見出し画像

『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(奥野一成)を読んで

乱読をモットーとしていても偶然とめぐり合わせの縁によって、特定のテーマで一時期な「マイブーム」が起きるわけですが、たまたま資本主義からいま「投資」に流れています。

『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』は、その基準を明示しながら「経済的な自立」のためにアメリカ企業のインデックス投資をそこそこ具体的にススメていたのだけど、同じ投資を扱っていてもアプローチはちがいます。

本書は、これからの日本において必要なのは「投資家の思想」と説き、そのうえで投資を広義にとらえつつも、そもそも「お金を稼ぐこと」のむずかしさを強調します。

著者は農林中金バリューインベスツメンツのCIO(最高投資責任者)であり、バフェット流の長期厳選投資を行う数少ないファンドマネージャー。

日本においてインデックス投資はそもそも伸びていないし、個別銘柄で勝負するなら証券アナリストの一次試験を通るくらいまで「企業を見る目」を養った方がいいと言い切ります。

「投資家の思想」と「企業を見る目」この二つが本書におけるポイントだと読みました。そのなかでも印象的なところをいくつか紹介します。

有能の境界

資本主義とは「利己」の追求によって「利他」が生まれるという考えである。アダム・スミス的な解釈でその構造を説明した後、時間の配分についての議論が始まります。

よくあるお話が「自分のコントロール下にあるものに集中しよう」っていう。エレベーターを早く呼ぶことなんてできないし、降ってる雨にどんだけ祈っても自分で天気の操作はできません。だけど半年後の試験のためにできることはたくさんある。

著者は「有能の境界」というフレームを通じて「自分の将来の出来事」に意識することを提唱します。他人/自分と過去/未来。自分かつ未来に目を向けようぜ。

ダウンロード

引用:
https://note.com/nvic/n/nb2de0e72cad9

自己に投資して能力を磨き、余ったお金は株式投資で自分よりも優秀な企業に稼いでもらう。著者のいう投資観において「有能の境界」は優先順位付けで力を発揮する。

投資と投機のちがい

辞書でそれぞれの意味を読めばそりゃそうかなのだけど、いまいちイメージが沸かない。本書では農業における投資と投機のちがいを「考え方」にフォーカスして説明します。そこがしっくりきました。

「この農地からどれだけの農作物が取れるのか」を考えるのが投資で、「この土地がどのくらい値上がりするのか」を考えるのが投機です。

つまり、前者(投資)は農業という継続的なビジネスが成功するかどうかを前提にして農地を選択しているのに対して、

後者(投機)は単にその農地が値上がりするかとうかということだけを考えている
わけです。

農地を株式に置き換えると、買う人の動機がほとんど「投機」となるのが実情。著者は自分が長期的な事業投資をしているからいいとかそんなことは一言もない。スタンスのちがいです。自分ならどっち?

「構造的に強靭な企業」とは

さあ、投資マインドで長期的な目線で投資をしてみよう!そうしたときに大事になってくるのが企業を見る目です。

べつに資産形成をひとまず始めるならiDeCoでも良いわけで、本当に個別銘柄に投資するなら企業を見る目が必要。それは単にファンだから応援するだとか、配当がいいからだとか、そんなやさしいもんじゃない。

おそらく著者の会社?が開発したコンセプトかと思いますが、「構造的に強靭な企業」の条件は3つある。

・付加価値の高い産業
・圧倒的な競争優位性
・長期的な潮流

ここだけ読んでもおもしろい。著者はバフェット流の長期的な投資手法。不況にも左右されないってことはそれだけ企業を信頼しているし、理解しているし、投資判断にはかなりの時間をかけています。

これまでがどうかではなく、これから利益をつくるのか?競争優位性はあるのか?

一般の読者にもわかりやすく、しかしカンタンじゃないという現実をちゃんと突きつけます。投資とは知の総合格闘技である!

というわけで以上です!


いいなと思ったら応援しよう!

一介の読書好き
最後までお読みいただきありがとうございます...!本に関することを発信しております。