奇跡

僕にとっての奇跡は、ここに辿り着いたことだったんだと思う。
心が深くて暗い方に何度も落ちて、自分でもどうしていいかわからない日々の中で、ここに辿り着いたこと、大好きな日向坂と櫻坂に出会えたこと、ここで大切な仲間たちを得たことが、びっくりするくらいキラキラと輝いてる。

でも、深くて暗い方から、いつも声がする。
「誰からも必要となんてされていない」
「お前は最初から必要の無い人間だった」
「愛されることなんてないのに、なんで生きてるの？」
「幸せになんてなれないよ」
「どうせ何も上手くやれないくせに」
全部、全部自分自身の本心だったんだと思う。
誰かのあたたかい言葉を燃やして歩いてきても、ずっと僕の心はあの暗い方にいるんだ。戻ってきてなんていなかったんだ。
僕の存在は、間違っていた。
どんなに上手く言葉を使っていたって、どんなにおどけてみせたってきっと、僕の心があの暗い方にいるうちは、誰も救えないことは確定事項で。
僕は、僕自身を肯定してあげられない。
多分、生涯を懸けても。

深くて暗い、心がいるこの場所は、居心地が良くて。
でも、ここにいる限り、僕は「普通」や「幸せ」にはなれないんだね。
こんなにたくさんの奇跡が僕の手元にあるのに、僕の心はずっと暗い海の底を見ることしかできない。
僕が死んだら。
そんな仮定の話に意味なんてなくて。
結論はどう足掻いたって、そこに辿り着くのに、なんで生きる必要があるんだろう。

僕の励ましはあの人に届かなかった。
だから、僕も同じところへ行きたい。
僕の言葉なんてもう、探さないで生きてほしい。
僕がいない未来で、みんなが幸せならそれでいいの。

ずっと死にたかった。
希望が幾つあっても変われなかった僕を、許さなくてもいいよ。
でも、今はまだ怖いね。
死にたいのに死ぬのが怖いなんて不思議だね。
どうしたら怖くなくなるんだろうね。
死ねないかな。少しだけ死にたくないな。
ここに戻ってくるの、少し恥ずかしいな。

かみさま。
もし奇跡が起こるなら。
誰より大切な友達の病気が治りますように。
みんな幸せでいますように。
戦争が終わりますように。
犯罪や災害が減りますように。
大事な友達がそういう悲しい出来事に巻き込まれたりしませんように。
家族が末永く幸せでいますように。
好きだったあの人が幸せになりますように。
日向坂や櫻坂のみんなが幸せでいますように。
猫たちが長生きして、幸せでいますように。
世界の子供たちが苦しみませんように。
間違えることしかできなかった人たちが救われますように。
頑張っている人たちが報われますように。
みんながどうにかわかりあえますように。
傷つけあわずに済みますように。
僕の言葉で傷ついた人たちの傷が癒えますように。
僕がいないことを悲しむような、寂しがるような優しい人たちが幸せでいますように。

いつか丹生ちゃんに会ってみたかったな。僕の太陽だった。
くみてんにも会いたかった。たくさんのありがとうが伝えたかった。
夏鈴ちゃんにも会ってみたかった。もっと知りたかった。
日向坂と櫻坂は、僕の希望なんだ。

友達に、盛岡を案内する約束をしてた。
叶えたいな。何よりも叶えたいな。
でも僕は、それまで生きていられるんだろうか。
生きててほしいって言葉を貰えても死にたい僕は、本当に狂っている。
急に心が引っ張られて、死にたいが僕を支配して、約束も言葉も全部忘れて、消えることしか考えられなくなる。
深くて暗い方から、帰ってくる術が見つけられない。

駄目な事だってわかるから、踏ん張ってみるけど、僕はもう頑張るのが苦しいよ。
生きる、なんて言えないね。
でも、死ぬって宣言もできない。
明日が来るのかな。
朝なんてもう来ないかもね。

誰か、こんな僕を笑ってよ。
明日、また会えたらいいね。