキルだと思います。
英語教育に力を入れる、というのはただ英語の知識を教えるだけではなく、考える力や伝える力も同時に育てることがとても大事なのではないかと最近では感じています。
そう思うと、国際バカロレアの教育というのは、そのようなスキルやコンセプトに基づいて作られている単元が多く、生きる力の育成に通じるものがあるような気がします。
ただ、やはり文法や語彙など、日本の受験で重要視されているような「知識」は、このような授業で十分にカバーするためには時間的に厳しい場合もあり、大人数相手にこのような授業を行うのも時間や資源が足りません。なので、どのようにバランスをとっていくのかを考える必要があるなと感じました。
また、この単元は自分なりに日々の授業の工夫はしましたが、単元のアイディアそのものを一から考えたわけではありません。私自身ももっと勉強しなくてはなと強く思いました。
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