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2024年9月のひとこと映画感想日記


ラストマイル

8月末から『アンナチュラル』と『MIU404』を怒涛のスピードで観おえた自分にとって、このうえなく贅沢な映画だった『ラストマイル』。

瞬間最大風速で物語に没頭できたのも、それぞれのドラマがもつ世界観や扱うテーマ、そして登場人物たちの魅力が尽きなかったから。

映画『ラストマイル』は、そんな多くの人を魅了した両ドラマと世界線をともにする「シェアードユニバース」ムービーとして制作されつつも、独立した物語として完成されていた。

サプライチェーンにおける物流問題、消費者のもとに商品が近づくにしたがって現場に過負荷がかかる流通構造など、今まさに社会が直面している課題を描きながら、未来に向けて警鐘を鳴らすことを忘れない。

そして、何といっても満島ひかりさんの演技に圧倒されてしまった。リアルすぎて。YouTubeに投稿されていた米津玄師さんとの自然体の対談動画もよかったので、ぜひ。

箱男

27年の時を経て、ついに実写映像化された安部公房の名作。せっかく映像化されるならと、原作小説を読んでから観にいった。

とにかく音の演出に力を入れていて、ドラム缶を叩いたような音が、ほぼ全編を通して鳴っていた。ずっと不穏な空気を作りだしていた。

それでも、原作の独特な世界観を損なわず、読んでいたときはまったく想像がつかなかった情景が、比較的わかりやすく描写されている。

見るものと見られるものが一瞬で反転してしまう世界は、SNS社会となった今こそ、既視感を感じる恐ろしさかもしれない。

スオミの話をしよう

主演を務める長澤まさみさんの七変化ショーと言っても良いくらい、とにかく彼女の演技に目がいく映画だった。

ストーリーは思った以上にコメディ寄り。感情移入のしようもないくらい、性格も態度もコロコロと変わる。強いていえば、戸塚さんの演じるキャラには同情するかもしれない。

そして、実は三谷幸喜さんの映画を観るのは初めてだったのだけれど、それでも、すでに三谷幸喜節が確立されているんだろうなと思わせられる内容だった。

個人的に、どことなく鼻につくけど憎めない元旦那たちをつなぎ合わせる、瀬戸康史さんが演じるキャラのコミカルな立ち回りが好きだった。

あの人が消えた

昨年、話題になったドラマ「ブラッシュアップライフ」の水野格監督がつくるミステリ映画と聞いて、観てみたいと思った作品。

一棟のマンションを舞台にして、先読み不可能の宣伝文句にも納得するくらい、二転三転する怒涛の展開が繰り広げられる。

個人的に、映画よりも小説のような物語の紡ぎ方だと感じた。大きな謎がはぐらかされながら、小さな謎が積み重なっていく。

途中、肩透かしを喰らったつもりで、何もかもを見通せた気持ちになっていると、とんでもないしっぺ返しにあうはず。

ぼくのお日さま

ハンバートハンバートの同タイトル曲から着想を得たという映画は、吃音のある少年、選手の夢を諦めてスケートを教える男性、そんなコーチに恋心を抱く少女の3人が織りなす、小さな世界の物語。

登場人物たちが話す言葉は、フィクションのはずなのに、どれも生きた彼らの口から自然に発された言葉だと信じられるほど、瞬間に湧きでる想いに振りきれている。

そして、セリフ量が多いわけではないのに、誰の感情も伝わってくるからこそ、心が朗らかになる瞬間も、ひび割れそうになる瞬間もあった。

ただ、寂しさや口惜しさの合間にちゃんと愛おしさがぎゅっとつまっていて、最後はハンバートハンバートの歌声がすべて包みこんでくれる。

映画の公式サイトも作品への愛が感じられてステキな仕様だったので、ぜひ訪れてみてほしい。

あと何より奥山監督、同い歳らしい。
誇らしすぎる同い歳だ。


本当はもう1本観た映画があるのだけど、またどこかで感想を書くので、今回はこのへんで。

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