二十四節気の養生法【2022 雨水】
空から降ってくるものが雪や氷から水に変わるころが「雨水」です。暦便覧には「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となれば也」とあります。
少しずつ陽の気が増え、もう少しすると地面からメラメラと陽気が立ち昇っているのが見えるようになりますね。
雨水は春の2番目の節気ですが、春分ごろまではまだまだ寒い日もあります。以前ご紹介した九九消寒図でも、冬至から九日間ずつ一九、二九、三九と数え×九セットで81日後に春が来るとし、今年は3月11日が81日目となりますので、もう少し寒邪に対する養生も必要ですね。
京都でも少しずつ日の出の時間が早くなっているのを実感します。少しずつ春の気配を感じつつ、やっぱりまだまだ温かいお布団から出られませんね。
春の養生の基本は、「疏肝理気」と「養陽防風」(マガジン内の【春の養生法】をご参照)です。肝の働きが低下して気の流れが滞らないように気をつけ、陽気を養い風邪(ふうじゃ)の侵入に注意しましょう。
春の主気は「風」。生温かい東風が吹いて枯れていた山を少しずつ青く変えていきます。
遅くまで頑張っておられる受験生の皆さんに梅の花と香りで癒されていただきたいと願い、今回は学問の神様「北野天満宮」の梅苑「花の庭」をお届けします。(…と言ってもまだ少し下のよう満開になるには早かったです)
受験生の皆さん!最後まであきらめずに頑張れ!
ここからは体調管理が大切!試験前日は消化に良いものを腹八分目にして、早く寝よう。こころとからだの余裕が、集中力を生み実力を最大限に発揮出来る!
『東風吹かば にほひをこせよ 梅花 主なしとて 春を忘るな』
<『拾遺和歌集』巻第十六より>
学問の神様 菅原道真公が大宰府に左遷される前に大切に育てた梅の気に語り掛けるように詠んだ歌で、「春風が吹いたら、匂いを(太宰府まで)送っておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、春を忘れてはならないぞ。」
東風(こち)とは東から吹く温かい春の風のことで、春の季語でもありますね。待ち遠しい「春一番」ですが、春一というと漁師さんには恐れられている南からの強風のことだそうで、何事も度を超すと邪気になりますね。
今回は、入場券にセットでついている老松謹製「菅公梅」という白梅と紅梅のお煎餅をいただきながら、小川のせせらぎを聞き、甘く優しい梅の香りと紅白ピンクと色の違う花を愛でて舌も耳も鼻も目も癒されました。もう少しすれば鶯橋で鶯の鳴き声も聞こえてくるでしょうね。皆さまも暖かい日中を選んで、ぜひお出掛けください。(花粉症の方は気をつけて出掛けてくださいね!)
今回の養生法は、百病の長「風」、春の主気「風」と六淫「風邪」について
中医学的「風」とは
自然現象である風は天地の気が流動すると「風」が生まれます。六気のひとつで春の主気であり、春は陽気が生まれ発散して柔らかな風が万物を温め、すべてのものが生まれ育まれます。風は疏(通)散という性質があり、「其疾如風」と言うように動きが素早く、軽ろやかで、方々に散り散り、散じやすく、より遠くまで運ぶなどの特徴があります。
人体では肝気がこれに相応します。肝は疏泄を主(つかさど)り、風の流動・温和という性質に順応して生き生きとした盛んな生気であり、春の風は肝気に相通じます。
風邪(ふうじゃ)
中医学ではいわゆる病気の風邪(カゼ)のことは感冒と言います。そして風邪(ふうじゃ)とは風の邪気のことで、風によって引き起こされるさまざまな症候の元になるものを風邪(ふうじゃ)と呼びます。
六気が正常さを失うと六淫(風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪の6種の邪気)となり「邪風が至ると、病が風雨のように突然現れる」と言われ、寒・熱・暑・湿・燥邪のいずれとも簡単に結びつきやすくあらゆる病気を招くので「風は百病の長」と言われるのです。
風邪は陽邪で、無形であり流動性が高く、軽・揚(上がる)・走(動きやすい)・散の特徴があり、さまざまに変化します。
風邪は、カラダの外から体内に侵入して発病させる外風と自分のカラダの中で引き起こされる内風に分けられます。
外風とは、寒・熱・暑・湿・燥邪と結びついた風邪が皮膚や経絡に侵襲して発病し、内風とは自分の体内で陽気が亢進(過剰)するか陰虚で陽を抑制できなくなって発生した風邪のことです。
「諸風掉眩、皆肝に属す」と言われ内風の元は肝にあると考えられ、内風のことを肝風とも言います。肝風には1.肝陽化風、2.熱極生風、3.血虚生風と3タイプがあります。
いずれも元は肝陽の亢進(過剰)または肝陰不足によるもので、「肝の陰陽失調」によって起こります。
外風は、風邪が鼻やのど、皮膚などからカラダに侵襲すると気血が損傷し経脈がスムーズに流れなくなり鼻やのどが炎症して鼻水、鼻づまり、のどの腫れや痛み、頭痛・発熱などいわゆる感冒と呼ばれる症状や湿疹・皮膚搔痒・関節痛・抜け毛などが現れたり、痺れ・ひきつけ・眩暈・頭痛・片頭痛などが起こります。
外風の特徴は、変化が素早く、症状が一定の場所に固定されずあちこちに現れたり移ったりし、体表表面の症状が多く、風邪がカラダの上部に上るとめまい・悪心・嘔吐や麻疹・口眼歪斜などが現れます。
外風の治療は辛散去風・疎通経脈で、風病の治療原則は去風散邪ですが、「風を治めるにはまず血を治めよ、血巡れば風自ずから消滅する」と言われ、行血・活血・涼血・養血も重要で、状態によっては養陰・清熱も加わります。
内風は臓腑損傷・陰陽失調によって起こりますが、臓腑損傷は主に肝、陰陽失調は陽亢陰虚が多く、病変は「肝」との関わりが非常に深いです。
さらに、陽盛・火旺・熱極・痰火・痰熱による内風は「実証」、陰虚・血虚・気虚・陽虚・臓腑虚損による内風は「虚証」に分けられます。
実証内風の治法は清熱虚邪で、亢進した陽を鎮め、平肝潜陽・清熱化痰・清肝瀉火・涼血活血などを施し、一方虚証内風の治法は、柔肝・潜陽・養血・濡潤筋脈など行い、陽虚の場合は温潤助陽・柔肝緩急を行います。
内風実証による症状は重篤になることが多く中風(脳卒中)、ろれつが回らない・めまい、卒倒・ひきつけ・神昏譫語・人事不省・半身不随などの症状が起こりやすくなります。
内風虚証では、めまい・ふるえ・痙攣・中風・ひきつけ、便秘・アトピーや慢性蕁麻疹などの皮膚の異常な痒み、小児驚風、両脇脹満・四肢厥冷などが起こります。
肝の働きが異常になると、肝火の炎が風を生み肝陽化風となって、自律神経が失調し、激しいめまいや突発性難聴、目の充血、高血圧や更年期障害などの症状を引き起こしたり、不安や焦りなど情緒不安定な状態になります。さらにひどくなると熱極生風となって脳卒中や脳出血を引き起こします。
外風による花粉や埃などが体内に侵入するのを防ぎ、また自らの体内で内風を引き起こさないよう、ストレスやイライラに過敏に反応せず出来るだけ穏やかにゆったりしたペースで過ごすことがオススメです。
風病の予防と対策
【薬膳的対策】
風薬は辛味を主として発散邪気・通経絡・宣気機などを行います。
辛味:昇発宣散、疏肝理気
辛味食材の五性と帰経
辛味が風邪を発散させますが、今の自分の体質が陰虚(熱っぽい)のか?陽虚(冷え症)なのか?、また今自分のカラダには風邪と一緒に寒・熱・暑・湿・燥邪のどの邪気が侵襲しているのかを見極めて、陰虚なら寒・涼性を陽虚なら温熱性の食材を選び陰陽調和を図り、さらに肝以外にどの五臓の働きが低下しているのか?(呼吸器系の症状が出ているなら肺、消化器系なら脾、循環器系なら心、泌尿生殖器系なら腎、自律神経系なら肝や心)を診て弱っている臓に帰経する食材を選びましょう。とはいえ、それに効くからと同じものばかり食べ続けるのは、当然よくありません。
冷えるからと言って熱性の食材ばかりを選んで毎日食べ続けているとやがて陰虚体質になってしまいます。逆も同じ。陽虚体質の人は、一食の中で平性を中心に少し温熱性の食材を多めに、あるいは1日三食の中でトータルで少し温熱性が多くなるように、満遍なく摂るようにしましょう。中医学の食の不摂生は多食・少食・偏食です。良いからと言って同じものばかり偏って食べるのは良くないと考えます。くれぐれも間違いないように気をつけましょう。
また蕁麻疹や発疹の発作などで異常に痒い時など、搔きむしるのは良くありません。お風呂や暖房などでカラダが温まると余計に痒くなる時は、たとえ陽虚証(冷え症)でも寒涼性のものを多めにして、清熱(カラダの余分な熱を冷ます)する方が症状はマシになります。
まずはツライ発作的な症状を抑えて症状が軽くなったら、本治(根本体質を改善)することをします。冷え性だからと言って温める物ばかり食べると痒い症状がますますひどくなります。ここでも自分の体調や今の体質を良く診て調整しましょう。
漢方薬など薬を飲んでいるときなどはなおさらです。その薬の働きを応援するものを食べるのがオススメ。陽虚(冷え性)なので温める薬を飲んでいるのに寒涼性の食材を食べたり、冷えたビールやアイスクリームはもってのほかですが、コーヒーや緑茶も冷やしますよ。寒いからと言ってコタツに入って緑茶を飲みながらみかんを食べているようなものです。知らず知らずに、外から温めているのに飲んだり食べたりしているものは冷やすものばっかり!?
その逆に余分な熱を冷ます薬を飲んでいるのに、しょうがやネギをたっぷり(温熱性の食材を)食べていては薬効もありません。
薬を飲んでいるなら、その薬を応援する食材を食べましょう。そして症状が治まったらいつまでも薬に頼らず、食ベ物で症状が出ないように調整するのがオススメですね。
【風病のツボ】
361個あるツボの中で「風」という漢字が使われるツボは4つです。
風府(督脈) 風邪が出たり入ったりして集まるところ。
風池(胆経) 風邪が溜まるところ
風門(膀胱経)風邪の入口
風市(胆経) 風邪が侵しやすいツボ。下肢麻痺、半身不随など中風(脳卒中)による下肢知覚・運動障害改善のツボ アレルギー体質改善ツボ
門は入り口、池は水が溜まる所、府は多くの人や物が集まってきてまた出ていく所という意味なので、風邪が風門から侵入し、風池に溜まって、風府を通して全身に広がっていくイメージです。風門穴のあたりに扇風機やドライヤーの冷風を10分ぐらい当ててみてください。ほぼ間違いなく風邪を引けます。って風邪なんか引きたくないですよね。逆に風門穴のあたりにカイロを貼ったりして温めてください。風邪は入り込めません。
また風門穴のあたり僧帽筋や菱形筋などいわゆる肩こりですが、筋肉が硬くなると風邪をひきやすくなります。気血の巡りが悪くなるからです。風邪の予防のためにも、肩甲骨と背骨の間はストレッチや腕回しや腕振り体操などをして緊張をほぐし出来るだけ柔らかくしておくことが有効です。
京都伝統中医学研究所の"雨水におすすめの薬膳茶&薬膳食材"
1.「滋陰養血」の薬膳茶&食材
陰を補い血を養うオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
薬膳茶では、「なつめ薬膳茶」、「カラダ潤し茶」、「健やか茶」、「増血美肌茶」など
薬膳食材では、「新彊なつめ」、「金針菜」、「竜眼」、「枸杞の実」、「松の実」、「マイカイ花」、「桂花」、「茉莉花」など
薬膳鍋セット「四物鍋スープ」、「手足冰凍鍋」、「冬の美薬膳鍋」は、薬膳食材もセットになってオススメ。
肝を過剰を調えるオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
薬膳茶では、「理気明目茶」、「そろそろダイエット茶」、「ジャスミン茶」「なつめ薬膳茶」、「なつめ竜眼茶」、「麗香茉莉花茶」「肝腎かなめ茶」など
薬膳食材では、「黒きくらげ」、「新彊なつめ」、「枸杞の実」、「竜眼」、「金針菜」、「紅花」、「マイカイ花」など
2.カゼにおすすめの薬膳茶&薬膳食材
辛温解表…「薬膳火鍋」、「手足冰凍鍋」、「からだを温める黒のお茶」、「なつめと生姜のチャイ」、「黒薔薇茶」、「紅花」、「竜眼」、「マイカイ花」、「桂花」など
辛涼解表…「理気明目茶」、「五望茶」、「菊花」、「百合」など
どちらのカゼにもおすすめなのが、やはり「なつめ薬膳茶」です。弱った胃腸を調え、気血を補い、疲れた体を癒してくれます。
3.漢方入浴剤
ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」は、まだまだ寒い日も多いこの季節の養生にオススメ。ヨモギの香りが浴室いっぱいに広がり芳香浴にもなって癒されます。
もう一つは「スッキリさっぱり乃湯」。こちらは藿香をたっぷり配合。オリエンタルでエキゾチックな香りがとても爽やか!藿香・生姜・陳皮の配合で爽やかな香りが纏わります。蕁麻疹などでカラダに痒みがある時にオススメです。
中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。
薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 auPAYマーケット店 https://wowma.jp/user/49016685
次回は、3月5日「啓蟄」です。そろそろ虫や動物が冬眠から目覚める頃。陽の気が旺盛になってきますね。
中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
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