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パン屋さんにはふらりと立ち寄りたい
いつの日からか、パン屋に行くのが好きになった。
こんな記事を書いてしまうぐらいにはクロワッサンが好きだし、朝ごはんは365日ほぼほぼ食パンを食べている。時間がない朝でも、ちゃんとトーストする。
そのパンへの執着は、新居に引っ越すとなって洗濯機や冷蔵庫などの家電もろもろを15分足らずで即決するほど関心を払っていない自分が、ことトースターに関してはバルミューダを買ってしまうほど。
元々、米派かパン派でいうと
パン派寄りな方だったのは確かだ。
ちなみに「日本人なら米だろ!」という意見はごもっとも。自分だって目の前に卵かけご飯があったならば、パンへの愛を振り切って、なりふり構わず飛びついてしまうかもしれない。
しかし、炊きたてのご飯がいかに美味しかろうと、焼きたてのパンは、それに匹敵するほどの魅力を兼ね備えているのだ。
◇
ただ、ここまでパンへの愛を高らかに宣言しているにも関わらず、パン屋にわざわざ赴くようになったのはここ最近だった。
実家に住んでいると
そもそもパン屋に一人で行くという機会が少ない。
さらには、母親が朝ごはんに用意してくれているトーストを眠気まなこで口に突っ込む毎日を送っていたので、それでもうお腹いっぱいになっていたという面もある。
しかし、社会人になって一人で暮らすことが多くなると、自然とパン屋に足を運ぶようになった。
ご飯をわざわざ炊くのが少し面倒だったという怠け癖もさることながら、街を歩いていて目に入るパン屋のショーウィンドウに並べられているパンが、ことさら美味しそうに見えたからだ。
脇道に流れてくる焼きたてのパンの香りは、自然と歩いている人の足をパン屋の入り口へと誘う魔力を持っていて、特に用が無かろうと「とりあえず入ってみようか」という気分にさせられてしまう。
◇
ちなみに言うと、自分はパン屋に行くのは好きだけど、わざわざ有名なパン屋さんを事前に調べて、並んでまで買いに行くと言うことはほとんどしなかった。
さっきも言った通り、自分にとってパン屋さんと言うのは、焼きたての香りに誘われて、ふらりと立ち寄ってしまいたくなる店なのだ。
もちろん、雑誌やテレビで取り上げられるようなお店は間違いなく美味しい。一度は食べてみたいし、きっと近くまで来たら並んでしまいそうな気はしている。
ふと思い返すと、福岡に遊びに行った時に訪れた「ダコメッカ」という有名なパン屋さんは、所狭しと並んだ多種多様のパンはもちろん、もはやディズニーランド内の施設と言われても信じてしまうぐらいの内装に驚きを隠せなかった。
調理場ではたくさんのパン職人の方がソーセージを焼いたり、パンに具材を挟んだりと、パンを選んでいる時間さえもアトラクションの一部なのかと思うぐらいで、まさにワンダーランド。
まぁ、やっぱり行列ができるには理由があると思った。
言わずもがな、食べきれるか不安になるくらいパンを購入したし。
改めて、自分の意思の弱さをはたと思い知る。
◇
しかし、だ。
ふらりと立ち寄ったパン屋さんと言うのも、これまた冒険心を掻き立てられるような面白みに満ち溢れているし、有名店には無い素朴な魅力が潜んでいるのだ。
例えば、大体どこのパン屋さんにも名物というのがある。それは店によって異なり、ある店ではメロンパン、ある店ではあんぱん、またある店ではクロワッサンと多種多様。
何の気無しに歩いていると
視界に入ってくる小さなパン屋さん。
香りに誘われふらりと立ち寄った店で
その店の自慢のパンに出逢うこと。
それはきっと、事前に決めた店で好きなパンを買う時よりも、驚きと興奮をもたらしてくれるはずだ。
そして何よりも
店の看板となるパンは本当に美味しい。
どんなパンでも、どんな店でも、
太鼓判を推せるぐらい美味しい。
お店の人が腕によりをかけて作ったパン。
それが、美味しくないはずがない。
あと、焼きたてのパンは無条件で美味しい。
これも間違いない。
また、パンの種類の豊富さは尋常ではないので、どのパン屋さんを訪れても未だ見ぬパンと出逢うことができるのも良いところ。「本当に合うのか?」と首を傾げてしまう惣菜パンも、食べたらちゃんと美味い。
そろそろ尽きてもおかしくないだろうに、職人さんたちの知恵と創作力にはただただ感服するばかりだ。
◇
そんなわけで、パン屋さんにはこれから何度もお世話になるだろうけど「ふらりと立ち寄る精神」は忘れないようにしようと思っている。
知らない街を歩いている時に、ふと見かけたパン屋さんに入る時のワクワク感は、いつまで経っても色褪せることはないだろうから。
それにしても、パン屋に並べられている沢山のパンを眺めている時間はなぜあんなにも心地良いんだろうか。本屋とパン屋にはいつまでも居続けられる気がするな。