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異人館の神さま

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「手にすると全てが手に入る」そんなものになってしまった少女細子と運命に翻弄されてきた司の成長ストーリー
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異人館の神さま(1) 小説

異人館の神さま(1) 小説

1 それは小さい頃のお話

付喪神 《九十九神》
長く生きた依り代に神や霊魂などが宿ったもの
荒ぶれば禍をもたらし、和なぎれば幸をもたらすとされる

かつてはたくさんの付喪神がそこかしこにいて人をたぶらかしたものである。

新月の事だった

月はその存在を隠し 暗く闇に沈む部屋

誰も居ないその部屋にひどくかすかに聞こえる笑い声

クスクス…クスクス…

クスクス……

…フフフ

2 名前を呼ん

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異人館の神さま(2) 小説

異人館の神さま(2) 小説

道路に面した入口から歩くこと5分 ヘロヘロになりながら歩き続け
ようやく木立に紛れて建物の二階らしきものが見えてきた

「なんじゃこりゃあ!!!!」

うちも結構な洋館だったけど こいつはもっとすげえ
あれはもしかしてステンドグラス?
重いトランクを放り出し 走る

「なんじゃこりゃあ!(二回目)お城かよっ!」

目の前にそびえ立つ建物に唖然
石造りと思われる壁を手でピタピタと叩き
そのまま二階に

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異人館の神さま(3) 小説

異人館の神さま(3) 小説

細子さんが来るのが遅かったので少し心配していたのですよ」

外から家族が使っている居間に移動して冷蔵庫から出した麦茶をコップに注ぎながら彼は言う

「駅から10分って聞いてたんですけど たっぷり30分はかかりました」

「ああ、それは入るところを間違えたんですね 確かに門とは反対の方に細子さん居ましたね」

ええええええええっ

「本当ですか?」

「どうぞ。今日は暑いし重い荷物を持って大変でした

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異人館の神さま(4) 小説

異人館の神さま(4) 小説

3 神月邸

「この家は明治の中頃に建てられたと言われています。」

司さんに連れられて家の左棟の階段を上る。

「どの部屋にも二つドアがあります、
いつ襲撃を受けても逃げられるように そういう時代だったんでしょうね」

上がりきった正面に古めかしい肖像画がありギクリとする。

「ああ、それびっくりしますよねえ、ご先祖らしいのですけど。まあ、しまっておきましょう。」

無造作に肖像画を取ると反対に

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異人館の神さま(5) 小説

異人館の神さま(5) 小説

左棟の二階の奥の部屋は天井までの棚が並びジャンルも様々な本がたくさん有り 古い紙の匂いが充満していた

「ちょっとした本屋さんですね」

「最新号は無いですよ」

「このたくさんの本の匂い好きです」

窓際に座り心地の良さそうな一人掛けのソファーがぽつんと置いてあった
高い場所に作られた窓から日差しが伸びそこだけスポットライトを浴びたようになっている
そうか、長時間明るいようになっているんだ

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異人館の神さま(6) 小説

異人館の神さま(6) 小説

西棟の階段を降りるとそこは広いホールだった
高い天井 シャンデリア 重そうなカーテン 壁には漆喰で花の模様が立体的に作ってある
でもどれも古く ほこりが積もっている

「僕も祖母も合理的な考えの持ち主だから必要なところしか掃除してなくて」

足を踏み入れると足の形に跡が残る
スリッパに黒く厚くほこりがつく

「こういう所は早めに退散しましょう 隣はサロンです」

部屋の真ん中に茶色く変色した白い布

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異人館の神さま(7) 小説

異人館の神さま(7) 小説

4 美人が闊歩

土曜日
学校がお休みなのでサクサクと家事をこなした後 みさとさんの和ダンスを開いてみる

「おお!」

タンスの中には色とりどりのアンティークの着物がたくさん入っていた

「きれーーい!」

一番上にあった緑地に赤や黒や白の金魚がたくさん泳いでいる着物をそっと持ち上げてみる

これって私用にそろえてくれたんだよね みさとさんがこんな色の着るわけないもんね

タンスの一番下の抽斗の

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異人館の神さま(8) 小説

異人館の神さま(8) 小説

着いた…

けっこう大変だった
乗りなれない路線の乗り継ぎって全然わからん
良かったたどり着いて

白地にエンジの小花柄の巾着から取り出したハンカチで汗を抑えた細子は
見た目には出さないように注意していたが心の中では自分に拍手喝さいの嵐だった

いや、まだこのオレンジのファイルを司さんに届けるまでがミッション

適当な紙袋に突っ込んできたファイルをちょっと持ち上げて反対の手で紙袋の上からファイルを

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異人館の神さま(9) 小説

異人館の神さま(9) 小説

大股で迷いなく進んでいく女に遅れないように小走りでついていく
建物の入り口は解放されていた
階段の横には自販機が設置されている
短めのスカートで段差の狭い急な階段を一つ飛ばしで上っていく女

なんか色気に欠ける がっかり美人

女は三階まで一気に上がると横にあった電灯をつける

「ほらこっち 私 暗いの嫌 辛気臭くって」

その女はノックするでもなく扉を開けると中に入っていった

「つ~か~さ~ 

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異人館の神さま(10) 小説

異人館の神さま(10) 小説

5、なんでこんなに腹立たしいんだ

それは音もなく入り込み そして居間の中を満たしていった

細子は青地に白く風の模様の入った単衣に朱色地に金色の蝶柄の帯を締め
ハーフアップの髪には大きな空色のリボンのゴムを付けていた

「…臭い」

細子は目の間にしわを寄せる

「なんでしょう、この臭いは?」

さっきまで居間を満たしていた司の淹れた紅茶の香りはすっかり姿を消し
鼻の奥にツンとする異臭が漂ってい

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異人館の神さま(11) 小説

異人館の神さま(11) 小説

司がタオルを持って出て行ってから四半刻あまり
なぜか司までが服も髪もベタベタで玄関に居た

「だからさあ、司 そんなに怒んないでよ」

「怒っていません」

「怒ってんじゃん」

「いいえ!怒ってるんじゃないんです 怒る事なんて何もない。
ただ なぜだかとても腹立たしい」

「やっぱり怒ってるんじゃん」

「違います、すみません細子さん 近づかないでください」

玄関に出てきた細子に静止をかける

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異人館の神さま(12) 小説

異人館の神さま(12) 小説

あとでこの時の様子を聞くと
延幸は蛇口から直に顔や頭や手足を洗っていたが
全然らちが明かないので司がホースを繋ぎ全身に水をかけていたら
飛んできた臭い水のせいで司も異臭を放つようになり
自分も洗い流そうと水をかけ
結果二人ともべっちゃんこになってしまった

とにかく、くさいんだ
ものすごく、くさいんだ
堪らなく、くさいんだ
とんでもなく、くさいんだ
どうやっても、くさいんだ

ーーと、いうような話

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異人館の神さま(13) 小説

異人館の神さま(13) 小説

司の入浴中

「そー、君が細ちゃんなんだね」

延幸はさわかやな笑顔を浮かべて言った司の服は少しキツそうでズボンの丈が短かった

「噂は聞いてるよ。ふーーん かわいい。」

細子がアッと思った時にはすぐそばに顔があった

ち、近い…

「あはは、かわいい」

近づくとぷーんとまだ少し臭い

「うーん、これからデートなんだけど…これじゃあ無理だね 断るよ」

パタパタとズボンのポケットを探り

「あ

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異人館の神さま(14) 小説

異人館の神さま(14) 小説

6、侵入者

暴力的な蝉の声に起こされた
否、暑かったからかも知れない
私の部屋にはエアコンが無い
それは近日中に付く予定になっている
それでも

――こう暑いんじゃ…

ベッドの中は暑いから床に寝っ転がってみる
扇風機だけでは猛暑を乗り切るのには限界がある
エアコンは早くに注文したのに売れに売れていて取り付けが間に合わないのだ
寝っ転がっていた床がその部分だけ体温で暑くなる
そうするとべとべとし

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