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異人館の神さま(10) 小説

5、なんでこんなに腹立たしいんだ

それは音もなく入り込み そして居間の中を満たしていった

細子は青地に白く風の模様の入った単衣に朱色地に金色の蝶柄の帯を締め
ハーフアップの髪には大きな空色のリボンのゴムを付けていた

「…臭い」

細子は目の間にしわを寄せる

「なんでしょう、この臭いは?」

さっきまで居間を満たしていた司の淹れた紅茶の香りはすっかり姿を消し
鼻の奥にツンとする異臭が漂っている
司はグレーのインナーの上にネイビーのシャツ 白いパンツ
カップを口に運びかけた姿勢のまま固まっていた

コンコン

窓をノックする音がした
見ると外にイケメンが居た

「司 つかさ つ~か~さ~ シャワー貸してくれないかな?」

「延幸、いつも勝手に入ってくるのにどうしたのですか?」

窓に近づき開けようとする途端に異臭が強くなる
司は開きかけた窓を急いで戻す

「この酷い臭いはあなたですか!?」

「わかんないんだよね、なんか急に女の人に変な液体かけられてさあ ここが一番近かったから
ねえなんでドア鍵してんの?」

「鍵なんかかけてないですよ でもそのまま入ってこないでください裏の水道で洗い流して タオルを持っていきます」

「なあーに?よく聞こえないよ」

「聞こえてますよね」

「入れてくれたっていいのに こんなところで裸になったらおまわりさんにつかまっちゃうよ」

「私有地ですし、表から見えないですし、大丈夫です」

「意地悪だなあ」

「その液体かけた美人は延幸がよく知っている人ですよね?」

「…」

「自業自得じゃないですか とにかく臭いですから早く洗ってください」

「わかったよ」

延幸と言われたイケメンは窓から遠ざかっって行った 臭いも薄れていく
司はゆっくりとした足取りで居間を横断する

「いくら暑いとはいえ水道水浴びるのは冷えるでしょうからお風呂沸かしておきますね」

細子は司に声をかける

「お願いします」

司はため息と一緒にそう言った

つづく


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