投資家も注目!オフィスから見えるスタートアップの姿とは?(Pyrenee編)
「SPEED UP!START-UP!」をコンセプトに、スタートアップのCXO層やアドバイザーが経営の失敗やノウハウ、メソッドの共有を行うことで、様々な経営の壁を乗り越え、事業を成長を加速させるためのコミュニティ「Startup CXO Meeting 柏の葉」。
オフィスを見ればスタートアップの実態が見えてくる!といったことはよく言われ、投資家はもれなく投資先スタートアップのオフィスを見にいくもの。
今回は、コミュニティに参加している柏の葉スタートアップ「Pyrenee」※のオフィスと実証プロジェクトの現場へ、運営メンバーが訪問してきました。実際どのような場で研究開発、事業展開をしているのか、その様子をお届けしたいと思います。
※同社のオフィスは都内ですが、実証プロジェクトを柏の葉で実施しており、本コミュニティにも参加しています。
オシャレなオフィスにいたのは、かわいいAI…⁉
今回訪れたのは、交通事故の90%以上の原因であるヒューマンエラー(見落としや判断ミス)を回避することで事故を大幅に減らすことを目指した後付け型AIドライブアシスタント「Pyrenee Drive」の開発を進めるPyreneeのオフィスです。
株式会社Pyrenee
https://www.pyrenee.net/
現在、人類の死因の8位が交通事故で、病気を除くと1位となっているのをご存知でしょうか。年齢別に見ると、21歳までの全ての死因の中で交通事故が1位となっています。その発生原因は90%以上がヒューマンエラー(見落としや判断ミス)によるものだとか。国内外の自動車メーカー各社により、AIカメラや自動ブレーキシステムを搭載した新型車が開発され、一定の広がりを見せていますが、まだまだ完全に交通事故を防止できるレベルではないそうです。
Pyreneeは、こうしたヒューマンエラーをなくすため、後付け型のAIドライブアシスタント「Pyrenee Drive」を開発しています。Pyrenee Driveは、AIカメラにより50m以上先の歩行者や車両を認識し、その後の行動パターンを予測することができ、事故の発生を予測するとそれを避けるためのアドバイスをドライバーに音声で伝えます。
また、搭載された専用AIは利用者との会話などを通して学習を行い、登録リストから電話をかけたり、音楽を流すなど、その人の最適なドライブ環境をサポート。まるで助手席にもうひとり人が乗っているようにアシスタントとしての役割を果たします。
さて、そんなPyreneeの拠点とは、どのような空間なのでしょうか?
案内していただいたのは、瀟洒なオフィス棟にあるガラス張りの一室。可愛らしいピレニー犬のぬいぐるみに迎えられながら中に入ると、そこにはフォルクスワーゲン「up!」を中心として、会議スペースと作業スペースがゆるく仕切られたオフィス空間が広がっていました。
「いいアイデアを生み出すため飾っている」という様々なアート作品を見ていると、デザイン事務所に来たかのような感覚になりますが、主役であるPyrenee Driveを発見。
Pyreneeのメンバー用に最適化された試作機でデモを見せてもらいましたが、走行中の対向車や歩行者への注意喚起はもちろん、利用者のリクエストに応じて音楽を流したり電話をかけたりもしてくれました。時には「どこかにおでかけしたい」というリクエストに対し「う〜ん、また今度にしよう〜」と、まるで気乗りしない家族のような反応も…!
実はこれも意図した設計とのことで、ドライバーに寄り添うアシスタントとして、会話の精度や各種機能をブラッシュアップ中とのこと。運転時の安全性を高める頼もしい機能を持つと同時に、憎めない愛らしさを兼ね備えたPyrenee Driveの発売が待ち遠しくなりました。
命を守るための実証実験。かわいいだけじゃないAI開発
可愛らしい一面もあるPyrenee Driveですが、交通事故を回避し、人の命を守るためには、AIによる正確なデータ分析が欠かせません。PyreneeではAI開発を進めるため、柏の葉のモビリティフィールドを活用し、命を守るための実証実験を重ねています。
昨今、テスラに代表されるような大手自動車メーカーから、自動ブレーキ機能を搭載した新型車の発表が相次いでいます。車の運転が苦手な筆者からすると、自動で危険を回避してくれるだなんて、願ったり叶ったりだなぁと思っていました。しかし、そうした新型車の性能もまだまだ完全ではないとか。
様々な車種や運転状況を想定したテスト走行では、歩行者が車体の目の前にいる場合や、歩行者が遮蔽部に隠れておらず認識しやすい場合など、ある特定のシーンでは自動ブレーキ機能が効果を発揮することが分かり、安全性の高まりを感じることができました。
一方で、曲がり角の先に歩行者がいる場合や、遮蔽物の陰から歩行者が飛び出してくる場合にはブレーキが間に合わないことがあり、Pyrenee Driveではこうしたイレギュラーな環境を含めたあらゆる運転状況の危機回避を目指しています。
Pyreneeが柏の葉で進めている実証プロジェクトでは、天候や時間帯(日照の有無)など様々に条件を変えた走行テストを通して、対向車や歩行者の動きに関する膨大な学習データをAIに蓄積。また、モビリティフィールド内で事故が発生しやすい危険な状況を再現し、AIがデータを基に正確な判断・予測を行い、ドライバーにアラートを出すことができるか、繰り返し検証を重ねています。
スタートアップの「早く手軽に実証実験をしたい!」に応える柏の葉
柏の葉エリアは、様々な領域・分野のディープテック系スタートアップが実証プロジェクトを進める際、強力なサポートとなる施設や環境を有しています。なかでも、モビリティ系スタートアップの強い味方となるのが、上記で登場したモビリティサーキットやドローンフィールドなどを併設する「KOIL MOBILITY FIELD」です。
通常、公道での試運転などを実施する際は各自治体や省庁への届け出が必要になり、煩雑な申請ステップに時間と労力を奪われがちです。スピーディーに事業展開を進めたいスタートアップにとって、そうしたステップは死活問題にもなりますが、KOIL MOBILITY FIELDではこれを簡略化。
Pyreneeの代表取締役である三野さんも「自動車メーカーが利用しているような大規模な試験施設もあるのですが、都心からかなり遠い地方にあったり、予約が数ヶ月先まで取れなかったりでなかなか利用できません。一方、KOIL MOBILITY FIELDは都心から近く、周囲に宿泊施設や商業施設もあるので必要な時に機動的に開発や試験を行うことができます。」とのことでした。
また柏の葉エリアを走るバスには自動運転技術を取り入れているものもあり、街を上げて技術を高めるための環境が整えられています。
モビリティ系以外には、蓄電池やEV開発に欠かせないエネルギー関連の実証実験を可能にする「エネルギーフィールド」もあり、独自の蓄電池技術とそれを活用したエネルギーの需給バランスを整えるバーチャルパワープラント(VPP)に活路を見出すExergy Power Systemsや本コミュニティに参加しているYanekaraによる実証プロジェクトも行われています。
その他、バイオ・ライフサイエンス系のスタートアップの実証実験に使えるウェットラボを備えた「LINK-J」など、ディープテックに関する技術を磨くために必要な環境が豊富に用意されています。
柏の葉の実証フィールドを使い倒すディープテックスタートアップ
都内にオフィスを構えつつ、柏の葉で実証実験を進めるPyrenee。今回の訪問を通して、都心から近く、周囲の生活環境も整っている柏の葉の実証フィールドをうまく活用し、機動的にプロダクト開発を進めていることが分かりました。こうしたスタートアップの事情に合わせて、その要望に応えられる環境を有しているのも柏の葉の特徴であり、ディープテックスタートアップが集まってくる理由の1つとなっています。
上記のようなフィールドを活用した技術検証をはじめ、街の住人などを対象にしたマーケティング検証や街の施設を活用したオペレーション検証、ビジネスモデル検証など、スタートアップは成長に合わせた様々な実証が必要になってくるかと思います。
もし実証プロジェクトの相談をしてみたい方や、当コミュニティについて気になる方は、ぜひこちらにお問合せください。
Startup CXO Meeting 運営事務局:cxomtg@storydesign-h.com
(運営・執筆 Story Design house)
<コミュニティスタートアップ 一覧>
<コミュニティアドバイザー >
Carbide Ventures ゼネラル・パートナー 堀内健后氏
スタートアップに向けて日米に拠点を持ちアーリー期のスタートアップへ投資実績のあるVCとして、また、アメリカ初のスタートアップTresureDataのマーケティング・ディレクターとして日本立ち上げた実績をもとに、スタートアップへの様々なアドバイスを行う
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スタートアップのコミュニケーション支援に10年以上の実績を持つコミュニケーションエージェンシー
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