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ゆるやかな古典ブーム

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個人の判断で古典とみなした本たち
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2020年6月の記事一覧

『新訳 茶の本』(岡倉天心)を読んで

『新訳 茶の本』(岡倉天心)を読んで

日本のことを英語で世界に発信した偉人といえば内村鑑三、新渡戸稲造、岡倉天心。あ、鈴木大拙もそのなかに含まれるでしょうか。

さて今回は岡倉天心の『茶の本』です。

角川の新訳版が素晴らしいのは、ところどころ解説を入れてくれていること。そして「エピソードと証言でたどる天心の生涯」の収録です。

岡倉天心はその生涯を知った方がぜったいにおもしろいですね。(自分のラブレターまで晒されて本人は怒っているだ

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『人間とは何か』(マーク・トウェイン)を読んで

『人間とは何か』(マーク・トウェイン)を読んで

あのヘミングウェイが「すべてのアメリカ文学は『ハックルベリー・フィンの冒険』から始まる」と言った。アメリカ文学の最高傑作といわしめる作品を生んだのがマーク・トウェイン(光文社古典新訳文庫で読んだけど大傑作)。

ユーモア作家の印象があったのだけど、解説によればだんだんと作品に暗い影が差すようになり、ペシミスティックな方向に流れた。

で、その象徴ともいえる作品が本書。晩年のトウェインの世界観、人間

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『おくのほそ道(全) ビギナーズ・クラシックス』(松尾芭蕉)を読んで

『おくのほそ道(全) ビギナーズ・クラシックス』(松尾芭蕉)を読んで

本書は角川のビギナーズ・クラシック。現代語訳から解説、ところどころ登場するコラムまで、いたれりつくせりな一冊です。

まずは『去来抄』にある芭蕉の大好きなエピソードを紹介します。

下京や雪つむ上の夜の雨

野沢凡兆の名吟とされているものですが、最初に「雪つむ上の夜の雨」がこちらもできていた。

で、上五をどうするか。芭蕉は「下京や」で決まりだと言った。しかし凡兆はなんとなく納得していないかんじだ

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