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【noteで学ぶ腸内細菌18:クロストリジウム属という害悪細菌】

 こんにちは(o・ω・o)虫圭です。
 
 腸内細菌week4日目です。
 今回は、前回サラッと紹介まで書いておりました、フィルミクテス門クロストリジウム属の菌をご紹介。
 
 タイトル通り、「人体に害悪な細菌」です。
 
 3種の細菌を紹介しますが、今noteは腸内細菌の話ですので、内1種類は「我々ヒトの腸内に常に存在する、細菌」です。
 
 
 日常的に使える知識ではありませんが、知っておくと、「いつか誰かを助けることができるかも」な知識になっております(o・ω・o)
 
 


■ウォルシュ菌

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【ウォルシュ菌とは】
ヒトを含む動物の腸内細菌叢における主要な構成菌。
 
一般にビフィズス菌などと対比され、悪玉菌の代表とされている。
臭い放屁の原因、悪玉の常在菌である。
 
【特性】
少なくとも12種類の毒素を作り、α, β, ε, ιの4種の主要毒素の産生性により、A, B, C, D, E型の5つの型に分類される。特にB型菌の毒素は、ヒツジの赤痢の原因となる。
 

ウィリアム・H・ウェルチ(人名)が分離培養し1892年にBacillus aerogenes capsulatusと命名したが、後年ウェルチにちなんでBacterium welchii Migula 1900という学名が与えられ、ついでBacillus welchiiやClostridium welchiiと呼ばれるようになった。
しかし命名規約上はBacterium welchiiよりも早く命名されたBacillus perfringens Veillon and Zuber 1898に優先権があるため、これが1937年にクロストリジウム属に移されて、現在の学名として登録されている。
 
Wikipedia

 
 ウォルシュ菌はヒトなら誰でも腸に持っている常在細菌です。
 そして、食中毒の原因菌です。
 
 食中毒の原因とはいえ、菌が増え過ぎなければ人体が危険にさらされることはありません。
 
 ですが、河川や下水、海、土壌にも存在しているため、例えば「土で汚れたままの野菜をそのまま食べる」などすると、ウォルシュ菌が原因で食中毒に陥ることがあります。
 

腸毒素(エンテロトキシン)
 
1953年、イギリスのベティ・コンスタンス・ホブス(Betty Constance Hobbs)により、ウェルシュ菌が食中毒の原因になることが確認された。

ウェルシュ菌A型菌がヒトへの病原性を示す。
これがヒトへの毒性で頻度が高い。
アメリカではサルモネラ中毒、ブドウ球菌食中毒に次いで多く、日本でも原因別患者数で常に上位を占めている。
 
本菌で汚染された食物を加熱調理すると、耐熱性の芽胞は生残していて、調理後の冷却とともに発芽し、食物中に急激に増殖する。
食物とともに腸管に達した菌は芽胞を形成する。
このときにエンテロトキシンが作られ、菌体の融解に伴って放出され、腸管粘膜細胞に作用して症状が発現する。

 
 加熱しても、耐え抜いたウォルシュ菌が腸内で増殖し、エンテロトキシンという有害物質が生成され、食中毒になります。
 
 新鮮な野菜も魚も、ちゃんと加熱調理しよう。
 
 って話ですね。

【ウォルシュ菌の滅菌方法】
 
原材料の野菜などは洗浄によりウェルシュ菌芽胞を除去すること。
加熱調理食品中での増殖防止は加熱調理後3時間以内に20℃以下に急冷する(発育温度帯50℃~20℃)。
あるいは加熱食品を小分けにし、大気(酸素)に暴露させることにより嫌気度を下げ、好気的にすること。 加熱調理後2時間以上室温に放置しないこと。
 
東京顕微鏡院

 
 また、ウォルシュは「がんとも関連がある」とされています。
 

検出率は加齢とともに増加することが認められています。
ウェルシュ菌は、ヒトの体内に栄養素として取り込まれたたんぱく質を腐敗させ、さまざまな有害物質を産生することから、老化や発がんなどへの関与も疑われています。
 
ヤクルト中央研究所


■ボツリヌス菌

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【由来】
ボツリヌスの語源はラテン語のbotulus(腸詰め、ソーセージ)であり、19世紀のヨーロッパでソーセージやハムを食べた人の間に起こる食中毒であったためこの名がついた。
ハムやソーセージに発色剤として添加される硝酸塩は、発色作用よりもボツリヌス菌の繁殖を抑える目的で使用されている。
1896年、ベルギーの医学者エミール・ヴァン・エルメンゲム (Emile van Ermengem) により発見・命名された。

当初はBacillus属と考えられたことから、botulusに形容詞語尾「-inus」を付け、"Bacillus botulinus"と命名された。広く使われるボツリヌス菌という呼び名はこの時の種形容語に由来する。学名はラテン語として扱われることから、1923年にClostridium属へと変更された際、中性名詞であるClostridiumに合わせて中性化され、現在はClostridium botulinumと呼ばれている。ラテン語としてみた場合、Clostridium botulinum(クローストリディウム・ボトゥリヌム)は「ソーセージのクロストリジウム菌」という意味を帯びる。
 
  
【毒性】
ボツリヌス菌が作り出すボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)は毒性が非常に強く、生物兵器として研究開発が行われた。
炭疽菌を初めとする他の生物兵器同様、テロリストによる使用が懸念されている。


【致死量 】
ボツリヌス毒素の致死量は体重70 kgのヒトに対しA型毒素を吸入させた場合、0.7-0.9 μg[1]と考えられており、1 gで約100万人分の致死量に相当する(ちなみに青酸カリは経口投与の場合5人/g)。
自然界に存在する毒素としては最も強力である。
 


【ボツリヌス症】
多くはボツリヌス毒素を含んだ食物を食べることで起こる。Clostridium botulinum が多く、まれにC. butyricum, C. baratli が原因菌となる。傷口にボツリヌス菌が感染して起こることもあるが、それほど多くはない。

【乳児ボツリヌス症】
腸内細菌叢が未発達の乳児が、ボツリヌス菌の芽胞を含有する蜂蜜や黒糖、及びこれらを含む食品を摂取することにより起こる。
芽胞は高温に耐える(下記参照)ため、一般的な加熱調理では蜂蜜中の芽胞除去は出来ない。乳児は、成人に比べ腸内細菌叢が未発達であることや、消化管が短いことから、成人では上部消化管で不活化されるボツリヌス菌が、乳児では小腸の腸管まで届いてしまうことが、発症の原因と考えられる。

芽胞は乳児の体内で発芽し、ボツリヌス毒素を作り出す。
原因となる食物は黒糖など、いくつか考えられているが、蜂蜜について因果関係が明白になっている。そのため、1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはならない(昭和62年(1987年)10月20日、厚生省通知)。

【症状】
ボツリヌス毒素は主に四肢の麻痺を引き起こす。重篤な場合は呼吸筋を麻痺させ死に至る。その他、複視・構音障害・排尿障害・多汗・喉の渇きがみられる。一方、発熱はほとんどなく、意識もはっきりしたままである。

乳児ボツリヌス症の場合、便秘などの消化器症状に続き、全身脱力が起きて首の据わりが悪くなる。


【予防と治療】
ボツリヌス菌は芽胞となって高温に耐えることができるが、ボツリヌス毒素自体は加熱することで不活化する。
A, B型菌を不活化させるには100℃で6時間、芽胞で120℃で4分間の加熱が必要であるが、ボツリヌス毒素自体は100℃で1-2分の加熱で失活される。
このため、ボツリヌス菌による食中毒を防ぐには、食べる直前に食品を加熱することが効果的である。
 
【治療】
中毒症状を発症した場合、抗毒素はウマ血清のみ(ただし、乳児ボツリヌス症では致死率が低いこともあり、一般的に使われない)。
毒素の型毎に抗毒素もある。一般に「食餌性ボツリヌス症に対する抗毒素の投与は発症から24時間以内が望ましい」とされるが、24時間以上経過での投与でも効果が有ることが報告された。
ワクチンは研究者用にボツリヌストキソイドが開発されているが、中毒になってから用いても効果がない。また、米国においてボツリヌス免疫グロブリンが開発されている。

【食品添加物による抑制 】
亜硝酸ナトリウムの添加は、ハム、ソーセージ、ベーコン、コンビーフ、すじこ、たらこなどの食品加工分野においては、ボツリヌス菌の増殖を抑制する効果があり、また、肉の血色素のヘモグロビンやミオグロビンに作用して、加熱処理により赤色を形成することから、広く使用されている。
 
Wikipedia

 
 幼児への影響など、起こり得る可能性が高いものだったので、長文ですがWikipediaより引用しました。
 
 ボツリヌス菌と接触しやすい食品の記事がありましたので、そちらも引用させていただきます。

酸素のない状態になっている食品が原因となりやすく、 ビン詰、 缶詰、容器包装詰め食品、保存食品(ビン詰、缶詰は特に自家製のもの)を原因として食中毒が発生しています。
 
国内では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品“いずし”による食中毒が、1997年頃までは報告されていましたが、 自家製の“いずし”がほとんど作られなくなり、“いずし”によるボツリヌス食中毒もほとんど見られなくなりました。
 
代わって、容器包装詰め食品(特に、レトルトに類似しているが、120℃4分の加熱処理がなされていないもの)、ビン詰め、 自家製の缶詰による食中毒が発生しています。
容器包装詰め食品の中でボツリヌス菌が増殖すると、容器は膨張し、開封すると異臭がする場合があります。

乳児ボツリヌス症の原因食品として、以前は蜂蜜がありました。
1987年10月、1歳未満の乳児には蜂蜜を与えないようにと当時の厚生省が 通知を出して以降、蜂蜜を原因とする事例は減少しました。
蜂蜜以外、原因食品が確認された事例はほとんどありませんが、東京都で発生した事例で自家製野菜スープが感染源と推定されたものがありました

 
 幼児に与える食品には、衛生管理された食材や賞味期限を意識したものを準備する必要がありますね。
 当然と言えば当然ですが。
 
 
 凶悪なボツリヌス菌ですが、医療の現場ではこのような研究や活用も行われています。

【薬としての活用】
ボツリヌス菌は、致死性の神経毒であるボツリヌストキシンを産生するが、このボツリヌストキシンは希釈することでボツリヌス毒素A製剤[ 英: botulinum toxin type A ](商品名:ボトックス[ 英: Botox ])として、顔面の加齢しわを軽減させる美容用薬品として商品化されている。
具体的には、顔面に注射することで額の筋肉の運動を抑制し、加齢によるしわの発生を防止する。
また、ボトックスは痙性斜頸の治療や、12から16週間ほど効果がある鎮痛剤としても利用されている
 
引用元

 
 医薬品として、筋肉を収縮させないよう働く作用を利用して、痙縮や美容に用いられているとのこと。
 
 希釈したボツリヌストキシンを用いて、ケガによる筋肉の痙縮の改善、関節の曲げ伸ばし、リハビリ、脳卒中による眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸などの改善に活用されています。
 
 
 有毒な細菌さえも活用してしまうところに人間らしさを感じますね(o・ω・o)
 


■クロストリジウム・テタニ

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【毒性】 
産生する毒素は、テタノスパスミン(Tetanospasmin)あるいは、テタヌストキシン(Tetanus-toxin)と呼ばれる神経毒と、テタノリジン(英語版)と呼ばれる溶血毒。
運動障害は破傷風毒素(テタノスパスミン)によって引き起こされる。テタノシン(Tetanolysin)は主要症状に関与しないと考えられている。
 
【破傷風毒素】
破傷風毒素の毒性は極めて強く、世界最強の毒素の一つとして知られている。

毒素は神経筋接合部から神経終末膜を介して神経内に取り込まれる。
毒素は逆行性輸送され、脊髄前角に到達し、細胞膜を通過しシナプス前膜を通りさらに上位の中枢へ運搬される。
そこで抑制性シナプスを遮断し、痙性麻痺を引き起こる。
ついで興奮性シナプスも遮断し、筋は拘縮した状態となる。

ちなみにこれはボツリヌストキシンの作用と逆となる。ボツリヌストキシンは筋の弛緩を発生させる。
(ボツリヌス菌は筋肉がゆるむ。テタニは筋肉がちぢむ)
 
【破傷風の診断 】
基本的には症状から推測するしかない。
発症したときには外傷が治癒して分からなくなっていることがあるため、外傷が無いからといって、破傷風の可能性を除外しないことが重要である。
そのため、受傷歴がないか問診することが重要となる。創傷部位や膿から、菌を分離できることもある。
 
Wikipedia

 
 名前だけは聞いたことがある『破傷風』ですが、その原因菌がクロストリジウム・テタニです。
 泥や土壌中に存在し、傷口から直接侵入するなどして感染します。
 
「外で転んでケガしたら傷口をよく洗え、必ず消毒しろ」と小さい頃口酸っぱく言われたのは、このためだったんだなぁ、と思いました(o・ω・o)
 
 
 
 
 
 以上、クロストリジウム属の有名な害悪細菌3種の紹介でしたが、「クロストリジウム属の菌を有益に活用しよう」という研究があります。
 

■クロストリジウム属を用いた医療

【がん治療研究】
クロストリジウム属菌はガン細胞を選択的に攻撃することが知られており、また、いくつかの菌株は充実性腫瘍へ入り込んで増殖することができる。
 
このため、非病原性のクロストリジウム属菌は腫瘍へと治療用タンパク質の運搬に利用できる可能性があり、実用化に向けた研究が進められている。
 
病原性クロストリジウム属菌は、近年、医療分野においてその偏性嫌気性菌としての能力を利用したがん治療への応用が期待されている。また、(Shaw 2010)によって、自閉症をもつ小児の尿より本属が作り出す物質3-(3-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸(略称:HPHPA) が高濃度で検出される報告がなされ、カビ毒の向神経作用が注目された。
 
Wikipedia

 
 がん治療にクロストリジウム属菌を活用しようという研究です。
 以前、早期発見が難しい肝臓がんに対して、「細菌を遺伝子操作しがんの早期発見に役立てよう」という研究を紹介しましたが、クロストリジウム属菌との関連性高そうですね。
 ウォルシュ菌は腸内常在菌ですしね。

【noteで学ぶ腸内細菌⑪】番外編 遺伝子組み換えで悪玉菌に働きかける細菌たち

 
 前回のnoteから紹介した、通称『デブ菌』フィルミクテス門。その中でも毒性の強いクロストリジウム属3種の紹介でした。
 
 最後にサラッとおさらいですが、デブ菌ことフィルミクテス門の細菌は、動物性タンパク質が大好物で、簡単に言うと『肉』をよく分解し取り込みます。そのため脂肪になりやすく、肥満の原因菌とされいる訳です。
 
 また、フィルミクテス門クロストリジウム属のウォルシュ菌はがんとの関連性がある常在菌であるため、高脂肪食を続けていると、肥満やがんのリスクが増加する可能性が上がる。
 という話です。
 
 クロストリジウム属の常在菌はウォルシュ菌だけではないので、ウォルシュ菌だけが原因ではないと思いますが。
 
 
 ということで今回はここまでです。
(o・ω・)<ここまで読んで頂きありがとうございます。

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