懐かしい君の声がする|GalileoGalilei"Bee and The Whales"tour |ライブレポート
7年前、大好きだったバンドが活動休止を発表した。
ライブを生で観たいという夢はとうとう叶わないままだった。
そのバンドの名は「GalileoGalilei」
「SCHOOL OF LOCK!」主催の10代アーティスト限定のロックフェス「閃光ライオット」で初代グランプリを獲得したバンドとして知られ、これまでにも数々のタイアップソングを手がけてきた。
中学生の頃、ラジオから流れてきた「管制塔」という楽曲は、自分が楽器を始めるきっかけになったほど、GalileoGalileiというバンドが歌う曲には、未来が不確かな10代の若者を奮い立たされる確かな衝動があった。
実際、高校生になって軽音楽部に入り、ベースを弾き始め、大学でも軽音サークルに所属して、GalileoGalileiの楽曲をたくさんコピーして演奏した。
最後の大学卒業ライブでも、特別思い入れのあるGalileoGalileiの曲たちの中から悩みに悩んで選んだ5曲でライブに挑み、音楽生活を終えた。最後の曲はもちろん「管制塔」だった。
そんな思い出深いバンドが
去年、6年ぶりにバンド活動を再開すると発表した。
活動再開の文字を目にした時は本当に信じられなかったし、またライブを観ることができるんだと思うと、嬉しくてたまらなかった。
※セットリストも載せています
そうして迎えたのが6月9日。
場所は奇しくも、自分が生まれ育った大阪。
20歳の時に活動休止の報を受けて
悲しみに暮れていた自分は27歳となった。
過ぎた時間に想いを馳せながら
音楽が鳴る、その時を待った。
スクリーンには波立つ海が映し出され、漣の音が会場を揺らす中、待ちに待ったライブは新しいアルバム「Bee and The Whales」のオープニングトラックを飾る「ヘイヘイ」で幕を開ける。
続けて、アルバムの世界観をなぞるように、愛憎入り混じった感情が爆発する「死んでくれ」が二曲目に演奏されると、会場も段々とGalileoGalileiが復活したことを実感するように熱を帯びていく。
さらに、ボーカルの尾崎雄貴がシンセサイザーの前に立ち、メンバーが各々の楽器を手にすると、エレクトリカルな音が波の音に紛れて跳ねていく「Swimming」が会場にこだまする。
まさか、2ndフルアルバム「PORTAL」に収録されているインスト曲がライブで観れるとは思ってもいなかったので、歌声のない演奏が繰り広げられる光景に驚きつつも「最高の一日にしましょう」と尾崎雄貴の口から語られた後、まるでおとぎ話の幕開けを知らせるような「リジー」のイントロが始まると、途端に会場は異国の空気が漂っていく。
不穏な夜が迫る中、人を探して街を駆け回る少女の姿が描かれる同曲は、一瞬でGalileoGalileiが創り出す世界観へと誘うように鳴り響いた。
そして、続けて演奏される「老人と海」によって、会場の人々は皆、尾崎雄貴が創り出した異世界へと深く没入していく。改めて、彼が紡ぎ出すストーリーは、見たことのない異国の景色を脳内背景に浮かべさせる力がある。
また、ドラムの四つ打ちに乗ってギターの印象的なリフが奏でられる「恋の寿命」が始まると、不意に音楽に明け暮れていたあの頃に戻ったかのような心地にさせられた。
実際「リジー」から続く3曲はどれも思い出深く、大好きな曲たちだったので、この時点でもうエモーショナルな感情が振り切れる。
「ここにいる人たちと盃を交わしたい」と尾崎雄貴がMCで語っていたように、7年の時を経て再会する喜びを分かち合うような、そんな3曲だった。
そして、次に演奏されたのは、セッションによって作られた一曲であり、GalileoGalilei復活の報とともに会場で演奏された「4匹のくじら」
カントリー色が全面に押し出された音で彩られる一曲は、メンバー同士の掛け合いによって、より遊び心を感じさせるナンバーへと仕上がっていた。
しかし、そんな少年の冒険譚を高らかに歌い上げたかと思えば、「死」と隣り合わせに生きるシリアルキラーの女性が描かれる「ウェンズデイ」が始まると、会場は一変して退廃的で哀愁ある雰囲気へと塗り替えられていく。
さらに、このライブで最も驚きだったのが、シングル曲「さよならフロンティア」のカップリング曲である「くそったれども」が、様々な音楽に触れて進化した、新たな形の演奏で披露されたこと。
「神様ありがとう」のフレーズが原曲とは異なるアレンジで歌われるのを目の当たりにした時、何度となく聴いたあの曲が、止まったままだと思っていた時計が、また動きだしたのだと心の底から思えた気がした。
それはまるで、擦り切れるぐらい読み尽くした後、大切に仕舞っていた本を久しぶりに開くと、新しい物語が綴じられていたような気分で、懐かしさと未知なるものに触れる高揚感が入り混じった不思議な感情だった。
そんな興奮も束の間、ギターのハーモニーが美しく響く「サークルゲーム」は、懐かしさに浸る聴き手たちを優しく包み込むように、思い出とともに会場に染み渡っていった。
さらに、女性コーラスとして「LAUSBUB」の髙橋芽以をゲストに迎えた、新曲「ピーターへ愛を込めて」を挟んで演奏されたのは、シンガーソングライターのAimerに提供された楽曲をセルフカバーした一曲「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」
これまでのファンタジーな世界観とは異なり、この曲では現代を生きる少女が葛藤する等身大な悩みが赤裸々に綴られていて、尾崎雄貴という天性のストーリテラーの振り幅の凄さを垣間見ることができる。
また、ともに新しいアルバムのポップチューンである「ノーキャスト」と「あそぼ」が続けて演奏された後、ボーカルの尾崎雄貴がMCで「GalileoGalileiでは素の自分自身に戻ってしまう」と語っているのを聴いて、改めてこのバンドは彼らの原点とも言える存在なのかもしれないと感じた。
その後、先行配信されていた「色彩」が始まると、先ほどまでのたどたどしくも微笑ましいMCが嘘のように、盲目的な恋をする主人公を歌ったノスタルジックな一曲を繊細に表現する歌声の虜になってしまう。
さらに3rdアルバム「ALARMS」に収録されている、名曲「Birthday」の音楽に酔いしれていると、続けて演奏された「星を落とす」では、一気に儚くも美しい音の波に飲み込まれていく。
そして「次の曲で最後です」という言葉とともに始まった「Sea and The Darkness II」は、このライブが終わってほしくないという願うみんなの気持ちを代弁するように、名残惜しさとともに会場に余韻を残していった。
その後、惜しみない拍手とともに始まったアンコールによって、再び登場したメンバーたち。
そんなアンコールに応えて演奏された、まさに青春をまっしぐらに疾走する一曲である「夏空」は、一瞬で懸命に汗を流していた「あの頃」へと気持ちを飛ばしてくれる。
THE FIRST TAKEでも演奏された一曲は、まさに青春時代を生きていたあの頃に聴いていた音のまま、時を超えて自分の耳に確かに届いた。
さらに、本当のラストとして演奏されたのは、同じくTHE FIRST TAKEで演奏された楽曲であり、GalileoGalileiの代名詞ともなっている「青い栞」
本編では懐かしさを曲に宿しつつ、これまでのGalileoGalileiの歩みとともに進化した音も感じさせる演奏だったのに対して、アンコールで披露された2曲は、若かりし彼らが作り出した青春を駆けていく音のままで、その対比が色濃く映し出されるほどに、彼らが両方の時代と向き合って、ファンの皆に音楽を届けてくれたんだと、最後は胸がいっぱいになってしまった。
「GalileoGalileiはもう止まることはない」と尾崎雄貴が言っていたように、このライブを観に行って、改めて自分たちもGalileoGalileiをいつまでも追いかけていたい、そう思わせてくれた。
何よりも、懐かしい思い出のままではなくて
新しく紡がれる物語として
彼らの楽曲を聴くことができる。
それが何よりも嬉しかったし
いつまでも忘れることのない夜になった。
【セットリスト】
1.ヘイヘイ
2.死んでくれ
3.Swimming
4.リジー
5.老人と海
6.恋の寿命
7.4匹のくじら
8.ウェンズデイ
9.くそったれども
10.サークルゲーム
11.ピーターへ愛を込めて
12.バナナフィッシュの浜辺と黒い虹
13.ノーキャスト
14.あそぼ
15.色彩
16.Birthday
17.星を落とす
18.Sea and The Darkness II
アンコール
19.夏空
20.青い栞
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