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死にたいという告白に想う

豆塚エリさんの『しにたい気持ちが消えるまで』という本を読んだ。取りつくろうこともなく、全てが正直でリアルでとても静かだった。細やかな言葉、感情や情景の描写に頭の中で映像がどんどん展開した。誰が読んでも近い映像イメージになるほど詳細だったと思う。

死にたい気持ちが湧き上がったときに考えておいた方がいいことは、死ぬって難題だということ。
死ぬと決めても、そう簡単に死ぬことは叶わない。

死ぬことが難しい理由は色々あるが、最終的に難しいポイントは一命が絶えるかどうか。
死ぬということは、魂が肉体から離れる現象でここがスムーズにいかない。
心と脳VS肉体 という現象が起こる。

それは、神様が生かした的な発想ではなく、私はシンプルに肉体から魂が抜けない現象だと思っている。
抜けきれない何かしらの意思が自分のあずかり知らないところで存在している。たとえ死にたいと思ったとしても、その望みが叶うかどうかを自分では決めることができない。

人間は「生きたい」と思うのが当たり前にはできていないと思う。生きる理由になることを見つけたり、死なない選択をする出会いを毎日繰り返すことが生きている状態になっている。だから死を願う気持ちは存在してもいい。
ただ、死にたい気持ちが湧き上がったときに考えておいた方がいいことは、死ぬって難題だということ。その望みが叶うかどうかを自分では決めることができない。自分自身の肉体を死に追いやって手放そうとしても、魂が肉体を手放そうとしない。

この本に出てくる「死にたい」と思うきっかけの話を読んでいると、「信頼できる人間が1人もいない絶望」という印象だった。
そもそも毎日生きていくための生活的作業が1つもスムーズにいかない日々に疲れて、それを追い込む人間に疲れて逃げ場がなくて絶望する。

人間はすぐに人を「おもい通りにしよう」としてくる。最初が親で、そこからこのインパクトが雪だるま式になっていく。とにかく「おもい通りしよう」とする人間たちに抵抗するのも面倒になり、自分の意思を殺し、仰せの通りにし続けて、自分が誰なのかわからなくなって、そんな事なら自分は存在していても意味がないと思って、自分自身の肉体を死に追いやって手放そうとする。でも、魂は肉体を手放そうとしない。

人をおもい通りにしないこと、おもい通りにいかないことにイライラしないこと。おもい通りになんて1個だっていかないと思っておくことだ。死ぬことだっておもい通りにいかない。だから死ぬことはあきらめよう。わざわざ自分から死ななくても良きタイミングで終わらせられるのだから。

自ら命を断つことを選択し、そのままこの世を去ってしまった人の話を聞くことはできない。
こんなに死に近づいた感覚を鮮明に知ることができる本はすごいと思う。
だからもし、その決断が近づいた時にはどうせだったらこの本を手に取って欲しいと思います。


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