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傾いた体を治すまでの奮闘記
自分は姿勢が悪い。
それはもう圧倒的なまでに。
まっすぐ立っているつもりでも、写真で見ると「わざとやってるんじゃないか」と思うぐらい右肩上がりの姿勢になっているし、多くの人に幾度となく指摘されてきた。
それは例えば「あなたを漢字一つで表すと?」みたいなTwitterのハッシュダグでフォロワーから間髪入れずに「傾」という文字が投げかけられるぐらい、誰もが周知の事実であった。
◇
ちなみに、傾いた体の原因を辿っていくと、幼少の頃からどこか体がしゃんとしていなかったようにも思う。
高校生ぐらいの頃に、体育祭で披露するダンスを練習していた時にペアの女の子に「手足の先の方まで全く力が入ってない」と言われるぐらい、切れ味皆無のなまくらダンスしか習得できずに終えてしまった。
他にも、子供の頃から本をよく読んでいたこともあって、猫背気味な姿勢だったことも災いした。
そして何より、ずっと体のことで気がかりだったのが腰痛だった。
これが、全くもって厄介な痛み。
なぜならじっとしていても、動いていても
何をしていてもどこか違和感を感じるからだ。
年がら年中この腰痛に悩まされ、自分なりに腰痛の治し方を調べて腹筋を鍛えてみたり、猫背にならないように意識して歩いてみたり。
様々な手立てを考えては実行してみたはいいものの
一向に改善される気配はなかった。
そんな訳で「これ以上腰痛に悩まされるのは嫌だ!」と言う結論に達し、この傾いた体と腰痛改善に本格的に踏み切ろうと思ったのだった。
◇
まず最初に考えたのが、病院に通うことだった。
至極当たり前である。なぜ今まで思いつかなかった。
ネットの不確定な情報よりも、よっぽど信頼できるものなのに。
しかし、病院に行くにあたって
一つ困ったことがある。
それは、どの病院に行けば良いのかいうこと。
整形外科を始めとして、整体や鍼治療、さらには整骨院や接骨院などなど。
あまりにも数が多すぎて、どこを足掛かりにすればいいのかさっぱり検討もつかなかった。
とりあえず、色々調べてみた結果、まずは原因を探ろうということで「整形外科」に行ってみることにした。
◇
そうしてやってきた整形外科。
ちゃんとレントゲンを撮り、診察してもらった結果、やはり筋肉的な問題ではなく、骨の方に問題があるとのことだった。
そして予想していた通り、自分の姿勢は悪かった。
と言うよりも、予想以上に変な姿勢だった。
まず第一として、猫背だと思っていた背骨が
かなり反り腰であることが分かった。
個人的には「いや猫背じゃないの?」と思わず声が漏れ出てしまうくらい衝撃的な事実だった。
25年生きてきてずっと猫背だと思っていた自分の姿勢は、ほぼ正反対の状態であったのだ。
どうやら猫背を治そうと思って「めちゃくちゃ胸を張って歩いていた」のが良くなかったらしい。人の本来の背骨は腰あたりでゆるくカーブして衝撃を和らげる構造になっているはずなのに、それがぴんと常にまっすぐになっているせいで腰に余計な負担をかけていた。
確かに今思えば、胸を思い切り張って歩いている人間なんてオードリーの春日ぐらいなものである。春日さんには一刻も早く反り腰の危険に気づいてほしい。
さらに、原因はもう一つあった。
それが、骨盤のねじれとそれに伴って起こる股関節付近の骨の歪み。
どうやら危惧していた通り、自分の骨盤はかなり左に歪んでいるらしく、そのねじれによって腰痛へと繋がっているらしい。
また、もともと骨盤と脚を繋いでいる細い骨が誰にもあるらしいのだけど、びっくりしたことに、この骨が自分の場合全く稼働していないらしい。
人に比べて動いていないとかでもなく
微動だにしていない。
これだけ人が腰痛に悩まされ、他の骨が毎日活発に動いている中、この骨だけずっと怠けていたことが発覚したのだ。
みんなが汗水垂らして働いている最中、冷房の効いた部屋で永遠にNetflixを見ている奴と同じぐらい納得のいかない話。
ただ自分としては、原因が分かったことが何よりも重要だった。それさえ分かれば、対処法も考えられる。
幸い年齢が若いこともあって、しっかりそれらの骨をほぐす様にストレッチをすればちゃんと治るとのこと。
暗闇の先に光明が見えた瞬間だった。
◇
最初の方は順調だった。
ストレッチをした後は程よく腰の痛みも和らいだ感じがしたし、定期的に続けていると改善している実感もあった。
しかし、ストレッチを続けていくにつれて、だんだんその効力が弱まっていくような感覚に陥ったのだ。
定期的に股関節をほぐしていても腰への違和感が消えない日もあったりと、一朝一夕じゃ治らないとは分かっていたものの、どこか停滞しているような気持ちが頭にあった。
よって、次の一手を打つことにした。
筋肉系ではなく骨に問題があるということが分かったので、それならば骨を正しい位置に戻してもらえる病院を選べばいい。
そうして思い着いた先、整骨院に通うことにしたのだ。
◇
接骨院と整骨院の違いは全く分からないのだけど、何となく「接する」よりも「整えた」ほうが治りそうなので、整骨院にした。整えるという言葉への安心感は凄まじいものがある。
整骨院に行くと、もともと整形外科でも言われていたように骨盤のねじれを指摘された。まぁそりゃそうだ。
さらには、自分が座っている状態で左へと体を回した場合に比べ、右に体を回した際の可動域が異常に狭いことに気づいた。
左は90度ぐらいまで難なく動くのに対して、右は45度くらいでブレーキが掛かるように止まってしまう。
それは寝そべっている状態でも同様だった。
先生が言うには、座っている時や寝ている状態の時に、無意識のうちから左重心になっている影響で骨に変な癖がついてしまっているらしい。
と言うことで、現状骨盤についている変な癖を直していくために、骨盤矯正を始めることになった。
週に一回ぐらいのペースで、骨についている左寄りの癖を少しづつ取りほぐしていく。
さらに普段の生活でもこの癖を治すために、立っているときや歩いている時は、意識して左ではなく右に重心をかけることを心がけた。
また、寝ている時も、特に右向きに体をひねることを意識していた。
こうしてみると改めて、自分が寝ながらスマホをみたり漫画を読むときは、常に左を向いていたことを思い知らされる。
異常なほどに右向きに寝た時の違和感が凄いのだ。
なんだかいけないことをしてるような気分さえしてくる。校則を破っている時ぐらいソワソワする。
ただ、これが普通の状態。今までが間違っていた。
ついこないだまで主人公と戦っていたのに、心を入れ替えて急に味方につく敵キャラのように、ここでは切り替えの速さが重要なのである。
整骨院では、こう言った骨盤矯正の治療や普段の生活へのアドバイスはもちろんのこと、加えて良かったのが、整骨院の先生と「サッカーが好き」と言う共通点があったことだった。
通うたびに、先生の方からサッカーの話題を振ってくれるので、こちとら素人にも関わらず解説者のごとく持論を垂れ流してしまう。それに対して先生も答えてくれる。普通にサッカー談義のために通っているかと錯覚するほどだった。
向こうの先生は自分よりも5歳ほど歳が上なのだけど、あまり自分に歳の差を感じないらしく「同世代と話している」様な感覚になるらしい。
何だか嬉しいような、悲しいような
なんとも言えない感情だった。
◇
ここまで書いたように、自分の中では腰痛改善に向けて、着実に良い方向に進んでいることを実感している毎日。
そして、今腰痛に悩んでいる人に向けて言えること。
絶対、病院にいったほうがいい。
間違いない。身を持って実感した。
独学で治そうとするぐらいなら、早いこと専門家に診てもらった方がいいに決まっている。その道のプロを舐めてはいけない。彼ら凄いんだから。
まぁ向こうも魔法使いではないので一瞬で元通りとはいかないものの、長い目でみると確実に良くなるはず。少しづつ改善していくのが大事なのだ。
とりあえず、自分の姿勢に関して言うと、これまでが坂道だとしたらスロープくらいまでは傾きが治ってきているので、もうすぐゴールは近いかもしれない。
いずれ傾きが水平となった暁には、友達にお祝いしてもらおうと思う。
その日を楽しみに
今は整骨院でサッカー談義を楽しんでおこう。