ジャンルも作者もバラバラだった春の読書月間|2024年3〜4月のひとこと読書感想文
Xに投稿した小説の感想文をまとめた、ひとこと読書感想文。
今回もXに投稿した読書感想文から、ジャンルも作者もバラバラな7作品を紹介してみる。
クジラアタマの王様/伊坂幸太郎
令和元年に発刊された作品ながら、ここ数年の慌ただしい世界を予言したかのような内容だった。
夢と現実が入り混じるなかで、本当に大事なことに気づけるか。
それにしても伊坂作品のご夫人がたは、誰もかれも頼もしくて逞しくて。男連中は頭が上がらないはずだわ。
ことり/小川洋子
小鳥の言葉を理解する兄と、ただひとり兄の言葉を理解する弟。
そんな兄弟の慎ましい一生。
小川洋子さんが描く物語は、寂しさにいくつものカタチがあることを教えてくれる。
そして、そんな特別な寂しさであっても、世間ではまとめて同じような言葉で括られてしまうことに、またひとつ寂しさを覚えてしまった。
眠れない夜は体を脱いで/彩瀬まる
ひとつのネット掲示板に寄せられた投稿が、自身の心に漂う違和感をそっと撫でるように掬いあげる。
一見しただけでは誰にもわからないからこそ、生まれたときから着ている服を脱ぎ捨てる夜があってもいい。そんなことを思わせてくれる物語だった。
あすは起業日!/森本萌乃
好きなものって軽く決心を抱かせてしまうくらい突発的な魔力があって、それでいて、どん底に落ちたときでもギリギリで踏ん張るための支えになってくれるもの。
主人公にとってのそれが本であったことが、いち読者として嬉しかった。 共感することばかり。
君が手にするはずだった黄金について/小川哲
作者である小川哲さんによく似た主人公が語り部となって紡がれるエピソードは、どこかリアルな感触が残っている。
気心の知れた人にしか見せない適当な会話や軽く受け流されていく屁理屈には、身構える隙もなく笑ってしまった。
昔ながらの友人との会話って、脈絡もなく共通の思い出に行きつくから不思議だ。
西洋菓子店プティ・フール/千早茜
小さな西洋菓子店「プティ・フール」を取りまく6つの物語。
素朴な見た目に華やかさを隠したり、濃厚な甘さの奥に苦味を潜めたり。そんな見かけ通りではない姿を持つスイーツは、人間模様とも少し似ているかもしれない。
昔ながらのショートケーキもいいけど、個人的にはモンブランがいちばん好き。
レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎玲
レーエンデをめぐる物語の第3幕で描かれるのは、抑圧された社会で華ひらいた芸術や文化をもって、変革を起こそうとするものたちの姿。
ページをめくるたびに、この物語は何百年の時を経て受け継がれた歴史のなかで確かに紡がれているのだと気づかされた。
稀代の劇作家が作りあげた舞台は、必ず革命の旗印となる。