使えるノスタルジー
秋めいてきた季節の影響か、ノスタルジーの商業利用も多くなってきた印象がありますね。
△前回の記事でも引用したマクドナルドのCM
『わかってるよ、心配してくれていることくらい』
『わかってるよ、もう子どもじゃないってことぐらい』
親子の絶妙な距離感、気恥ずかしさと
お互いを思いやる家族ならではの絆や暖かさに、じんわり。ほっこり。
△こちらも最近、目に留まるアサヒビールのCM
『忙しくなるほど、ココロがぬくもりを求めているんです』
慌ただしく出張から帰ってきた松下洸平さんが、昔なつかしい居酒屋でワイワイ。
最後のシーンは、部屋のリラックス空間。
楽しかった思い出を思い返しながらの追いビール
『日本のみなさん、おつかれなまです。』
…ほぐれる~!ゆるむ~!
この記事では、商業利用されるノスタルジーから「使えるノスタルジー」について思考していきます。
▶この記事を書いた人
01| ノスタルジーの分類
「ノスタルジー」は、フランス語由来の単語
心理学では、英語由来の「ノスタルジア」と表記されています。
ただ、世間一般では「ノスタルジー」の方が浸透しているように感じます。(個人的解釈)
よって、この記事では「ノスタルジー」に統一してお届けします。
ノスタルジーには、「個人的ノスタルジー」と「社会的ノスタルジー」があります。
前回の記事では、「個人的ノスタルジー」の効果を考えました。
冒頭にあげた2つのCMは、普遍的な個人的ノスタルジーを活用した手法ですね。
社会的ノスタルジーを活用したCMは、例えばこれ。
だいぶ昔のCMで恐縮ですが、「社会的ノスタルジー」を抱かせる見事な仕上がりです。
現代の学校とは異なる、古い学び舎をめぐる映像とともに、美しい言葉。
『どうか、タイムマシーンが発明されませんように。
目を閉じるだけで十分です。』
「社会的ノスタルジー」と「個人的ノスタルジー」は、個人的経験の有無の違いがありました。
この定義では、両者の違いはまさしく”個人差”となります。
祖父母の世代であれば、「二階堂のCM」も個人的ノスタルジーとなるのでしょう。
一方で、「ノスタルジアの社会学」の著書であるF.デーヴィスは、両者の違いを「時代の連続性」と定義しています。
現代的暮らしの連続性として捉えられるものは「個人的ノスタルジー」
現代の感受性では理解できないほど不連続な時代のことは「社会的ノスタルジー」
ただ、ノスタルジーの効果である『あたたかさ』『幸福感』『安心感』は、両者の差は無いとする実験結果もあるようです。
✓ 「個人的ノスタルジー」は、他者との交流や他者への思いから生まれる”社会的感情”であたたかさを感じる
✓ 「社会的ノスタルジー」は、古い建物から木のぬくもりを感じるなどの”美的質”であたたかさを感じる
02| 商業利用されるノスタルジー
なぜ、この「なつかしさ」が商業利用されるのでしょう。
消費者行動研究では、「この商品なんだかなつかしい」→「この商品に興味がある」→「この商品を買いたい」と購買欲につながるとのこと。
企業側としては、「ノスタルジー」を活用して消費者の感情へ接触していると思われます。
『あたたかさ』『幸福感』『安心感』などのポジティブ感情と、商品やブランドを結びつける意図があるのでしょう。
消費者側からしても、その商品やCMを通して、ノスタルジーの恩恵であるポジティブな感情を体験できるので、これは両者にとって良い形では…!
アメリカのCM分析の結果では、「食品・飲料」に対して「ノスタルジー」が多く用いられていることが判明したようです。
そういえば、この記事でとりあげた3つのCMもすべて該当しますね。
対して、「化粧品や洗剤」などには用いられないとのこと。
より効果が高いものを求める消費者心理では最新の製品が望まれるため、ノスタルジーとマッチしないのでしょうね。
■あとがき
今回の記事は、アサヒ生ビール”マルエフ”をいただきながら執筆しました。
えぇ、まんまとノスタルジーCMに釣られたわけです。
最後に、商業利用以外の視点に触れたいと思います。
今回の記事でも多用した「なつかしさの心理学」では、「ノスタルジー」に関する面白い提案がなされています。
ノスタルジーの恩恵を人間関係に活用しようというもの。
\ ぜひ、お試しあれ /
最後までお目通しいただき、ありがとうございました。