
機能不全家族はマイナーらしい
某テストの前日、また突拍子もなく自殺願望に苛まれた。死にたくて仕方なくて、包丁をおなかに押し付けて何度も力を込めようとした。でもその後一押しの勇気が出なくて、結局包丁を片手にいのちの電話に掛けまくった。死なないでって言ってほしかった訳ではなく、ただ誰かに自分が死ぬほど苦しんでいることを知ってほしかった。知ってもらったところでどうなるの?とは思うけれど、でもこの体の奥底から湧き上がる希死念慮を手懐ける術なんか無くて。
いのちの電話はaiが話している訳ではなくて、生身の人間の方が対応してくださるから24時間対応してくれるわけではない。多くはない24時間対応の電話番号に掛けても、話し中の所や繋がった!と思った瞬間「ただいま混み合っております」と無機質な音声が流れる。掛け始めて1時間くらい経って、なぜか私は「そうだ、父親に話そう」と思い立った。今思うと多分何処かおかしかったのだと思う。父親の寝室に行って声をかけた瞬間、「早く寝なさい」……。当たり前すぎる。
今は少し時間が経って客観視出来るから当たり前だなーと思えるけど、あの時はこんなにも苦しんでいるから「どうしたの?」くらい言ってほしかった、とか思ってしまった。
そのまま涙が止まらなくて、再びいのちの電話にコールしまくった。誰も出てくれない。5時頃になって、止まらない呼び出し音を聞きながら(また繋がらないかも)とか思っていたら、急に「もしもし?」と電話の向こう側が来た。何だかすごくホッとして包丁を置いた。
結局一睡も出来ないままテストに突っ込み、何とか頑張っ……?た。「頑張」という言葉が大嫌いなのでその活用語尾が何であっても使いたくない。
帰り道、緊張が解けた安堵やら何やらでとてつもなく眠たかった。家に帰ってきて、ご飯を食べようにも睡眠欲が酷くて何口が食べたあとリビングで横になった。眠たいのだけど、寝付けない微妙な意識の中にいた。
次にはっきり覚醒したのは間違いなく親の怒鳴り声がきっかけ。
親が怒鳴り合っていた。正確に言うと、親と姉の三つ巴の怒鳴り合いが始まっていた。姉の「大学辞めたい、死にたい」という大声の一人言に嫌気が差した父親が嫌味を言い、それに姉が反発して怒鳴り合いが始まり、姉全肯定ウーマン母親が「◯◯ちゃんが可哀想でしょう!離婚する!」と乱入、結局父と母が怒鳴り合って姉が号泣する地獄絵図。あの、私一応大学受験真っ只中なんですけど。
高校時代の同級生で、京大に通っている友人から「どうだった?」と連絡があった。普段は友人にこんな状況を悟られたくなかったのだけど、もう全てがどうでもよくて「親が怒鳴り合い始めて離婚話始めた〜」と言ってしまった。友人は何故か凄く驚いて電話してきてくれた。ぽつりぽつりと状況を伝えると、「凄い家庭だね、」と言われた。離婚話が絶えない家庭で育ったし従兄弟家庭もそんな感じだったから、正直何もおかしい事だと思っていなかった。だから「そう?よくあることじゃない?」と返したら絶句されて、「普通ではない」と返された。どうやら私はマイナーらしい。離婚話が数百回目なら、どうせこの話も有耶無耶になって実行する気は無いことくらい学習しているはず。なのに、毎回怖くて固まってしまう。やっぱり幼少期から母親のヒステリックな泣き声怒鳴り声を聞いていたからかな、険悪な雰囲気はともかく女性の大声がすごく苦手で怖い。
結局また眠れず、二日目は時間ギリギリに会場に行った。眉間が死ぬほど痛くて涙が止まらないまま受験した。
自分の人生がうまくいっていないのを他人のせいにしたくはないけれど、どうしてもこれが全て私の責任かと言われると納得がいかない。私の責任なんだろうけどね、でも仕方ない。
2日目の朝、時間ギリギリになりながらも朝食をつついていた。母親がいたから、「離婚するの?」と聞いてみた。「いつかね、」と返された。いつか、のことであそこまで大規模な乱闘を起こせるのか。「人生こんなこともあるわよ」とか言われた。いや、それ起こされた側の私が言うならともかく起こした側が言うの?その権利は私にしか無いんじゃない?父親はともかく、私の母親は本当に言葉に責任を持たない。今後一度でも離婚すると言ったら5万円の罰金をしたいレベルに離婚する!!と言う。そんなに軽々しく使う言葉ではないと思う。現に私は幼稚園生の頃から「離婚」「失敗」「男の子じゃなかった」この3言が死ぬほど嫌いだ。父親の傷ついた顔を見るのも辛い。今私に正常な判断力があると仮定するのならば、おかしいのは確実に母親だ。父親ではない。
私がもっと早く他人の期待のために頑張る人生を辞めていたら、と思うけれどでも私には価値がないから。誰かの期待に応えることでしか自分の価値を確認できないから。 私に価値なんて無いから仕方ない。
相変わらず母親の妹贔屓は半端ない。妹のために神社に2カ所行ってお札を買ってきたそうだ。ついでのように私の分も置いてあったけれど、そう言えば私単体の受験の時は一度もそんな事なかったなと思った。期待するのを辞めたい。先程、姉が食卓にいたから「リスカ辞められないんだよね」と言ってみたら「どこにしてるの?」と聞かれた。私はリスカした後も生きていかなくてはいけないことを考慮して、二の腕や太もも、足首を刻んでいた。「足とか、二の腕とか」と答えると姉は「それリスカじゃないじゃん」と返してきた。母親が吹き出した。ここ吹き出すタイミングだったのかな。
わかっている。どうせリスカしようが腹部に包丁を突き刺そうが、odしようが、例え死ぬことができようが絶対後悔するのだ。でも、それを分かっていても尚死にたい。
死にたい気持ちに向き合わずに、毎回必死に蓋をして見て見ぬふりを続けてきたから、やはり何かがきっかけで噴出してしまう。

「つまずいたのは誰かのせいかもしれないけど立ち上がらないのは誰のせいでもないわ」
峰不二子ちゃんの言葉。
でも立ち上がれないくらい傷ついたら?