異人館の神さま(2) 小説
道路に面した入口から歩くこと5分 ヘロヘロになりながら歩き続け
ようやく木立に紛れて建物の二階らしきものが見えてきた
「なんじゃこりゃあ!!!!」
うちも結構な洋館だったけど こいつはもっとすげえ
あれはもしかしてステンドグラス?
重いトランクを放り出し 走る
「なんじゃこりゃあ!(二回目)お城かよっ!」
目の前にそびえ立つ建物に唖然
石造りと思われる壁を手でピタピタと叩き
そのまま二階に目を向ける
やべぇな
斜め掛けしたパンパンのバッグからスマホを出し、思うままカメラのシャッターを切る
そう 私は古い建物が好き
寝そべってローアングルからの洋館と青空と樹木
ああ、いい写真が撮れた
そう思っていた時 後ろから声をかけられた
「すみません、ここで何をしているのですか?」
木の間から刺した光で相手の顔は影になっていたけれど背の高い男性というのはわかった
「あ、こんにちは 素敵な建物だったのでついお写真を撮ってしまいました」
慌てて立ち上がると服に着いた土を払ううはあ、真っ白だ しまった
「たまにそういう方が紛れ込んできますがここは私有地なので勝手に入られても困ります」
細身の長身の男性はそう言うと優しそうに微笑んだ
ふわふわのネコっ毛に切れ長の目 薄い唇
立て襟の白シャツに細身のジーンズをはいている
「あ、いえ 私はここに用事がありまして 神月家の方ですか?」
「はい、神月司です するとあなたがこまこさんですか」
「はい、細子です」
お婆ちゃんの話にはこの人の事は入ってなかったなあ
どんな人なんだろう?
「では、アレは細子さんのトランクですか?」
彼が指さす方を見るとさっき放り出したトランクが見事にひっくり返っている
「あー、まあ、ええ、そう、です」
司さんがどんな関係な人なのかわからないけど
私の印象はこの上なく無残だ
つづく
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