『ツバキ文具店』を読んで心が温かくなったこと
久しぶりに、心から楽しめる本に出合った。
『ツバキ文具店』 小川 糸
主人公は、20代の雨宮鳩子ことポッポちゃん。
先代から受け継いだ鎌倉の文具店を営みつつ、代書屋として、数々の個性的な人々の気持ちを代筆する。
実は私自身、代書屋の存在を全く知らなかった。
ただですらメールなどに押され、手紙を書く機会がぐっと減っている現在。そんな中で、手紙を他人に書いてもらうことを望む人なんているんだろうか?…という思いは、全くの杞憂だった。
老若男女、職種もバラバラの人々がやって来て、ポッポちゃんに代筆をお願いする。そこには依頼者の考え、趣味、人生観などが複雑に絡み合っている。そんな人々の希望にこたえるべく、ポッポちゃんは、孤軍奮闘。
書く字体のみならず、使う筆記具や便せん、封筒、切手に至るまで細心の注意を払う。
小説の中には、それぞれの手紙が手書きで掲載されている。それが、依頼者の性格や内容にぴったりだから、読んでいて納得。
「字は人を表す」ように、手紙を読んでいる私に、ものすごい力で迫ってきて、よりこの小説を楽しめるきっかけをつくってくれた。
ここまで心がこもった手紙を受け取ったら、どんな内容であれ、私ならきっと家宝にしようと思うに違いない。
そして、もう一つ。
この小説には、異彩を放つユニークな人々が多く登場するけれど、その一人一人の言葉が心に響くのだ。
これは隣人のバーバラ夫人が、「幸せになるための秘密のおまじない」としてポッポちゃんに、伝えた言葉。
読んでいるだけで、心が温かくなる。試しにやってみたら、本当に自分の心の中に星空が広がっていった。いくつもの星が、きれいに、またたきながら。
『ツバキ文具店』
何気なく手に取った本が、私の心を温かくやさしくしてくれた。
おまけに手紙も書きたくなってしまった。お気に入りのペンと便せんにね。
さて、誰に書こうか・・・
手紙の持つパワーと素晴らしさ。
改めて、知った思いだ。
こうしている今も、一文字一文字心を込めて手紙を書くポッポちゃんの姿が目に浮かぶ・・・
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