マガジンのカバー画像

ゆるやかな古典ブーム

30
個人の判断で古典とみなした本たち
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

「見るなよ!」と言われたら確実に見るフラグ!『古事記―マンガ日本の古典』(石ノ森章太郎)

「見るなよ!」と言われたら確実に見るフラグ!『古事記―マンガ日本の古典』(石ノ森章太郎)

漫画界の巨匠であり学習漫画のパイオニア・石ノ森章太郎。足かけ5年の大事業『マンガ日本の歴史』を書き上げた直後に手がけたのが本書です。

「マンガ日本の古典」シリーズの栄えある一発目こそ日本最古の典籍『古事記』。

構成は上・中・下の三部に分かれていて対象は「上巻」のみ。「建国の由来」がテーマで神武天皇へつなぐ物語ですが、著者いわく上巻がおおいにマンガ的であって古典的。

*イザナキ・イザナミの国生

もっとみる
ふたりにしか見えない師弟愛『春琴抄』(谷崎潤一郎)

ふたりにしか見えない師弟愛『春琴抄』(谷崎潤一郎)

『細雪』のこいさんといえば四女の妙子で恋多き現代的な女性だったけれど、『春琴抄』のこいさん・春琴は、またちがった魅力を持つ人物です。

美貌を持ち性格難ありな盲目の三味線師匠春琴と、彼女に尽くしぬく奉公人佐助の、奇妙かつ壮絶な師弟愛を描いた小説。

「萌え」「ツンデレ」のような要素が感じられて、そのコンパクトな分量からもライトノベル的なのかもしれません。『とらドラ!』の大河が思い浮かんだ。ほんと一

もっとみる
坂口安吾『堕落論・日本文化私観 他二十二篇』を読み返す

坂口安吾『堕落論・日本文化私観 他二十二篇』を読み返す

学生時代以来の再読です。堕落論の言葉だと思って携帯にメモしていたのが、じつは恋愛論の一文であることに気づいたり、あれ?そもそも恋愛論なんてあったの?だっり、いろいろ忘れていました。

坂口安吾を一躍有名にした堕落論が収録されたエッセイ集。頭からページをめくると文学・芸術・創作論から始まります。目次をご覧になって興味ある箇所から拾っていく、つまみ食いの読みがおすすめです。

徹底的な欺瞞の否定坂口安

もっとみる
19世紀ロシアを代表する恋愛小説の古典!『はつ恋』(ツルゲーネフ)

19世紀ロシアを代表する恋愛小説の古典!『はつ恋』(ツルゲーネフ)

村下孝蔵の『初恋』は好きと言えなかった気持ちを歌詞に表したように、初恋という言葉には胸に秘めた想いであるとか「甘酸っぱさ」的なニュアンスを感じます。が、

…そんな甘いもんじゃないのがロシア文豪ツルゲーネフの『はつ恋』です。

本書は、19世紀を代表する恋愛小説の古典にして名作とされています。ハンサムで浮気症な父と、地主の母を持つツルゲーネフの自伝的小説です。

16歳の主人公・ウラジミールは越し

もっとみる