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才能は自力で作れる! ~書評 ぼくたちは習慣で、できている。~ その3

 皆さんは、自分の行動を意識的に決定し、こなしている実感はありますか?自信をもって「ある!」と答えた方に質問です。人の行動の何割かは無意識に行われているそうなのです。どのくらいの割合でしょう?

その割合なんと四割強(45%)だそうです。

 私たちは自分たちの行動の半分近くを無意識のうちにこなしているのです。その無意識の行動こそ、何を隠そう習慣なのです。無意識の行動を習慣の力でより良いもの(勉強、筋トレ、社会貢献活動)に置き換えることで、自分の人生をより実りのあるものにしていくことができるかもしれません。

 この記事では、佐々木 典士氏の大ヒット本「ぼくたちは習慣で、できている」に沿って、習慣の持つ力を解説していきます。今回はその第三回目です。本書の第2章、「習慣とは何か?」を解説していきます。

第2章 習慣とは何か?

習慣=限りなく無意識に近い状況

 人の普段の行動の45%は無意識のうちに習慣で行われているそうなのです。例えば朝のルーチンはほとんど儀式のように決まっていますよね。朝起きて、歯磨き、髭剃り、寝グセを直してから着替えて出かける。この行動に対して、歯ブラシをどう持って、歯磨き粉のキャップをどう外して、どれだけの分量をとって・・・などといちいち考えながら意識して行動する人は少ないはずです。つまり習慣化された行動は、努力ではなく、無意識の行動なのです。
 大人にとってのルーチンは無意識の行動です。一方で、子供に対してはどうでしょうか?これらの行動は努力を必要とする意識的な行動だといいます。歯磨きも、顔を洗うことも、出かけるときに靴紐を結ぶことも、不慣れな行動なので、一つ一つ思案しながら行わなければならないのです。
 要は、日常の行動に慣れているかどうかで、その行動が無意識にできるか否かが決まるのです。そして、ひとたび慣れてしまえば、やるべき行動を努力なしに実行できるようになるのです。

情報処理の量は 無意識的>意識的

 脳は毎秒4億ビットもの膨大な情報を処理しているのだそうです。この中で意識的に処理される情報はわずかに2000ビットしかありません。人は無意識のうちに膨大な情報を集め、自動的に処理しているといえます。そのうちのわずかの量が、意識的に処理されてるということです。その意識的な情報処理は、いつなされているのでしょうか?

普段と異なる状況、特殊な状況が起きたときにはじめて意識が呼び出され、意識的に情報の処理がなされるのだそうです。

 例えば、人が歩くときは、足の筋肉の動かし方、地面からのフィードバック、自分の姿勢に関して全く意識していません。実際には歩くだけでも、膨大な情報を処理し、転ばないように姿勢の維持をしたり、ぶつからないように進行方向を決めているのです。
 意識が呼び出されるときは、イレギュラーなことが起こった時。例えば柔らかいものを踏んだ時には「何を踏んだんだ?」と意識が呼び出されるそうです。
 そのほかにも、脳で意識せずに体の組織が動くことも知られています。例えば腸は脳から独立して蠕動運動するし、かゆいところをかいたり、疲れた時に伸びをするのも別段脳で意識をして行動しているわけではないのです。脳で意識してコントロールできる行動は意外と少ないといえるかもしれませんね。
 しかし、するべきだった行動をとれなかった場合、人は責任を意識に押し付ける傾向があるそうです。「ダイエットできなかったのは意志が弱かったせいだ」と。意識を過大評価しすぎているせいで、行動の結果をすべて意志や意識のせいにするのだそうです。
 実際には、人は行動のほとんどを無意識のうちにこなしています。自分の意志が自分自身の支配者ではないということを理解する必要があるのです。

習慣を身に付ければ、無意識のうちに適切な行動をとれるようになります。そしてみだりに自分の意志の弱さを悔やむ必要もなくなるのです。

ラットの迷路実験

 ラットの脳に電極を埋め、脳の活動をモニターしながら迷路のゴールにおいてある餌を探させる実験がMITで行われたそうです。実験の目的は、ラットの学習と脳の活動の相関を見ることでした。この実験によると、ラットの一回目の反応は、迷路の壁を引っかいたり、辺りを嗅ぎまわったりしたそうです。そして、その際の脳の活動は非常に活発でした。
 しかしこれを何度も繰り返しているとラットはすんなりとゴールへ向かい、そして脳の活動も活性化しなくなったそうです。この結果から言えることは、慣れてくると脳で意識せずに目的の行動をとることができるようになるということです。ラットは最終的に考えずに餌までたどり着けるようになったのです。これこそが習慣が身に付いた状態なのだそうです

習慣は次の3つの要素で成り立つ

 習慣を手に入れるには、以下の3ステップを繰り返すことが必要なのだそうです。この3ステップを心掛け、理想とする習慣を手に入れることができるのです。

【1. トリガー】
迷路の実験では餌がおかれた合図が出たとき、この合図をきっかけにして脳が活性化したそうです。トリガーはこれに続くルーチンを駆動させるきっかけとなります。

【2. ルーチン】
トリガーによって引き起こされる決まった行動。何度も行動したおかげで記憶し、考えずにできるようになった行動のこと。

【3. 報酬】
この行動を脳に保存したほうがいいかどうか判断する材料のこと(うれしい出来事があれば引き続きこの行動を無意識にとれるように維持する)

習慣は強化される

 上の3ステップ目の報酬は、ドーパミンを介した”報酬系”という脳の領域によって記憶されているそうです。この”報酬系”は古い脳の領域で、機能や構造はラットと人間で大きな違いがないそうです。さらに、”報酬系”は、何度も同様の刺激を受けることで強化されるそうです。神経細胞の出っ張りの”スパイン”という部分は、何度も刺激を受けることで大きく成長するのだそうです。

 習慣は一度できたら、その行動をどんどん続けていく仕組みの一つなのです。よって「セミナー」や「講演を聞く」などの単回の行動よりも強い人生を変えるきっかけとなるのです。

トリガーの持つ偉大な力。超天才は机を見ることで生まれた!?

 本書では、山口真由さんの例を挙げてトリガーの力を説明しています。

 経歴を見るだけで、同じ人類なのか?と思うほどの天才ですが、この方も勉強を習慣にすることから天才への一歩を踏み出したのだそうです。習慣を身に付けるための第一歩、”トリガー”を作るために彼女が行ったことは、起床後、カーテンを開けたら机の前で本を読みながら過ごすことだったそうです。そうするだけで勉強机に座ることに抵抗がなくなったのだとか。”トリガーを作ることが、習慣作りの第一歩である””天才も同様にトリガーを作ることから始めている”こんな事実がわかると、習慣を作ってみようという気持ちが湧いてきますね。ではトリガーは、”机”などの場所に限定されるのでしょうか?著者は、次の5つに分類されると言っています。

トリガーを作りましょう

 以下のように、様々な刺激をきっかけに、習慣としている行動が引き起こされるそうです。習慣を身に付けるためには、この刺激とセットで行動すると身に付きやすいそうです。飲酒習慣を例に挙げるとカッコ内のようになります。

1. 場所「居酒屋、コンビニのお酒コーナーに行く」
2. 時間「帰宅中、仕事終わりの時間帯」
3. 心理状態「疲れた、イライラしている、嬉しいことがあった」
4. 自分以外の人物「友達が飲んでる、お客さんが来た」
5. 直前の行動「ジムで汗を流した、仕事を頑張った」

 私自身の経験でも、確かにトリガーが駆動していると思う瞬間があります。私はボクシングジムに週6回(最大で)通っておりますが、バンテージという手に巻く包帯のようなものをロール状に巻いたときや、使っているウェアをたたんで鞄に入れるときに、自動的にジムに行きたくなります。これは”5. 直前の行動”をトリガーとした習慣があるのだと思います。習慣の発動条件”トリガー”の偉大な力を実感します。
 そして逆に、辞めたい習慣の場合は、”トリガー”を特定し、それが駆動しないようにすることが大切なのだそうです。

ルーチンを作りましょう

 習慣を作る第2ステップは、ルーチンを作ることです。ルーチンとは、トリガーから始まるいつも通りの行動のことです。朝の準備や普段行っている行動もルーチンです。
 ルーチンを作っておく利点としては、意志で何かを始めようとしなくていいという点にあるそうです。「さてと、始めるか」と気持ちを切り替える必要なしに、ルーチンをとりあえず始めてしまえば、気持ちのほうがついてくるそうです。

ルーチンの報酬を手に入れよう

 ”報酬”と言っても、物質的、金銭的にメリットがある必要性はありません。自発的に行動を起こし、その際に得られる達成感や喜びを”報酬”と呼ぶそうです。
 興味深いのは、ただ楽しい、気持ちいいというだけではダメで、適度なストレスを伴う必要がある点です。つまり、辛いながらも達成したことに対して、人は達成感や陶酔感を得ることができるのだそうです。確かに、少し難易度の高い仕事、またはゲームでも難易度が適度に高いもののほうがクリアしたときに達成感がありますよね。その時の気分は、まさにこの理屈と一致しています。

まずは運動を習慣にすべし

 「習慣の力、確かにすごい」「その力を実感してみたい」と思った方も多いと思います。でも、具体的に、習慣化させたい行動や理想の自分像がない人も少なからずいるのではないでしょうか?そんな方には、まず運動の習慣を身に付けることがおススメなんだそうです。

 運動はただ体調を整える、そして満足感を人に与えるだけではありません。運動中にいいアイデアを思いつくことが、作家の証言、そして本書の著者の意見からも明らかなようです。ジョン・レイティ教授の著書「脳を鍛えるには運動しかない」では有酸素運動によって発生するBDNFという脳由来神経栄養因子が紹介されています。この因子を脳に振りかけると、脳の神経細胞の成長が促進され、神経回路の枝分かれが増えるそうです。
 なんと、1万9000人の学生に対して勉強前に有酸素運動をとらせたところ、成績が伸びたそうです。勉強前の運動が、学習効率を高めることにつながったそうです。そしてもちろん、運動をすることで脳は有り余るほどの報酬を得ているのです。運動する人はストイックなのではなく、実は報酬を得るという欲求に非常に従順な、欲深い人と言い換えてもいいのかもしれませんね。

 私自身、ボクシングという有酸素運動を習慣にしたことで、頭は冴え、読書や勉強が非常にスムーズに進むようになりました。ボクシングを始めるまでにも結構勉強をしていました。ですが、「勉強したことが身に付かない」、「勉強の効率が悪い」、「勉強の途中で他のことに集中力が奪われる」といった典型的な勉強に集中できない人の悩みがありました。運動を始めて以降は、脳が鍛えられたのか、勉強に割ける時間が減ったことによる締め切り効果も手伝ってか、勉強の時、そしてブログやノートの執筆の際は非常に集中できている実感があります。体感では「あぁ、もうこんな時間か」と、時間の進みを忘れるくらいに作業に没頭することが増えました。
 ということで、何かの習慣を身に付ける小手調べに、まずは運動の習慣を身に付けてはいかがでしょうか?

第2章まとめ

・人の行動の45%は習慣である
・繰り返すうちに無意識に行動ができるようになる
・何か問題や特別なことがあった場合にのみだけ、意識で何かを判断するようになる
・習慣とは、報酬を書き換えること。何度も繰り返して行動をし、そこに達成感を感じることでいつの間にかそれをやらずにいられないようにする所作である。

次回もお楽しみに

 次回から、習慣を身に付ける具体的な方法を、書籍「ぼくたちは習慣で、できている」に沿って書いていきたいと思います。ここまでで、習慣を身に付けることが、才能あふれる人間になる唯一の手段だということを述べてまいりました。いよいよ、その習慣を身に付ける方法論を解説していきますので、ご興味あれば次回も読んでみてください。何より、本書を手に取ってみてくださいね。

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