二十四節気の養生法【2024 小暑】
斗が辛(太陽経度105度)を指すと小暑です。グレゴリオ暦の7/7ごろで、この時期は、梅雨明けが近づく頃でかなり暑くなっていますが、まだ極度の暑さには至っていないため「小暑」と呼ばれます。木々が生い茂り、日に日に暑さが増し、最高気温は40℃を超えることもあります。小暑は一年で最も降水量が多い季節でもあり、大雨や暴風雨、落雷なども起こります。
小暑六月節 元稹 [唐代]
倏忽温風至,因循小暑来。
竹喧先覚雨,山暗已聞雷。
戸牖深青靄,階庭長緑苔。
鷹鸇新習学,蟋蟀莫相催。
唐代の詩人 元稹は、小暑を詠い、
急に風が温かくなったと思ったら小暑が巡って来た。竹林が喧しくて大雨が降っていることを知る。山が暗くなりすでに雷が聞こえている。戸や窓には青い靄(もや)が深くかかり、庭では青々とした苔が生長している。鷹や鸇(隼)は練習を始め、コオロギは啼く準備を始める。
と、この時節の自然界を生き生きと表現しています。
陰陽論では、「万物は、極まれば必ず転ずる」と考え、夏至が終わり、陽気が満ち、陰の気が生まれる時期でもあります。今年は6/29に隠遁始となり、自然界ではすでに陰の気が生まれ、これから冬至に向けて陰気が少しずつ旺盛になっていきます。私たちの養生法も少しずつ陽から陰へ切り替えていくことが大切になります。
あす7/7は七夕ですが、本来の七夕節は中華圏では「旧暦」で行われますが、日本では新暦の7/7が七夕ですね。でも、新暦7/7では梅雨の真っ最中でほとんど毎年、星が見られないことが多く、なんかしらけてしまいますね。
七夕節は、2000年以上も昔、後漢時代から伝わる、淡く切ないロマンチックな伝説がもとで、現代の中国では「情人日」(恋人の日)と言われプレゼントやデートに出掛ける中国版バレンタインデーとなっているようです。
日本でも国立天文台のHPには『2001年から旧暦7/7を「伝統的七夕」として、広く報じていくことにしました。』と記載されています。「伝統的七夕」の日は、二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日です。と記載されています。
今年の「伝統的七夕」の日は、8/10になりますね。七夕伝説については、またその時に解説したいと思います。
今月の癒しの庭園 「鹿王院本庭」
今回は嵯峨にある「鹿王院本庭」をご案内します。足利三代将軍 義満が1380年(康暦二年)24歳の時に寿命を伸ばすことを願って建てた禅寺で、覚雄山 鹿王院と名付けられ京都十刹第五の名刹です。
足利義満筆による「覚雄山」の扁額が飾られた山門は、切妻式・本瓦葺で四脚門の棟門式という様式で、本柱が棟まで立ち上がる禅寺門形式で唯一の創建(1379年)当時の建物で、額とともに600年以上の星霜を経ています。600年以上も現存しているって昔の建築物は本当にすごいですね。
山門をくぐると中門までのとても長い石畳の参道がつづき梅雨の雨に濡れた青紅葉と青苔が青々と茂り、竹林、椿、天台烏薬などの銘木もあります。一休禅師も少年の頃、この山門をくぐり維摩教の提唱を聴かれたそうです。
きれいに調えられた石畳がつづくとても長い参道で、ところどころに意趣を凝らした置物などでアクセントがつけられ、静まり返った中でなんとなくワクワクするような楽しみな気持ちが沸いてきます。
中門をくぐって庫裏に続きますが、ここも苔に覆われた庭が広がっています。
庫裏で受付をして客殿に上がります。客殿の正面には義満筆の「鹿王院」の額が掲げられ、その下の板が張られた縁側に腰を掛けてゆっくり本庭を眺めていられます。
客殿の裏には後庭があり、茶亭に続いて茶席「芥室」があります。芥とは「とるに足らない」の意で謙遜した言葉だそうです。
江戸時代の中ごろ1763年(宝暦13年)に作庭された本庭は、嵐山を借景とした平庭式枯山水苔庭です。舎利殿の東側に広がる庭園で、「鹿王院庭園」の名称で京都市の名勝に指定されています。庭園には三尊石や坐禅石を中心とした景石が配され、樹齢300年を越えるモッコクは古木としての風格を備えています。
庭園南にはかなり背の高い沙羅双樹があり、客殿横の沙羅双樹も綺麗に咲いています。沙羅双樹は釈迦入滅のとき枕元で一斉に花開いたという伝承があり、平家物語では「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」と綴られ、この世のものは絶えず変化しいつまでも存在するものはない「諸行無常」を表しています。
庫裏の玄関には禅寺特有の「韋駄天」がお出迎え。舎利殿の中央に置かれた大厨子には「仏牙舎利」が安置されています。大厨子が置かれた須弥壇の四方に仏法護持の四天王が安置され、天井には法(釈迦の教え)の雨を降らせると伝えられる龍図が描かれています。天井の龍と言うと墨で描かれた龍が多いのですが、珍しく色鮮やかな龍が描かれています。(舎利殿内は撮影禁止となっています)
歴史と自然美が調和した、静寂と安らぎに満ちた空間が広がってます。しとしとと降る梅雨の雨に濡れた青紅葉や苔がさらに緑を増し鮮やかさがひときわ際立っています。
他に誰一人いない客殿の縁側に腰をかけて前に広がる本庭を眺めていると、一羽の小鳥がやって来て苔を啄んでいました。
爽やかな風が吹き抜け長く伸びた萩の枝が揺れて一瞬涼をもたらしてくれますが、この日も非常に湿度が高い蒸し暑い日でした。
雨に濡れた石畳や青々と成長した苔が風情を醸します。嵐山からも近く三条通りから少し入ったところですが、この日は私たち以外に観光客もおられずひっそりと静寂に包まれゆったりのんびり過ごすことが出来ました。
嵐電「鹿王院」駅からもすぐ近く、京都のお寺でひっそりと過ごしたい方にはオススメです。
毎日雨が降り続き、蒸し暑くてうっとうしい日々が続きますが、皆さまもぜひお近くの公園やお庭に出掛けて自然を愛でて、ご自分の五感を癒してあげてくださいネ。
小暑の養生法
小暑の時期は、晩夏となり自然界では陽から陰に「気」は変わりつつありますが、北半球の地表では夏至の頃に最も高い南中高度から照射されて蓄えられた太陽の熱は、まだまだこれからが暑熱の邪気は旺盛になります。
「天人合一」の考えから、一年で最も暑いこの時期は人の体内も陽気が旺盛になります。中医養生学では、「三伏天」(サンフーティエン)と言ってこの時期が一年で一番暑い時期になり、暑熱の邪気に対する養生が大切です。
今年は「初伏」が7/15(旧6/10)、「中伏」が7/25(旧6/25)、「末伏」が8/14(旧7/11)になり、8/23(旧7/20)で三伏天が終わることになります。今年はこの7/15~8/23までの40日間が最も暑い時期と考えます。8/23と言うと處暑の翌日になり、「処」とは止まることと言う意味をあらわしていて、まさに殺人レベルの暑さが終わるころと言うことになりますね。
夏の養生法は安神養心と言い、精神を安寧(穏やか)にし、心(しん)を養うことがテーマになります。高温多湿な日本では湿邪にも注意が必要で健脾利湿の養生も大切です。
毎日、本当に蒸し暑いですね! 雨が降り続くのもしんどいですが、日本特有の蒸し蒸しとサウナのような暑さも本当にしんどいですね。灼熱の炎天下は熱中症の危険が大きいですが、この蒸し暑いのも夏バテや熱中症になりやすいので注意が必要です。
一方、暑いからと冷房を効かせ過ぎると外に出た時との内外温度差が大きく自律神経を失調したり、冷たいものの飲み過ぎ食べ過ぎもいつも言っていますが脾胃を傷めます。
また暑邪で心(しん)を傷めると動悸や息切れ、精神不安などを引き起こしやすくなります。このように暑気あたりになると体内の正気を奪われ自己免疫力が低下し熱中症になりやすくなり、日常生活に支障が出たり生命にも危険を及ぼすことになります。
夏の「気」は暑気、邪気は「暑邪」や「湿邪」
自然界には、風寒暑湿燥火と言う六気に覆われていて、夏三ヶ月、自然界は夏の気「暑気」に覆われます。夏は暑いのが普通で当たり前ですが、この暑気が異常になったり体内に侵入して悪さをすると六淫の「暑邪」と言う邪気になり体調不良や病気を引き起こします。
暑さが異常になるとまず「熱邪」になり、熱邪が体内に侵入すると発熱、充血、炎証、口渇、イライラ、不眠、多汗などの体調不良が起こります。
さらに蒸し暑さによる「湿邪」が侵入したり、冷たいものや水分を飲み過ぎ食べ過ぎると脾気が弱って「暑邪」に傷められ、手足が重だるい、カラダがだるい、浮腫む、関節痛、神経痛、船酔いのようなめまいなどの体調不良が起こりやすくなります。
熱中症は暑邪にあたる「中暑」
熱邪や湿邪、暑邪に傷められて暑気あたりになると、体内の熱を調節するためじっととしていたり寝ていても汗をかき、生命活動に必要な水分(津液)が失われ、気随津脱と言って汗とともに正気も失われ気陰両虚と言う証(体質)に傾きます。気陰両虚に傾くとますます肌を引き締められなくなって腠理が緩み、さらに発汗が増えるという悪循環に陥り、陰液がどんどん減って熱を冷ませなくなり暑邪の影響をまともに受けるようになります。体温が上昇して水分や塩分が減り、血の巡りが悪くなって熱中症になり、高熱、発汗、口渇、顔面紅潮、人事不省など重症化します。
さらにひどくなると心気虚や心陰虚に傾き、動悸、息切れ、自汗(異常発汗)、不眠、多夢、心身不寧などの体調不良が起こります。
湿熱邪にやられると湿困脾胃や脾胃湿熱と呼ばれる証(体質)になり、食欲不振、消化不良、腹部膨満感、全身浮腫、吐き気、悪心嘔吐、下痢、泥状便、湿疹などの体調不良が起こります。
中と言う字はあたると読みますが、「当たる」とは違ってど真ん中に命中するとか的中するという意味があり、中医学では熱中症のことを暑邪に中ると書いて「中暑」と言います。宝くじには的中したいですが暑邪には中りたくありませんね!
暑気あたりを避ける
最近では、天気予報などで高温が予測される日には、猛暑日の予報や熱中症アラートが発令され注意を促されます。出来るだけ炎天下での活動は避け
エアコンの効いた部屋や風通しの良いところで過ごすようにしましょう。まずは熱邪や湿邪を避け、暑邪を体内に侵入させないことが大切です。
そして出来れば昼食後などに少しゆっくり休憩したりお昼寝も効果的。夜は快適な空調でしっかり睡眠をとりましょう。
過食、少食、偏食を避け、冷飲食の摂り過ぎに気をつけ、フルーツやサラダも含めてなま物の摂り過ぎにも注意し、消化しやすい物を三食きちんと摂り、脾の働きを健やかにしましょう。
オススメの食べ物は前回の【2024 夏至】に掲載していますので、ぜひご参照ください。
そして暑いのでイライラしたり怒ったりしやすくなりますが、出来るだけこころを穏やかに保つように心掛け、呼吸法やヨガ、マッサージなどでリラックスしたり、ぬるめのお風呂にゆったり浸かるのもオススメです。
こころを穏やかに保ち心(しん)を養う
暑さでイライラしたりつい怒りっぽくなりやすい季節ですが、そうすると心(しん)を傷めます。
情緒が不安定にならないようにして出来るだけ穏やかな精神を保つよう心掛けましょう。そうすることが心(しん)を養う秘訣です。
晩唐の詩人 杜 筍鶴は、「夏日、悟空上人の院に題す」の詩で、落ち着いて座禅をするのに、必ずしも山や川など静かな自然は必要ない。心や頭を空っぽにすれば火もまた涼しく感じられるのだ、と教えています。
また7/19からは早いもので夏土用に入ります。今年は二の丑があるので鰻好きにはたまりませんね。でもお腹を壊しやすい時期になるのでくれぐれも健脾利湿の養生を守り、食べ過ぎには気をつけて健やかにお過ごしくださいネ。
京都伝統中医学研究所の"小暑におすすめの薬膳茶&薬膳食材"
1.熱邪を避ける薬膳茶&薬膳食材
薬膳茶では、麗香龍珠茶、ダイエット応援 爽快茶、水巡茶、五望茶、カラダ潤し茶、理気明目茶など。
全部食べる薬膳茶 桑の実茶も余分な熱を冷ましてくれるのでおすすめです。
薬膳食材では、菊花、殻とり生はと麦、皮去り炒りはと麦、桑の実、緑豆、金針菜など。これらの食材でスープやお粥がオススメです。
2.湿邪を予防する薬膳茶&食材
脾を健やかにする薬膳茶&薬膳スープ・薬膳スィーツ
■「湿邪」対策にオススメは
とうもろこしの毛やはと麦など利湿作用のある食材にお腹を温め香ばしい香りでリラックスする「水巡茶」
「四神湯」スープセット 芡実、蓮の実、はと麦、山薬、茯苓など健脾利湿食材を豊富にブレンドした夏の定番スープ。さらに緑豆や小豆などを加えても利湿効果アップ。1袋で5~6杯分出来るので、小分けして冷凍保存出来、食べる時に1椀分ずつ温め直して食べるのもOKです。
五行周流の5種のお豆をセットにしたお豆のお汁粉セットでダイエット中も食べれるスィーツを作ったりいろいろお豆のお粥にしたり、どちらもOK!
全部食べる薬膳茶 健脾利湿茶 意棗紅豆茶 なつめ、小豆、薏苡仁(はと麦) お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)。脾(お腹)を調え、特に水の巡りを良くし、湿邪を出し肥満やむくみを改善。
スィーツのような薬膳茶で全部食べられて美味しくてとってもお得。
■お腹の冷え対策にオススメは
からだを温める黒のお茶、黒薔薇茶、そろそろダイエット茶などでお腹を温め脾の働きを高めよう。ほかにマイカイ花、桂花、なつめ、竜眼なども
全部食べる薬膳茶 調補気血茶 桂棗黒豆茶 なつめ、黒豆、竜眼をブレンド、お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)。脾(お腹)を調え、気血を補う。黒豆が香ばしく、なつめや竜眼の自然な甘味があり、とても美味しい薬膳茶。
■胃腸の不調にオススメは
なつめ薬膳茶(なつめ竜眼茶)、なつめ、竜眼、蓮の実、はと麦など。
3.入浴時におすすめ漢方入浴剤
寒湿タイプにオススメ
一日中冷房の効いた部屋で仕事をしている人や乗り物などでカラダが冷えた人は、カラダをしっかり温めることが大切です。
ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。
ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むく みの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」なども流行っていますね。
湿熱タイプにオススメ
仕事やスポーツなど屋外の活動で汗をかいたりカラダが火照っている人にオススメ。エキゾチックでオリエンタルな香りの 「すっきりさっぱり乃湯」暑気あたりの体調不調やストレス、気鬱などを解消してくれます。
藿香(かつこう)は、お腹を温め、湿を追い出冷たい物の飲みすぎ食べ過ぎで傷めた脾胃を補ったり夏カゼの予防など。漢方薬の「藿香正気散」でよく使われます。アロマではパチョリと呼ばれオリエンタルでエキゾチックな香りで人気があります。藿香に生姜や陳皮をブレンドして冷房などで冷えたカラダを温め、爽やかな香りでリラックス。
☆どちらも、漢方の香りが浴室全体に広がり、ココロもカラダも癒されリラックス♪
薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
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中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
次回は、7月22日「大暑」ですね。いよいよ夏真っ盛り、一年で一番暑い三伏天の中伏になるころです。しっかりと熱邪や湿邪、暑邪への対策をして中暑を予防しましょう。
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