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19世紀ロシアを代表する恋愛小説の古典!『はつ恋』(ツルゲーネフ)
村下孝蔵の『初恋』は好きと言えなかった気持ちを歌詞に表したように、初恋という言葉には胸に秘めた想いであるとか「甘酸っぱさ」的なニュアンスを感じます。が、
…そんな甘いもんじゃないのがロシア文豪ツルゲーネフの『はつ恋』です。
本書は、19世紀を代表する恋愛小説の古典にして名作とされています。ハンサムで浮気症な父と、地主の母を持つツルゲーネフの自伝的小説です。
16歳の主人公・ウラジミールは越してきた年上の令嬢ジナイーダに恋をします。ジナイーダは高飛車で小悪魔のような態度を取って男性をはべらす、いわゆるコケットな女性。男性陣と「罰金ゲーム」というどこか王様ゲーム的な戯れをしたりする。
そんなジナイ―ルはときに「わたしの欲しいのは向こうでこっちを征服してくれるような人」と漏らすも、うぶな主人公は気にせず恋狂い、彼女が求めればどんなに高い場所からでもジャンプしてしまうくらい深みにはまっていく。
やがて令嬢ジナイ―ルが別の誰かに恋をしていることを悟ります。嫉妬するも、身近でありながら圧倒的な「ある大人の男性」の存在を知ってしまう。ここからです、恋実らずでは終わりません、主人公は後から気づくのです。
わたしの知った事実は、とうていわたしの力の及ばないことであった。この思いがけない発見は、わたしを押しつぶしてしまったのである。
そこでふと思い出されたのは、いつかルーシンの言ったことである―『自分を犠牲にすることを、快く感じる人もあるものだ』
『これが情熱というものなのだ!……ちょっと考えると、たとえ誰の手であろうと……よしんばどんな可愛らしい手であろうと、それでぴしりとやられたら、とても我慢はなるまい、憤慨せずにはいられまい!
ところが、一旦恋する身になると、どうやら平気でいられるものらしい。……それを俺は……今の今まで思い違えて…』
この一連の流れは主人公にとって恋そのものを悟るのには十分な体験でした。一月の間に大層年を取ってしまったと言います。大人の階段を一つ上がるのともまたちがう、諦念・諦観といった言葉を思い浮かべます。
大人の男性は主人公にこんな言葉を残しました。
女の愛を恐れよ。かの幸せを、かの毒を恐れよ
でもそんな人に対して主人公は恨みよりも本質を知ったことのインパクトが大きかった。一層大きな人物として目に映りました。
……この矛盾は、心理学者どもが、なんとでも勝手に解釈すればいいのだ。
主人公のこの一言がもっとも印象的でした。人間は矛盾を抱えて生きている。16歳で知ってしまった主人公はその後、どんな人生を送ったのだろう。
というわけで以上です!
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