資料と書籍と教材の違いって?
先日、それぞれ別の場所で、このようなご質問をいただきました。
「資料と教材って何が違うんでしょうか?」
「書籍と教材って何が違うんでしょうか?」
形態としては、どれも「紙」と「活字」でできていて「綴じられているもの」、という要素は共通です。
普段は(またはこれまで)特に意識することがないものだと思うのですが、教材について考えたり、「教材を作ろう」とするとき、ふとこのような疑問が頭に浮かぶことがあるかもしれません。
そこで、今回は「資料」「書籍」「教材」の違いについて、教材戦略の観点からお話ししてみたいと思います。
01|教材と資料の違い
この違いをひとことで表すと
「ベクトルを持っているか・持っていないか」の違い
あるいは
「静的(固定的)なものか・動的(変動的)なものか」の違い
と言うことができます。
だいぶ抽象的でわかりにくいですよね。笑
もう少し噛み砕いてみます。
資料は「ただ情報が束になって、そこに存在しているもの」
であるのに対して
教材は「目的やゴールなど、特定の方向(ベクトル)に誘う・導く意図を持つもの」
以下のような図で示すことができます。
この視点で考えると、内容がまったく同じ1つの資料であったとしても、それが意図を持っていれば「教材」、意図を持っていなければ「資料」、と捉えることができます。
ちなみに教材戦略アカデミーでお手伝いしている教材制作は、当然ながら「目的やゴールなど、特定の方向(ベクトル)に誘う・導く意図を持つもの」です。
どんな人材を育てたいのか?
受講生にどんな行動変容を起こさせるために活用するものなのか?
を元に作っていくものです。
「教材作り」とは、「手元にあるただの資料」を「人を育てるための材料」、あるいは「受講生を確実にゴールに導くための小道具」に生まれ変わらせるアプローチです。
02|教材と書籍の違い
では次に「教材」と「書籍」の違いは何か。
ここでの「書籍」=「商業出版されている本」や「一般書店に並んでいる本」とします。
(ここではいわゆる「ビジネス書」を想定します)
これもひとことで表すとこうなります。
ターゲット(対象者)が「狭いか・広いか」の違い
あるいは
コンテンツ(内容)の深度が「深いか・浅いか」の違い
教材は、特定の学校やクラスの受講生や生徒の「特定の目的やゴール」に対して提供されるものなので、対象者は限定的。だいぶ絞り込まれます(絞り込めます)。その分、その中で伝えられる内容は「深く・厚く」できます(それが求められます)。
それに対して書籍は、「不特定多数の読者ターゲットに一定のニーズを感じてもらえるもの」でないと売れないので、おのずと出版企画では対象者を広く取る必要があります。となると、そこで伝えられるのは「できるだけ多くの人に役立つ内容」になるので、ある意味とても表層的な・部分的なことに留まります。
※ 先ほど「ビジネス書を想定してください」と書きましたが、「専門書」の場合は極めて「教材」に近いです。大学の授業で使うテキストなどをイメージするとわかりやすいと思います。あれは「書籍」というより、まさに「教材」ですよね。
図で示すとこんな感じになります。
例えば、アナウンサーの方がナレーターの育成を考えていて、「ナレーター育成のための教科書」を作ろうとしているとします。ですが、これを商業出版で考えようとすると、「アナウンサーが教える! 聴きごごちが良くて説得力が増すビジネスプレゼンの本」といった企画になるイメージです。(※注:あくまでもイメージ・一例です)
教材戦略アカデミーの受講生には書籍の著者の方も多いのですが、「商業出版したら、なんとなくそれをそのまま授業のテキストとして使えると思っていたけれど、目的も対象者も違うし、内容も不十分。だから別途教材が必要なんです」とお話しくださいます。
わかりやすいお話ですよね。
ちなみにこの視点で教材と書籍を見たときに、教材作りを支援する私の立場から「1つの理想だな」と思うケースとして、こんなものがあります。
「ニーズがあまりないから商業出版はできない」というようなニッチなジャンルやマニアックな切り口のテーマの教材が、その先生の活動の認知が広がることによって、または、環境や時代・トレンドの変化によって、「そのまま商業出版の企画になる」。
教材戦略アカデミーでは、そんな先生方が講座や研修事業を展開し、認知を広げていくための「教材づくり」をサポートしたいなと思っています。
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