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本屋さんのお客さん

わたしは、本屋さんのお客さんだ。

自分で本を書くわけでもなく、本を売るわけでもなく、ただ本を買う。

小さな本屋を営む二人の対談を先日聞いた。

どんどん「本が売れなくなる」時代に、本屋を営むのは難しい。難しい、というかよほどの熱い思いが無いとできない。

本屋さんは、とても静かだ。静かで、穏やかな時間が流れ、お客さんが本と向き合うのを邪魔しない。本ほど、押し売りされて嫌なものはない。オススメしたい本があっても、むやみに勧めない。それでも、本は売らなければならない。そっと静かな、熱い思いがあって本を売っている。

本はいいなぁ、と思う。わたしは本が好きだから。でも、本に興味のない人は、お店には目もくれず、通り過ぎる。目の前の本を見ずに、スマホの画面をみてレビューを確かめている。それも、仕方がないと思うけど。

たくさんのコンテンツがあふれていて、なるべく「ハズレ」を引きたくない。時間の奪い合いのなかに、いつのまにか本も巻き込まれているから。

お店にできることは少ないかもしれない。本の選び方、並べ方、置き方。発信やイベントの在り方、ほかのコンテンツとの共存の仕方。

コーヒー、お酒、パン、和菓子、コインランドリー、銭湯、サロン、宿。いろんな本の組み合わせ方があるし、本は場所を選ばない。そういう面白さがある。目新しいだけでは続かないけれど、その先に作家や読者の喜び、楽しみ、そして本に関わる人の生活があるのなら、いろいろ試してみるのもアリだと思う。

本屋をやってみたいなぁ、という思いは、私にもある。ただ難しいだろうなぁ、というのが先にきて動けない。その一歩を動いているだけで、本屋さんを尊敬している。日々、静かなようでいて、とても大変でやきもきする毎日だと思う。

トークイベントではお客さんの手前もあり、忙しい日々のことよりも、大好きな本のことがたくさん話にあがっていた。好きなものについて語るのは、楽しい。それをただ聞いているのも、とても楽しい。

もっといっぱい本屋さんに語ってほしいな、と思う。日々のこと、本のこと、生活のこと。本屋さんのお客さんとしては、そういう声を聴くことで、もっと本屋さんのことが好きになれる。本屋さんはいいなぁ。


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