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【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(9)

 俺は特に、地位や収入といった欲もない。
 ユキがずっと笑顔で幸せでいられるなら、辞めるのは俺だ。

 ユキには、今の仕事が必要だ。収入も福利厚生も申し分ないだろう。
 何より、仲間もできて楽しそうにしている。

 営業として実力も付いてきているし、多分次の異動ではリーダーになって部下も持つようになる。

 俺は、これから先、順当に行けば定年前の数年間はさらに上の管理職について、営業の一線からはずされるだろう。
 絶対的な安定がある場所に未練は感じていなかった。

 でも、本当のところは…
 二人が一緒になるところも、その逆も感じたくない。
 俺には、どちらも受け止める強さなんてないだけだ。

 なんのうわさも届かないところで、誰も俺のことを知らないところで新しい人生を送ってみようかな。

 “ここはもう終わりだ”

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